<12話> 天幕にて ~side:ハバン~
遅くなりました。
(やはり王のご判断は間違っておられなかったな。)
拠点に現れた傭兵団を見て、確信する。
先代の王より将軍を拝命し、引き続いてレナンド王にもお仕えして50年以上経つ。
しかし、身の内に収まりきれず、周囲に零れる魔力に気圧されるなど、初めての事だ。
上位貴族ですら、これ程の魔力を持つ者などわずかである。
騎獣の存在もあって、魔力の少ない一般兵では近寄ることも出来ないでいる。
(彼らが、この大陸で最も有名な最強の傭兵団【黎明】か。)
その成り立ちについては御伽噺のように語られ、今なお続く活躍を聞いて憧れる少年も多く、私もその内の1人として剣を習い始めた。
しかし入団には剣の腕だけではなく、ある一族の出身でなければならないと聞き、消沈した私はその後ロートフ軍に入隊した。
(幼い頃想像したものより、実物はなんと美しい蒼髪をしているのだ。)
半刻後には、見事に統率された【深紅】【烈光】も到着し、【黎明】の近くに魔獣たちを進ませる。
すると数人が更に【黎明】の騎獣へと寄って行き、傍らに立つ男と話し出す。
全員の纏う覇気からして、それぞれの代表者であるようだ。
王に3団が揃ったことをお伝えすると、御自らお出ましになると仰るので、後ろに控えることにする。
名乗りを終え天幕に移動すると、サザル殿が出迎えている。
打ち合わせの進行は、宰相のサザル殿に任されているのだ。
依頼内容について説明を終え、疑問点をいくつか確認していくと、最後に【黎明】の団長と思われる人物が驚きの発言をする。
『【黎明】の副統領フェルナンドだ。報酬の変更を希望する。』
(凄まじい魔力を持つこの男が副でしかないのならば、更に上がいるという事だ。こうなると恐怖すら感じるな。)
傭兵団の報酬だけでも金貨15枚、月の税収の1割を超えている。
「これ以上の増額は厳しい」と慌てるサザル殿だったが、男の次の言葉に虚を突かれる。
私はもちろん、王や他の傭兵たちも思いがけないことになり、天幕の中は静まり返っている。




