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箱庭ゲーム  作者: 夜猫
音速の剣士とスレイプニル
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クエスト4・猫妖精の剣技

Player-ミッド

~無所属領ダンジョン・地下迷宮~

 「・・・いつ来ても何かココはいやだなぁ」


 「何?アンタ、幽霊が怖かったんだっけ?」


 「いや、まぁ・・・やけにリアルだから地味に・・・」


 「・・・わからないでもないわ」


 ココは無所属領ダンジョンのナゴヤ付近にある地下の迷宮ダンジョン。

 地下鉄道をモチーフにしてあるのか、線路が敷かれていたりする。

 ちなみに、今回はロゼの剣の素材集め。

 ロゼの知り合いの鍛冶師にいい剣を作るやつがいるらしく、そいつに造ってもらうためにこんなところまで来ている。

 ・・・でも、今ロゼが持ってるその剣も、正直な話かなりのレアモノだった気がする。


 「でも、魔法の補正が掛かんないのよ」


 「いや、むしろそんな剣があるの!?」


 「あるわよ」


 あるらしい。

 何その、魔法剣士御用達みたいな武器!?

 ・・・いや、そういえばモンスタードロップに時たま特定魔法においてなら数パーセントの補正がつくのなら俺も拾ったことがある。それと同じか?

 まぁ、いい。今はそんなことよりも重大なことがある。


 「え?え?え?きゃ!?」


 俺の後で、一人の少女がモンスターを見るたびにいちいち驚いていること。

 ・・・ココのモンスターたちは一部を除いてこっちから攻撃しない限り攻撃されることは無いんだけどな・・・。


 「でも、何その・・・まるで初心者のような振る舞い?」


 「い、いえ、だから、初心者なんですよぉ!?」


 あぁ、そういえばそうだったと俺は先日のことを思い出した。

 俺達が閉じ込められて既に二年。

 初心者なるモノが存在していれば確実に天然記念物者、いや、最早化石だ。というか、いるわけが無い。

 まぁ、この子はその例外。自分のお店をゲットするために日夜モンスターと戦い続け、資金を手に入れようとしている。

 『生産組』。要するに、『GWO』内にて生産スキルを中心に熟練度をあげ、店を構えたりしてる人たちのこと。

 ただし、つい最近になって生産スキルをカンストさせてしまい、伝も無く、そして店を持てないという様な人が続出。というわけで、そういった人たちは手っ取り早くお金をためるためにモンスターを狩り始めた。

 このゲームの通貨『ネル』にして確か・・・数千万ネルとか必要だったかな?

 そして、PKして相手を倒すと、倒した相手の所持金の半分と、たまに装備アイテムをドロップするというのがある。

 PKを専門にして生計を立てているようなやつにとっては、初心者同然のこいつらはいいカモだ。

 そう、頭の中で情報をまとめる。

 そして、俺は今回の目的の素材集めについての詳細を特に何も聞いてないことに気付いた。


 「なぁ、そういや、素材ってどんなの使うつもりなんだ?」


 「あら?言ってなかったかしら?」


 「・・・ミサ、聞いてた?」


 「い、いえ、私はついてきただけなので・・・」


 そうだよな。

 ・・・やっぱ、魔法補正つく剣なんだし、特殊な金属系素材か?

 でも、この辺に金属採集場所なんかあったっけ?


 「なぁ、どこで金属を採るんだ?」


 「金属じゃないわよ?」


 「え?・・・じゃぁ、ロゼさんは何を?」


 「『不死龍アンデッド・ドラゴン』の魔宝魂ソウル・オーブよ」


 「よし、ミサ、帰ろう」


 「え?は、はい!?」


 「ちょっと待ちなさい」


 俺は襟首をぐわしと掴まれて逃げられなくなる。


 「お前、アホか!?不死龍アンデッド・ドラゴンなんて、このPTで手に負えるような代物じゃないぞ!?それに、こんなところにいるなんて聞いたことが無い!」


 不死龍アンデッド・ドラゴン。簡単に言うと俺達では手に負えないボスモンスター。正確にはそいつが低確率でドロップする魔宝魂ソウル・オーブと言う武器や防具の素材を、そいつを倒して手に入れること。いや、魔宝魂ソウル・オーブ自体はどのモンスターからもドロップする。ただ、ボスモンスターやレアモンスターになるほどドロップ率が減り、強力な武器の素材となりえる。それに、噂じゃその倒したモンスターの特性みたいなのもつくことがあるらしい。

 だが、今回狩ろうとしているのは龍種でありながら不死アンデッド属性を持つというえげつないモンスターだ。攻撃自体はわかりやすく、次に何をしてくるのかわかる。だが、問題はその不死アンデッド属性のほうだ。コイツには、物理攻撃がほぼ効かないといっても過言ではない。だから、魔法攻撃を中心としたPTで挑むのが普通だ。

 かといって、魔法使いだけで行っても死ねる。こいつの攻撃力自体が普通に強すぎるからだ。高レベルの魔法使いでも一撃貰えばHPバーがレッドになるのは確実と言う鬼畜さだ。だから、コイツを討伐するためには防御特化の戦士系と魔法使い、回復役がいる。

 そして、今回の俺達のPTはと言うと・・・。

 盗賊シーフ的なスキルしかない俺、魔法スキルは回復のみの剣士ロゼ、ザ・初心者のミサ。

 ・・・・・・絶対に勝てない。

 ミサはよくわからないのかきょとんとしている。


 「そのためにアンタを連れてきたのよ。簡単に言うとずっと、タゲられてなさい」


 「アホか!ドラゴン系は咆哮ブレス持ってんだぞ!?俺がタゲられてても一瞬で死ねる!」


 俺は紙装甲ペーパーだ!

 この中でヤツの攻撃を喰らえば真っ先に死ぬこと確定!


 「せめて、何でカイを呼んでこなかった!?」


 「だって、カイは都合が悪いって言ってたから」


 「俺はいいのかよ!?俺は知り合いの約束をお前のせいでドタキャンするハメになったんだぞ!?」


 後日どんなことをされるか・・・。

 いや、不死龍アンデッド・ドラゴン討伐の後に俺はラスボスを倒しに行かなくちゃ行けなくなるかもしれない。本当に・・・。


 「・・・相手に悪いことをしたわね」


 「俺にもだよ!?つか、最低でも俺達よりもっと強いヤツが一人いる・・・」


 「でも、急にそんな・・・フレンド登録した人達に今すぐきてって頼んでも・・・」


 「そうよ。潔く死になさい」


 「イヤだ!・・・しょうがない」


 俺は後ろを振り向くと曲がり角に向かって歩いていく。

 二人は俺の行動に首をかしげているが俺はそれを無視した。

 そして、俺が目当ての角を曲がると、そこにはでっかいワンコを引き連れたドS女様が。


 「・・・こんにちは。・・・偶然ですね」


 「んな偶然があってたまるかこの野郎」


 イースとタマだった。


 「・・・何でわかった?」


 「Pスキル『気配察知』だよ。それに、ボスモンスターの表示にプレイヤーの表示が近くにあったからな。たぶん、お前だと思ったんだ」


 Pスキルとは、パッシブスキルのこと。

 簡単に言うと、常時発動中のスキルだ。俺が何でわかったのかっていうと、このPスキル『気配察知』のおかげだ。

 これはダンジョン・フィールドといった戦闘可能区域でのみ俺の近くに半透明のウィンドウが表示され、ボスモンスター、モンスター、プレイヤーを表示してくれる。ちなみにユニークモンスターはボス扱いになってる。

 まぁ、このスキルはレーダーみたいなものだと思ってくれればいいと思う。


 「・・・廃人」


 「黙れ。ユニークモンスターをテイムするような廃人に言われたくない」


 「・・・どういうことですか?」


 「あぁ・・・。Pスキルは熟練度上げるのが面倒なのよ。だからPスキルを鍛えてる物好きはよく廃人プレイヤーなんて言われてるの。でも、私から言わせたら『守護神ガーディアン』のトップも十分廃人プレイヤーだけど」


 スキルは、反復して行うことによって熟練度がたまる。

 普通のスキルはモンスターを倒すついでにやればいいが、Pスキルはそうも行かないものが多いうえ、どんなに熟練度をためてもステータスポイントが入らない。例えば俺のPスキル『気配察知』は、絶えず周りをキョロキョロと目線を動かしていないといけないらしい。これの熟練度をためるのに俺は首を痛めかけたことがある。だが、その代わりにPスキルのもたらす効果はすばらしい。今の俺は『気配察知』の熟練度をかなり上げてあるからか、モンスターの位置はもちろん、罠やなんかもわかる。こいつのおかげで今も危険なモンスターが近くにいないことが・・・。


 「・・・あれ?」


 「・・・どうした?」


 「いや、俺の目がおかしいのかさ、近くにタマ以外のボスモンスターの表示が・・・」


 「来たか!?」


 何故か好戦的な表情を浮かべ始めたロゼさん。

 ・・・何故だろう、ものすごく嫌な予感がする。

 すると、いきなり天井から何かが降ってきた。

 それは、毒々しい色の腐った肉を纏い、ところどころ骨の見えた醜悪としかいい用の無い姿。それが四本の足でコンクリ風の大地を踏みしめて俺達を見据える。


 「・・・そうかー。『気配察知』は天井も有効なのかー」


 どうも、天井をトカゲか何かよろしくココまで這ってきたらしい。

 お疲れ様です。


「ア、不死龍アンデッド・ドラゴン・・・」


 「・・・面倒なのが」


 「しゃー!やるわよぉー!」


 なんか一人だけテンションがおかしいけどいいだろう。

 今回はカイ並に優秀な人物がいる。


 「よし、イース。・・・タマとあの腐ったドラゴンを倒してください」


 「・・・メンドイ」


 イース様はテンションがダダ下がりのようだ。

 タマも心なしか何で俺がこんな下等生物を的な目で見ている。


 「お前のペットになる以外なら(ロゼが)お前の言うこと聞くから」


 「・・・わかった!」


 いきなり元気になった。

 よし、後は頼んだぞロゼ。俺の代わりに散ってくれ。

 後することは・・・。


 「ミサ。俺達は安全なところにいよう」


 「・・・すみません、あの、モンスターを倒したらどのくらいになりますかね?」


 ・・・何故だろう?答えようによってはココにも好戦的になりそうな人がいる気がする。

 いや、ミサに限ってあんなゴリラ女みたいな思考は持っていないはずだ。


 「確か、魔宝魂ソウル・オーブ以外を全部売り払っても数百万ネルにはなった気がするけど・・・」


 「りましょう!」


 「お前、バカ!?」


 「後、百ネルもあれば私のお店が持てる!!そして素材の発注も余裕でできる!」


 ダメだ、コイツも金の亡者だ・・・。

 でも、こいつらは知らないんだ。このモンスターがドンだけやばいのか。


 「私の剣の錆になんなさい!!」


 回復魔法の使える剣士。


 「・・・タマ・・・!」


 ドS女とその下僕ペット


 「私のために倒れてください!」


 駆け出しの金の亡者。

 そして、俺というSPD極振りの盗賊シーフ的職業な人。


 「不死龍アンデッド・ドラゴン狩るようなPTじゃない・・・」


 そう言いつつ、俺は不死龍アンデッド・ドラゴンの前に躍り出る。

 すると、いきなり不死龍アンデッド・ドラゴンは大きく口を開けた。


 「ンなバカな!?まだそこまでのダメージはいってないはずだ!?」


 「え?どういうこと!?」


 「咆哮ブレスだ!!」


 俺はそう叫んだと同時に、不死龍アンデッド・ドラゴンの射線上から離れた。

 すると、毒々しい緑色の霧がものすごい勢いで吐き出される。

 不死龍アンデッド・ドラゴン咆哮ブレススキル、猛毒の咆哮ポイズン・ブレス。ダメージがでかいうえに高確率で毒状態になり、追加でダメージを受けるというふざけた技だ。しかも、この技、一定時間フィールドに残り、そこへうっかり入るとダメージを受ける。


 「その霧に絶対触れるな!」


 そういうと俺はまたも単身で不死龍アンデッド・ドラゴンの目の前に。そして前足で攻撃をされそうになり、俺のスピードで不死龍アンデッド・ドラゴンを回り込むように移動して攻撃を回避し、こちらが一撃を加える。すると、本当に数ミリほどだけHPバーが減少した。

 コイツの攻撃は前足、咆哮、尻尾のどれかだ。それさえ気をつけていればなんとでもなる。

 でも、問題がもう一つだけあるんだよな。ちらりと不死龍アンデッド・ドラゴンのHPバーを見ると、そこにはHPバーが全快の不死龍アンデッド・ドラゴン

 


 「・・・やっぱ、回復リジェネーションするか・・・」


 そう、コイツはなんと常時回復スキルを持っている。

 確か、二十秒間に数パーセントだったはず。

 でも、今回の俺達のPTにはコイツのダメージを削れるような人がいない。


 「・・・なぁ、やっぱ逃げようよ?俺達じゃ無理」


 「不可能を可能にするのが人間ってものなのよ!!」


 「いや、でも現実では無理だから」


 「・・・・・・タマだけじゃ、火力不足」


 「お金、お金!」


 ダメだ。現状でまともなヤツが不本意だけどイースしかいない。

 そして、俺は不死龍アンデッド・ドラゴンから意識を外していたためにヤツの攻撃のタイミングを見逃していた。

 気付いたときにはヤツの尻尾が俺を捉えた。

 そして、俺は盛大に吹き飛ばされた。


 「ちょ!?・・・余所見なんかしてるから」


 ロゼが呆れた声で言うが今の俺はそれどころじゃない。

 おかしい。

 何故か、体がものすごく痛い。

 これは何回もいうがゲームだ。

 もちろん、痛みといったものはほとんど無い。例え、ダメージを受けたとしてもそれはピリピリとした静電気の時のような痛みを感じるだけだ。だから、こんな風に体を真っ二つにされるような痛みはありえない。


 「ま、まさか、バグモンスター?」


 「ミッドさん?どうしたんですか?」


 俺に気を取られて、ミサが振り向く。

 そして、それを狙ったかのように不死龍アンデッド・ドラゴンの口が大きく開く。


 「ダメだ、全員、逃げろ!」


 「は?」


 俺は痛む体に鞭打って思い切り走ろうとする。

 すると、いきなり俺の見る世界がスローになる。

 それに構わず俺はゆっくりと動く世界を駆け抜け、目の前にある不死龍アンデッド・ドラゴンの顎へとダガーの斬撃を放つ。

 俺の攻撃により、攻撃準備を行っていた不死龍アンデッド・ドラゴンのスキルはモーションキャンセルされ、スキルは不発に終わる。

 それと同時に俺の見る世界はごく普通のスピードを取り戻した。

 そして、俺を見て驚きの表情で見る三人。


 「・・・ミッドさん、何をしたんですか?」


 「Pスキル『獣の力アニマル・フォース』。たぶん、動物が元のキャラは最初から習得してるヤツだ。HPバー残量がレッドで発動する」


 Pスキル『獣の力アニマル・フォース』。これはまぁ、火事場の馬鹿力敵なスキル。HPバーがレッドに到達すると確率で発動し、数秒間能力が上昇する。

 これには熟練度は無く、本当にたまにしか発動しない。今回はかなり運がよかった。


 「とりあえず、全員逃げろ!状況が変わった!」


 「ちょ、いきなりどうしたのよ?」


 「アレはバグモンスターって俺達は呼んでる!よくわからないけど、アレはたぶんこのゲームのバグ塊なんだと思う!」


 『バグ』。虫の意味を持つコンピュータのエラーの一種。

 それは、このゲームにもあるようで、俺は不本意だけど、本当に不本意だけどアレの存在を認識している。

 でも、『守護神ガーディアン』もそうだろう。

 俺がバグモンスターといった瞬間、イースが驚きの表情を見せた。

 始終ポーカーフェイスの少女がそんな顔を見せるのは何だかほほえましい。・・・いや、今はそれどころじゃない。


 「アレに出会うとかなりまずい。個体によって違うけど普通のモンスターより強いことが多いし、最悪で攻撃されたときに痛みを感じる」


 「はぁ?でも、これはゲームよ?」


 「だからバグ・・なんだよ。アレはこのゲームのエラーなんだ」


 「で、でも、そういうのは運営が・・・」


 「だから、俺達はココに囚われているんだ。GMコールを試したりもしたけど外界とのコンタクトは不可。そしてエラーのお知らせもできないどころか直してももらえない。でも、一つだけ運のいいことがある。・・・こいつらは、倒せる。だから・・・今から裏技を使う」


 あんなのを放っておけば多くの人が被害を被る。

 これはゲームなんだ。これを知らない人はそのまま楽しくプレイしていればいい。でも、コイツはそんな事お構い無しに破壊の限りを尽くすからな。ここで倒しておかないとゲームを楽しむなんてできなくなる。


 「裏技?・・・アンタ、ハッキングでもするの?」


 「違うよ。こいつ、物理攻撃は効きにくい。でも、クリティカルはその限りではないんだ」


 「・・・でも、クリティカルは確立の話」


 「いや、俺が狙うのはこいつの急所だ」


 クリティカルヒット。

 俗に言う致命的な一撃。このゲームでももちろんある。基本的にクリティカル発生率はステータスのDEXに依存される。

 だが、それ以外にも強制的に・・・・クリティカルを発生させる方法がある。それが、モンスターそれぞれの急所、要するに弱点を攻撃することだ。


 「でも、私はコイツの弱点なんか知らないわよ?」


 「大丈夫だ。不本意だけど・・・本ッ当に不本意だけど俺が知ってる」


 「・・・すみません、ミッドさんって何者ですか?」


 「ただの猫妖精ケットシーだよ」


 そういうと、何故かミサが驚愕の表情を浮かべる。

 ・・・俺、何か変なコト言った?

 まぁ、いい。今はコイツを倒すことからはじめよう。

 そして、俺は走る。

 勝負はすぐに決める。

 誰よりも速く、どんなものよりも速く・・・。

 俺は体制を低くして駆け抜け、コイツの弱点ウィーク・ポイントである尻尾の付け根に行き、ただ手に持ったダガーを振るう。

 そして、俺はスキルを発動させた。

 俺がスキルの構えを取ると、システムのアシストが働き、体が勝手に動く。

 そして、目にも留まらぬ動きでダガーが四回振るわれる・・・・・・・


 「な、なにそのスキル!?」


 「は、速い・・・!」


 「・・・それが、タマ二号の、力」


 驚愕の表情を隠さない人たちに若干の優越感を感じつつ俺は答える。


 「≪リスタ・ソニック≫。俺の、最強にして最速のスキル」


 ≪リスタ・ソニック≫。

 これはチュートリアルで覚えることのできるスキル。

 ただ、あまりにも威力が低いのですぐに熟練度を上げるのを諦めてしまうというスキル。

 ただ、コイツは俺にしてみればものすごく強いスキルだ。

 だって、本当に・・・目にも留まらないスピードで己の武器を振るう技なんだから。たぶん、後の三人からしてみれば俺は何もしていないのに、いきなり不死龍アンデッド・ドラゴンのHPバーが大きく減ったようにしか見えなかっただろう。

 そして、俺の攻撃で力尽きるようにして不死の龍はどうと倒れた。


 「・・・はぁ、久しぶりにスキルとか使った」


 「久しぶりって・・・。まさか、アンタ・・・私を助けたときに使ったスキルって」


 「・・・カンストさせた、≪リスタ・ソニック≫?」


 俺はなんか言ってる三人のところに戻る。


 「≪リスタ・ソニック≫は熟練度八〇〇ぐらいでやっと性能に変化が出るんだ。で・・・」


 俺が言葉を続けようとしたときだった。

 後からいきなり何かの咆哮が聞こえた。

 慌てて振り返ると、そこには倒したはずの不死龍アンデッド・ドラゴン

 しまった・・・。コイツ、低確率でHPバー十パーセントぐらいで復活することがあるんだった・・・!それが、コイツが不死龍アンデッド・ドラゴンって呼ばれている理由なのに!!

 今から攻撃しようにも俺の体が思考に追いついていない。

 やられる・・・!

 俺は、思わず目を閉じた。




用語集


地下ダンジョン・『ナゴヤ』の地下にあるダンジョン。中級プレイヤー向け


魔宝魂ソウル・オーブ・モンスターが低確率でドロップするアイテム等の素材。モンスターの等級が上がる毎にドロップ率が減る。


不死龍アンデッド・ドラゴン・ダンジョンのボスを任されることが多いモンスター。普通に強い。


Pスキル・常時発動型パッシブスキルのこと。熟練度を上げるのが面倒なうえ、ステータスポイントも入らない。しかし、極めたPスキルの恩恵はすさまじい。


バグモンスター・『GWO』内に存在するバグの一種?詳細は不明

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