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箱庭ゲーム  作者: 夜猫
ポセイドンと毛糸玉
35/52

クエスト33・冥界の神とミノタウロス

お久しぶりです。

ついにあのお方の力が色々と解放!


それと活動報告を見てくれると嬉しいです

Player-カイ

 薄暗い、石壁の通路を進む。


 「・・・カナリア、次はどっちだ?」


 俺がカナリアに次の道を聞くと、カナリアはうーんと考え始め、電波を受信。


 「こっちです!」


 ビシッと一つの通路を指さす。

 ・・・よし。


 「全員、こっちだ」


 俺達はカナリアがさした方向とは逆の道に進む。

 すると、何故か急にカナリアが騒ぎ出した。


 「何でですか!?」


 「「「・・・え?」」」


 「・・・え?なんですか、その、この子いきなり、宇宙人の言葉でしゃべっちゃったよみたいなノリの驚き方は!?しかも、皆さんですか!?」


 だって、『アリアドネ』がそう言うミラクル過ぎる勘だからなぁ・・・。


 「けど、実際には奥に進めてるだろ?」


 ちょうど近くに見えた迷宮の途中地図をカナリアに示す。

 どうも、この地図によれば、かなり近いところにまで来ているらしい。


 「っう、本当です・・・」


 「いい加減に気付いてくれ、自分が方向音痴だってことに」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・重症な、な」


 「わーん!」


 兄貴によってとどめを刺されたカナリアは、自分がさした方向とは逆の方向に向かう。


 「・・・ありゃ、筋がねいりだなァ」


 「・・・まぁ、な」


 自分が行きたい方向にもいけないとか、不憫すぎる。

 そんな明らかに今からミノス王と死闘を繰り広げる雰囲気ではない俺達は、数分後に無事『迷宮』のボス部屋に到達。


 「たぶん、ミノス王は前みたいに『ウラ』を適当に歩いてます」


 「前に来た時も、ここには何も出なかったし」


 レグルスとヒナがそう教えてくれた。

 なら問題ないと特になんにも考えずに扉に触れる。すると、扉が大きな音を立てて内側に開く。

 そして中に何もいないことを確認して、前回同様に壁を押す。


 「「「モォー!!」」」


 すると、俺達は複数の牛の雄叫びという、ものすごく珍しい歓待を受けた。

 ・・・あれ?


 「・・・オイ、誰だよ。ここに何もいねェとか言いやがったヘタレと、うるさい方の双子」


 「「・・・」」


 レグルスとヒナは睨んできた華から眼を逸らす。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出待ち、か」


 出待ち。

 ホラーゲーム、それも逃走系の奴によくある現象だ。さっきまではその部屋にいなかったはずなのに、何故か部屋を出ると、背後からどこからともなくやってくるアレだ。

 簡単に言えば、新手の待ち伏せ。

 そして俺達はまさにそれに遭った。

 後ろを見れば、どこから現れたのか、三体のミノタウロスが出てきた。


 「・・・たぶん。こいつらもバグモンスターだな」


 華の冷静な分析。けど、ちっともうれしくない。むしろ不幸だ。

 俺は口から出かかった様々な文句を腹に押し込め、肩に担いでいた『魚人の肉匙サハギン・フォーク』を構える。

 だが、そこで兄貴が前に出る。俺達はそんな行動を起こした兄貴の後ろ姿を見ていると、兄貴は一言だけこう言った。




 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ここは、俺に任せて先に行け」





 「エルダーさん、それは死亡フラグです!」


 カナリアが律儀にそう突っ込んでくれた。

 だが、俺達はそれを聞いてむしろすぐに行動を起こした。


 「お前等、先に行くぞ!」


 各自、自分の武器をいつでも使えるように準備してから返事をし、奥に進む。


 「え?皆さん、先に行くんですか!?エルダーさん、このままだとフラグを回収してしまいますよ!?」


 「問題ない!むしろ、フラグを立てたから行く!」


 「意味わかんないですよ!?」


 ものわかりのよくないカナリアを無理やりに走らせ、説明をする。


 「お前、何で俺達がエルダーのことを『兄貴』って呼んでるかわかってるのか?」


 「・・・いえ?」


 「兄貴はな・・・」


 後ろでミノタウロスが雄叫びを上げ、兄貴に突撃してくる。

 カナリアはそれを見て、眼を閉じる。しかし、そこで漆黒の杖を握った兄貴は杖を前にかざす。そして自分の神器を発動させる。


 「『冥王星の闇兜ハデス・ヘルム』」


 ギリシャ神話、『冥界の神ハデス』の神器。それは『闇の兜』と呼ばれる物。これを被れば、相手から姿が分かりにくくなるらしい。だが、それでは『悪戯の魔神ロキ』のGスキルとかぶってしまう。

 そこで、あの『ハデス・ヘルム』には相手に狙われにくくなる通常より少し強めのヘイト値減少の効果と、Gスキルがついている。

 もちろん、そのGスキルは『冥界の神』にふさわしい、そして俺と一対一タイマンを張ることが可能な、数の暴力を具現化したかのようなGスキル。


 「≪マルティオ・トゥ・ネクロース≫」


 兄貴の眼前に漆黒の影が生まれ、そこから次々と手が生えてきた。ただし、骨や腐った肉の。

 それぞれがボロボロの武器を装備しているが、中には稀に全身を甲冑に身を包んだ骸骨の兵士やゾンビの兵士がいる。だが、これではまだ終わらない。


 「≪冥界の番犬ケルベロス召喚≫」


 さらに兄貴の周囲に漆黒の魔法陣が展開。そこから黒い毛並みの、五メートルほどの大きさの、イースの魔氷狼フェンリルに勝るとも劣らない大きさの犬が現れる。

 あまりに有名すぎる、三つの頭を持つ地獄の番犬。冥界から死者が逃げ出さないように入り口を守る番犬。ただし、甘いものが大好きと意外に可愛い部分もある。

 普通ならここで終わるんだが、残念なことに兄貴はまだまだ終わらない。


 「≪双頭の黒犬オルトロス召喚≫」


 現れたのは『ケルベロス』よりもほんの少し小さい程度の、それでもかなり大きい体躯に二つの頭を持ち、尻尾が蛇になっている黒い犬。『ケルベロス』の弟に当たる『オルトロス』。

 ミノス王のときは、この数の多さが俺達の動きを阻害しかねないために控えてくれていたが、兄貴はこと拠点の防衛戦においては最強を誇っていると言っても過言ではない。

 俺はそれをカナリアに余すことなく伝えきることに成功した。


 「たた、確かにこれはすごいですけど、相手はバグモンスターですよ!?神器盗ったり、わけのわからない攻撃してくる怪物モンスターなんですよ!?」


 確かにそうだ。

 けどな、兄貴にはもうひとつだけ無意味にすごいところがある。


 「兄貴は、俺達の間では『常識破りフラグブレイカー』なんて呼ばれてんだよ」


 「・・・どういう、ことですか?」


 話は少し変わるが、普通カナリアのふざけた『アリアドネ』を見せつけられて、たかがあの程度で納得するだろうか?断言してもいいが、絶対に無理だ。

 だって明らかに超能力じゃないか、アレ。そんな力を信じろと言うことの方が不可能だ。だが、俺達が比較的簡単に『アリアドネ』を信じた理由、それが兄貴の『常識破りフラグブレイカー』のおかげと言っても過言ではない。

 まぁ、長い前置きはここまでにして率直に言おう。





 「兄貴は、建てたフラグを必ずへし折る」




 しかも、こういう戦闘系のみ。

 色恋沙汰はあまり聞かないが、たぶんそっちは色々な意味で大丈夫だと思う。市井の声は『兄貴、かっけぇー!』『兄貴さん、マジパネェっす』『アニキさん、結婚してー!』等々だ。


 「だから、兄貴はフラグさえ建てれば絶対に勝てる!」


 ただし、アスカさんの場合は見た瞬間に『・・・』と無言だったので普通に負けた。アレは流石にしょうがない。


 「・・・あ」


 カナリアが何かを言おうと口を開く。

 そして、兄貴に向かって大きく一言。


 「兄貴さん、頑張ってくださーい!」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前もか」


 残念だったな、ブルータス。

 地味に意気消沈したにもかかわらず、兄貴の従えた亡者の軍団+犬達はその牙をミノタウロスに向ける。

 亡者の軍団達はそれほど強くはないが、その数でミノタウロス達のHPを徐々に削っていく。そして冥界の犬達はミノタウロス達にその牙、爪をたてていく。

 能力値的にはユニークモンスターの魔氷狼フェンリルには劣るが、漆黒の炎の伊吹ブレスで確実なダメージを与えている。


 「とにかく、俺達は先に行くぞ!カナリア、先を頼む!」


 そして、俺達は兄貴を置いて先に進んだ。

 迷宮に入り、カナリアの先導で進んでいくと、聞き覚えのある雄叫びが聞こえ、それと同時に迷宮が地響きのよな音を立ててうごめきだす。


 「こっちも、おいでなすったか・・・!」


 今回は一本道ではなく、まるで戦うことが目的であるかのような大きな広間のような空間が出来上がる。

 そして目の前にはミノス王。その手には俺の神器である、『海王星の三叉矛ネプチューン・トライデント』が握られている。


 「会いたかったぜ、ミノス王・・・!」


 こうして、俺達の戦いが始まった。




Player―エルダー

 俺のGスキルは≪マルティオ・トゥ・ネクロース≫。ギリシャ語では『亡者の軍団』のような意味を持つ。

 このスキル特徴はいたって簡単で、このスキルを発動する前にどれだけのMPを使用するかを聞かれる。それに自分の好きな量のMPをつぎ込むと、スキルが勝手にそのMPに見合ったアンデッド系のモンスターを召喚してくれる。普通なら『スケルトン』や『ゾンビ』といったモンスターが出てくるが、時たま『スケルトン・ナイト』や『ジェネラル・ゾンビ』といった上級モンスターも運次第で出てくる。

 俺の検証結果では、一度にMPを多く振り込めばそれだけ多く出てくるようだ。

 そして『ケルベロス』と『オルトロス』。こいつらはGスキルではないが、『ハデス・ヘルム』を装備していると使える召喚系スキルだ。

 北欧神話領の『魔氷狼フェンリル』のように乗れる、アイテムを拾ってくれるといった性能スペックはないが、戦闘に関しては勝るとも劣っていないと俺は思っている。

 そして俺はそいつらに指示を出す。


 「奴等を、殲滅しろ」


 その言葉に二頭の怪物は雄叫びをあげ、ミノタウロス達に襲いかかる。

 オルトロスはその俊敏な動きでミノタウロス達を翻弄し、二つの頭や尻尾の蛇で噛みつく。そしてケルベロスはその三つの頭で噛みつくことによって、猛毒の状態異常を高確率で相手に与えることが可能なモンスターだ。


 「「「モォー!!」」」


 三体のミノタウロス達は雄叫びをあげ、拳を亡者の軍団や番犬達に振るう。ただし、この状況では明らかに多勢に無勢だった。

 ミノタウロス達もバグモンスターなのか、沸点が低いように思える。そのせいで普通ならばもっとダメージを与えてから変化するはずの攻撃パターンも既に変わってしまっている。

 ただ亡者の軍団達がその相手をしているので、正直意味はない。

 そして、このGスキルは他のGスキルとは違う特徴がある。俺は先ほどから乱用しているMP回復のアイテムカードを握りつぶすのをやめ、杖を掲げる。


 「≪マルティオ・トゥ・ネクロース≫」


 再び、Gスキルを使用。

 このGスキルは重ねがけが可能なタイプらしく、MPが回復次第何度でも発動できる。

 やられてしまった亡者たちをはるかに超える数の軍団が再び召喚され、ミノタウロス達に突撃していく。

 減り方はかなりゆっくりとした歩みだが、確実にダメージを与えている。

 これならば、そう遠くないうちに勝てる。

 そう思った時だった。ミノタウロス達が息を吸い込むようなモーションに入る。その動きには見覚えがある。ただ、こいつ等はそのスキルを使わないはず・・・?


 「「「―――!!」」」


 三体が同時に吠える。

 あまりの音量に、何と言っているのかわからない。そして、その空気を揺るがす咆哮が亡者たちの足を止め、更にはダメージを与える。


 「ッ!?」


 ≪咆哮ハウリング≫と呼ばれる、おもにモンスターたちが使うスキルだ。このスキルを受けると、気絶スタン状態になるというだけの技。

 だが、どういうわけかダメージまで入ってきた。そして俺の脳裏に案山子のあの状態がフラッシュバックする。

 ただ今回は何もなかったらしく、俺の体に異常はない。普通に動ける。それを確認していると、今度は何かがこちらに向かって走ってくる音が聞こえた。

 そちらを見てみると、案の定ミノタウロス達がこちらに向かって突進してきていた。

 亡者たちがその射線上に割り込み、止めようとするが、次々に蹴散らされていく。


 「・・・MPが、足りんな」


 Gスキルを使ってヤツを止めるには、少々MPが心もとない。

 ならば・・・。


 「・・・≪全弾射出フルバースト≫」


 俺の眼前に様々な魔法陣が展開され、そこから闇属性系を中心とした魔法が次々に放たれる。

 ミノス王同様に魔法耐性が低いミノタウロス達はたたらを踏み、突進の勢いを弱める。

 その隙に俺は奴等の射線上から離れ、脇にどく。

 すると、数瞬まで俺がいたところをミノタウロス達が突進していき、派手に壁へ激突。


 「・・・やれ」


 俺の言葉に反応し、そこへ番犬と亡者たちが殺到する。


 「・・・ふむ。少し、危なかった」


 正直な話、Gスキルを使ってその場から動いたのは久しぶりだ。

 ・・・うまく避けられて、よかった。


 「「「モォー!?」」」


 そんなことを考えていると、ミノタウロス達のHPが尽き、姿がドットへと変換されていくところだった。


用語集

ハデス・一番上のお兄さん、まさに兄貴。冥界の神であるため、オリンポス山には一番日の短い冬至にしか来れなかった。


闇の兜・ハデスの神器。被ると姿が見えなくなる。


ケルベロス・甘いもの大好き、三つ首の番犬。後、音楽も好きなのか、吟遊詩人オルペウスの曲で寝る等、お茶目なエピソードの絶えないワンちゃん。


オルトロス・ケルベロスの弟。二つの頭に、尻尾に蛇を持つ犬。ヘラクレスによって退治させられてしまう。

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