クエスト31・魚人の肉匙
サブタイが変?
気のせいです。べ、別に、思いつかなかったわけじゃないんだからね!
ちょっと、『ひゃっふ~』な感じの話入ります。俗に言う、サービスシーン?とにかく、R15指定です。苦手な人はごめんなさい。
Player-カイ
セットしたタイマーの音で目が覚めた。
そして眼を開ければ、視界いっぱいに肌色が広がる。
・・・・・・おかしい、俺の部屋には肌色の家具なんてなかったはず。大体、青を基調とした部屋にどんと肌色置くとか、俺は製作者の色センスを疑う。
しかし、よく見てみれば目の前の物体は顔に見えなくもない。
小顔で、切れ長の目、そして金髪の髪。・・・・・・あれ?俺の知り合いに条件に合致するやつがいた気が?
「んん・・・」
ほんの少し、動いた気も・・・・・・って、華!?
俺は目の前の状況が理解できず、後ろに下がろうとする。けど、何故か体が動かない。よくよく見てみれば、華が俺に抱きついていた。抱き枕的な感じで。
「待て、俺。落ち着くんだ。超落ち着け。き、昨日のことを、思い出せ」
まず、おやっさんところで拳で語り合う。
その後、華がなんか自爆して、店にいた客もろとも正座してギリシャ神話領みんなの晒しものの刑に処される。
華がヤケ食いだと、飲食店をハシゴし始め、俺はそれに付き合うハメに。
で・・・・・・。
「そ、そう、だ・・・」
思い出した。思い出したくなかったけど。
こいつ、酔っ払ったんだ。・・・・・・炭酸ジュースで。
まさか、そんなマンガでしか聞かないネタをガチで発症するバカがいるとは思わなかった。・・・いや、正確にはたぶん場酔いだと思うんだけどな。たぶん、こいつはその場所の雰囲気で酔っ払ったような感じになっただけだと思う。なんかバーっぽい雰囲気の所中心に連れまわされたし。
まぁ、まるで酒でも飲んだみたいに酔っ払ったこいつを背負って、深夜の『ホワイト・オリュンポス』に連れてくことに成功。けど、問題はそこからだった。
確か、昨日のやり取りは・・・。
~昨晩(深夜)~
「おい、ついたぞ。さっさとここ開けて、帰れ」
「えぇ~。寂しいの~」
「アホなこと言ってないで、扉開けろ」
個人部屋は、本人が開けない限り絶対に開かない。だから、俺が代わりに開けようとドアに手をかけてもびくともしない。
だから、この酔っ払いが扉を開けない限りは部屋に放りこめない。
「もっと~、あそぼーよぉー」
「はいはい、明日な。あ・し・た!」
「いやぁ~。今すぐがいいのぉ~」
知るか!?
だが流石酔っ払い、常識が通用しない。なら、こっちも常識を無視する!
俺は背負った華を投げ捨て、こいつの部屋の前に放置。そして自分の部屋に戻って行った。
「何~。どっか行くの~?」
だが、酔っ払いに腰のあたりを両腕で掴まれた。
「自分の部屋に、帰る」
「ついてく~」
「即断過ぎるだろうが!?」
とりあえず、自分の部屋の前に行く。
そして華を投げ飛ばし、自分だけ悠々と部屋に入る。・・・完璧だ。
「へー。これがカイの部屋ぁ~?」
「・・・何でいる!?」
何故か、華が中に侵入していた。
「こう、ワカメみたくぬるっと入って・・・」
「誰も侵入方法を聞いてない!つか、意味わかんねー!?」
「・・・」
唐突に、華が静かになる。
今度はなんだ?いつもそうだけど、酔っ払ったこいつの次の行動が全く予想できない。
そして華が口を開く。
「・・・眠い」
「さっさと寝てくれ」
自分の部屋で。
そう言おうとしおたら、華は元気な声で『はーい』とか言って、寝た。俺のベッドに。しかも、装備をすべて外してダイブ。そしてこのゲームの仕様上、装備を全部外すってことは、初期外装になるってわけで・・・。
何が言いたいかといえば、だ・・・。初期外装、下着だけなんだよな・・・。
も、もちろん、キャラメイキングして、いざゲームの世界に降り立つときは無料で初期装備くれたぞ!?
って、違う。そんなことを考えるな!
いや、違う!むしろ考えろ!俺は見ていない!断じて!華の意外にかわいい、し・・・・・・とにかく見ていない!!
「おおおお、俺、俺も、ねね、寝る、わ」
そこで何故か腕をがっと掴まれる俺。そして首の後ろに手が回され、力づくで互いの顔を寄せられる。
「おやすみのちゅー」
「だだだダダダだ、ダレガ、そそ、そんそん、そんナ、ことスルかー」
もういろいろとアウトだった。
だが、そんなことをしているうちに華が眠る。俺はその隙に腕を外して逃れようとするが、何故か華に抱き枕よろしく抱きつかれた。
最早、脳がオーバーヒートしすぎて冷静な思考ができない。そして俺にはそこからの記憶が途切れている。
「・・・死んだ」
目の前で幸せそうに寝る華を見てそう思った。
抜け出そうにもがっちりとホールドされていて、少しでも動けば、確実に華は目を覚ます。
なんだよ、このクソゲー!?
俺にはデッドエンドしか選択肢が残されていないじゃねぇか!?
そんな時、俺の扉の前から足音が聞こえた。
俺の許可がない限り、開くことはないが、今のこの状況から何故か身構えてしまう。そしてあろうことか俺の部屋の扉がノックされた。
俺は思わずびくりと体を震わせるが、すぐに落ち着く。
「俺が、入室許可を出さなきゃ、開かない」
それに、声を出さなきゃ留守だって思うかもしれないしな。
それこそ、扉を・・・。
「カイさん?扉が半開きっす・・・よ?」
・・・・・・半開きにでもしてなけ、りゃ・・・。
「・・・すんません、失礼しました」
入ってきたそいつは、何も見なかったかのようにすっと扉を静かに占めた。
「違う、違うんだぁー!?」
「・・・あぁん?うっせェな」
そこで華が起きた。
華は寝起きがいいのか、平常時の鋭い目でこの部屋の状況を見る。
そして現状を理解し、腕を俺から離し、ついでに俺をベッドから蹴落とす。そして自分はベッドのシーツを手繰り寄せて自分の体を隠す。
「ガキ、てめェには刺激が強すぎっから、さっさと出てけ」
「言われなくとも。自分、そこまで野暮じゃないっすから」
そういって俺の部屋に入ってきたやつにそう言い、言われた方もごく自然に出ていく。
「ちょっと待て!?おかしいだろ!?明らかに誤解されてるぞ!?」
「あぁ?昨日、アンだけ激しくしたのにか?」
俺は至極まともなことを言ったはず。
なのに、いわれのない罪を着せられそうになっている。
「何もしてねぇよ!?むしろ、お前がいろいろな意味で激しかったわ!!」
酒癖的な意味で。
「ガキの前で話すことじゃねェだろうが」
「自分、これでも十七っすけど?」
「ッハ!チビのくせに粋がってんじゃねェよ」
「・・・ぺったんこのアンタに言われたかねぇっすよ」
「んだと?この引き籠りのチビのくせに?」
「なんすか、『絶壁のアテナ』さん?」
「マジで、死にてェようだな?」
誰か、この二人を止めてくれ・・・!
何とかこの二人をなだめることに成功した。
現在、俺は目の前にいる、身長百六十弱の小柄な少年に事の弁解を図っている。
「つーわけでな、別に、俺と華は何もしてないぞ。つか、ゲームでそんなことできるか!」
「・・・知らないっすか?このゲーム、実はできるらしいっすよ?」
「・・・」
いろいろと叫びだしたい気分になったが、ぐっと堪えた。
目の前にいるのは、百六十弱の背丈に、眠そうな目、つなぎを着た見た目は少年のプレイヤー。ちなみに超毒舌。こいつは『コーダ』。『ホワイト・オリュンポス』にいる最後の神、『火と鍛冶の神』の名前を持つプレイヤーだ。
「ッケ!ガキにゃまだまだ早ェよ。つか、カイは知らなかったのかよ」
「なんだよ、その自分は経験者だぜみたいな物言いは?」
「さーな。なんなら、今度教えてやろうか?」
華がニタニタと笑いながら俺に絡んでくる。
つか、いい加減に装備をつけろ!目のやり場に困る!
「そこの『絶壁の変態』」
「あぁん?誰が絶壁だと?」
いや、反応するところがおかしい気がする。
「アンタっすよ。アンタ以外のどこに変態がいるっすか?あぁ、間違えました。アンタは胸が絶壁の変態でしたね」
「貴様・・・」
華のイラつきゲージがこれまでにないレベルで上昇中。
もう、疲れた。いろいろと。
「華、相手にすんな。話が進まない」
「そうすっよ。カイさんの言うとおりっすよ」
「・・・ガキ」
「ぺったんこ」
・・・・・・もう、本当に嫌だ。
「で、華になんか用か?」
これ以上は俺の精神衛生上、非常によくないので無理やりに話を進める。
「頼まれてたもの、作ったっす」
「バッ!?今、ここで言うな!!」
「・・・なんか、頼んだの?」
目に見えて動揺し始めた華。
俺はとりあえずコーダに聞いてみることにした。
「えぇ。なんか、カイさんのメンタルがヤバいらしいって言ってきて、俺にフォーク作れって言ってきたっす」
「てめっ!?」
殴りかからんばかりの勢いで華がコーダに詰め寄ろうとするが、手繰り寄せたシーツが邪魔で思うように動けていない。若干、と言うか結構意味が不明すぎる話だが、コーダの話はなおも続く。
「よくわかんないっすけど、『ダイダロスの迷宮』でなんかあったらしいっすね」
「まぁ、な・・・」
こいつはいつも自分の工房に引きこもって作業をしているせいで、俺達とはあまり会話をしない。と言うか、俺はこいつをいつぶりに見たんだ?
「そんで、三叉矛をパクられたってのは本当っすか?」
「・・・あぁ」
コーダはわけわかんねぇっすと言いつつ、一枚のカードを取り出し、俺に渡す。
「・・・なんだ、これ?」
「華さんの注文の品っす」
・・・いや、余計に何で?
困惑した表情の俺の顔の前に、コーダはカードを突きつけた。どうやら、武器のカードらしい。名前は『魚人の肉匙』。
「って、マジでフォークにしたんじゃねぇだろうな!?」
何故か俺の横にやってきた華が怒鳴る。
だが、絡まって動けねェとか言ってる。
「バカすっか?アンタの知能指数低すぎる脳味噌が三叉矛のことをフォーク言うのは知ってるっすよ。だから、ちゃんとした三叉矛にしたっすよ。つか慰めるって言ってたっすけど、流石にこれはドン引きっす。いくらカイさんが心配だからってこれはないっすよ」
「黙れ。ガキにゃ、このウチの高尚過ぎる慰め方の一片も理解できねェよ!」
「そうっすね。アンタの辞書に載ってる『高尚』って言葉と、こっちに載ってる『高尚』じゃ、意味が全然違うらしいっすからね」
「・・・あァ~!!」
シーツからやっと抜け出せた華は、イラついた声を上げながらその手に握ったシーツをコーダに投げつける。
そしてアイテムインベントリからいくつかのカードを取り出し、まとめて握りつぶす。すると光が華の体を包み込み、光が消えると、そこにはシンプルな普段着に身を包んだ華の姿。
そしてそのやたらと鋭い目で、慣れてない人なら身が竦んでしまいそうなぐらいな眼力で俺を睨む。
「勘違いすんなよ。ウチは、ただ不抜けたお前がうっとうしくて・・・」
なんか途中から言葉がごにょごにょと尻すぼみに小さくなっていく。
・・・・・・・まぁ、要するにそう言うことらしい。
「悪かったな、そこまで心配させて・・・」
「バッ!?心配なんかしてねェーよ!」
「あんだけ必死に頼んどいてそれっすか」
「クソガキっ!」
「じゃ、俺の仕事は終わったんで。今回はそこの喧嘩女の弱みを握ったってことで、金はいらないっす」
そう言って、今度はコーダが華にシーツを投げつけ、そのまま俺の部屋を出ていく。
シーツに阻まれてコーダを逃がした華は顔を赤くして怒っている。
「クソ!」
「・・・仮にも女なんだから、そんな言葉を使うな」
「へーへー。どーせ、ウチはぺったんこな男女ですよ~」
何故か不貞腐れて俺のベッドへうつぶせに倒れ込む。そして俺達の間に何とも言えない空気が漂う。
「・・・その、なんだ、ありがとうな」
「・・・別にィ。うっとうしかっただけだ」
「けど、お前のおかげで立ち直れたからな。・・・本当にありがとう」
「・・・ッケ」
華はなおも顔をベッドにうずめたまま、不貞腐れたような態度で吐き捨てる。
俺はそんな華が心配し、俺の為にわざわざ犬猿の仲のコーダに作らせた武器を装備してみた。
それは、やはり三叉矛だった。このゲームでは槍に分類されている三叉矛だが、あんまり数はない。それに、普通の槍のように切りはらえないし、突撃槍のような威力もない。まぁ、イロモノの武器と言う程度の認識どまりだ。
だが、流石は『ヘパイストス』。青に、黒い網目模様の柄、そして三つ叉の矛はまっすぐに伸び、先端には返しが付いている。
そして数々の補正効果。水属性系スキルにいくらかの補正がつき、さらにはSTRとINTもかなり強化されるようだ。
「・・・強い」
「ガキにしちゃァ、いい仕事してんな」
華がベッドにうつぶせのまま、横目で俺の新しい武器を見てくる。
「あぁ、マジでありがとう」
「気にすんな。この埋め合わせはそのうち貰う。・・・だが、その前にやらなきゃいけねェことがある」
いつもの調子に戻った華はそんなことを言う。
俺はその言葉に強くうなずいた。
「・・・あぁ。あの、『ミノス王』をぶっ飛ばす」
「ッヘ!イイツラになったじゃねェかよ。んじゃ、今回はウチも一発暴れさせてもらうとするかァ」
こうして俺達は決意を新たに、『ダイダロスの迷宮』に挑んだ。
用語集
ヘパイトス・鍛冶の神。キュクロプスを従え、様々な神々の武具を鍛え上げている。後に、愛と美の女神と結婚している。・・・ちくしょう。