クエスト23・オーディンの行軍
Player-タケル
時間は少しだけ遡る。
俺はローランの機転で世界樹の内部に侵入することに成功。
敵が攻撃してくるが、俺の回復力を持ってすれば問題ない。適当に敵を潰しつつ先に進み、俺はそこに着いた。
俺は扉を蹴破るようにして入り、剣を構える。
「ロキ・・・!」
「は、はひぃ!?」
そこにいたのは数人のプレイヤーだった。しかも、驚いた少女以外は図々しくもお茶と菓子を食いまくっている。俺を見ても『あ、なんか来た』とその程度の反応だ。
明らかに戦闘要員じゃない雰囲気。まさか、部屋を間違えたか?
「ようこそ、アーサー王」
「誰だ!」
突然声が聞こえた方向に向けて剣をぶんと振る。
だが、相手を確実にとらえたかのように見えた俺の剣は空を切り、突然現れたプレイヤーはのほほんと会話を続ける。
「危ない危ない。とりあえず、戦場に放った他の『ラタトスク』達の報告によれば・・・そこの彼女に見覚えがありません?」
そう言いながらさっき驚いた少女を指さす。
チャラい男にナンパまがいのことをされているが、律儀にも俺の方を示して『お話を聞かなくてもいいんですか』と聞く少女をじっと見るが、覚えがない。
「こう言えばわかりますか?貴方は五人のプレイヤーと魔氷狼を見ましたね?」
「・・・」
そう言えば、魔氷狼に乗っていた少女に似ていないこともない。
いや、まさか・・・・・・!
「御名答です。と言うわけで・・・!」
俺に話しかけていたプレイヤーがいきなり動く。
手をさっと振る。それだけで俺の体がヤツに引き寄せられ、ヤツはタイミングを見計らって俺を思い切り扉に蹴る。
「(プレゼント!)」
一瞬、そんな文字が見えた気がした。
その瞬間、俺の目の前に黒い物体が投げ込まれる。それは見るからに・・・。
「爆弾・・・!?」
爆弾だった。それが爆ぜ、俺は吹き飛ばされる。
あまりの威力に扉の外へと飛ばさてしまった。
そして俺はやつ等と戦うが、異様な強さ、チームワークの前に成す術もなく拘束された。
その後、やつ等はのんきにもさっき俺と戦っていたライトと、ロゼとか言う廃人プレイヤーに自己紹介を始めた。
・・・・・・こいつら、仲間じゃないのか?
「あの、大丈夫でしょうか?」
ロゼと呼ばれた少女がその声に反応し、振りかえる。
すると、驚愕の表情を顔に貼り付けて言う。
「何で、ミサがここにいるの?」
Player-ミッド
「トム!?」
「何で、あいつがここに!?」
アスカも突然のトムの登場に驚き、目を白黒させる。
しかもトムがいた場所はイースの後ろ、つまりはタマの背中にいる。でも、そこにいたのはミサのはずで・・・。
「≪なりすまし≫か!?」
「それでミサちゃんになり済ましていたのね!?」
「とにかく行け!」
そう言うと、トムはこのゲームの雰囲気に似つかわしくない、やたらと機械的な弓を敵に向け矢を放つ。この弓はMPを消費して光の矢を作り出し、それを相手に射ることができる。
これがトムの持つ武器『魔法の枝』。
俺も詳しくは知らない謎に包まれた武器。わかっているのはロキが鍛え上げたということだけだ。この『レーヴァテイン』は一般的には剣と言われているが、槍や矢、枝じゃなかったかとも言われている。
そして、このゲーム内ではそれら全部があてはめられた。
トムは近寄ってきた敵に牽制の矢を放ち、レーヴァテインをいじる。すると弓が折りたたまれ、剣の形をとる。それで敵を薙ぎ払い、自分に敵を寄せ付けない。
「イース!俺を敵から守れ!」
「・・・・・・わ、わかってます」
イースは事態に驚きつつもタマを駆って戦場を縦横無尽に駆け抜ける。
だが、敵も魔法スキルや弓スキルでトムを狙う。
「≪トリックスター≫!」
これが、ヤツの最後のGスキル。
効果はいたって簡単で、SPDと回避率を+50%するというものだ。発動すれば最後、遠距離攻撃系スキルはほぼ当たらなくなる。しかも、こいつの装飾品は回避率上昇系で統一されていたから、もう絶対に当たらないと思う。
「ミッド、今のうちに行くわよ!」
「お、おう!」
トムがいい感じに敵を引きつけておいてくれるおかげでこっちには攻撃が来ない。
俺は最後のナイフへと思い切りジャンプし、そこから下へ向かって蹴る。
そこは既に敵の本陣の真ん前。突然現れた俺達にここを守っていたプレイヤー達が面食らうが、すぐに攻撃を仕掛けてくる。だが、もう遅い。
「アスカ、行って来い!」
「分かってるわよ!」
そう言うとアスカは俺の背中を蹴り、目の前にいるプレイヤー達を無視して中に飛び込む。これで、俺の仕事は完了。
・・・・・・いや、少しだけ残ってるか?
俺はアスカを追おうとしたプレイヤー達を回り込み、その前に立つ。
「・・・残念だけどな、こっから先は通行止めだ」
「どけ!」
「邪魔だ!」
そんなことを言いながらプレイヤー達が俺に襲いかかってきた。
Player-モリガン
目の前に突然一人の少女が現れた。
眼帯をした少々エキセントリックな少女。と言うか知り合いのオーディンことアスカさんだ。
「・・・まさか、この作戦を使ってくるとは思いませんでした」
「・・・」
目の前にいるアスカさんはただただ沈黙を守る。
私の近くには数多くのプレイヤー達がいますが、誰も動かない。いえ、誰も動けない。なぜならここにいる全員が古参プレイヤーで、この作戦が発生した場合に起こる次の内容もわかっているから。
もう、既にゲームは終わっている。
「・・・アンタねぇ、あたしがどんだけ迷惑被ったと思ってんの?」
「・・・」
もう、目の前で青筋立てて怒るアスカさんが鬼か何かにしか見えない。
と言うか、本当ならここで土下座でもして謝りたいけど、これは彼女の怒りの火に油を注ぐだけのような気がしてならない。
「と言うわけで、死んで詫びなさい!」
「全員、総攻撃!希望を信じなさい!」
「イエス・サー!!」
もう、みんな無理だとわかっていながらも、スキルを発動してアスカさんに攻撃しようとする。
でも相手は・・・・・・戦争と死の神だ。むしろただの死神。
「≪デア・ローガンツェ≫!」
オーディンのGスキル。意味はよくわからないけど、たぶん不吉なんだろうなと言うことはわかる。
アスカさんの上空に魔法陣のようなものが浮かび上がったかと思うと、そこから光が放たれ、更には哄笑までもが響く。そして、私達は殲滅され始めた。
Player-ロゼ
私達はここは任せてくださいと言う『ラタトスク』達を信じ、戦線に戻ってきた。
まさか、もしもの時のためにミサとファントムさんが入れ替わっていたとは驚きだった。ミサはついさっきまで『ラタトスク』の人達とお茶していたらしい。
そしてその時、急に相手の本陣方向で光が散った。何事かとそっちを見るけど、そこには阿鼻叫喚の地獄絵図としか言いようのない光景が広がっていた。
敵本陣付近に魔法陣のようなものが展開され、幾筋もの光が敵を襲う。すると、当たった瞬間に敵はHPがゼロになってドットへと変換されてしまった。
「何、あれ!?」
「・・・俺も噂で聞いてただけですけど、まさかあそこまでとは」
そう言うと、ライトが説明をしてくれる。
「実ははこの北欧神話領の神名持ちの俺や先輩と言った人達のGスキルは対人戦闘向けしかないんです」
確かに、そう言われるとそんな気がする。
イースも一応は範囲っぽい気がしないでもないけど、狭いし。ライトのヤツは完全に対人向けだ。
「でも、オーディンだけは違うんです」
「違うって、広範囲型のGスキルってこと?」
「はい。まぁ、それがあれです」
そう言いながら私に敵の殲滅されていく光景を見せる。
オーディンの使う『グングニル』は百回投げれば百回当たる百発百中の槍。しかも、手元に戻ってくるらしい。けど、このゲームでは少しニュアンスが違うみたいだ。たぶん、このライトの持つ『ミョルニル』とかぶってしまうからだろう。
アスカさんの『グングニル』は百回投げれば百回当たる技じゃなくて、百回投げて百回当たると言う技なんだろう。
「まぁ、そう言うわけかあのスキルは異常に強いって先輩から聞いてたんですけど・・・」
「・・・どうしたのよ?」
「・・・いや、それより恐ろしいのがスキル発動中のアスカだって言っていまして」
よく意味がわからず、首をひねる。
・・・いや、あんなにすごいスキルなら、別にここからやればいいんじゃない?わざわざ相手の陣地にまで出向いて発動する必要性がない。
「・・・どうも、アスカさんは『トリガー・ハッピー』ならぬ『スキル・ハッピー』らしいです」
「・・・・・・は?」
一瞬、意味がわからなかった。
いや、意味はわかる。『トリガー・ハッピー』は確か銃を持って撃ち始めるといろいろとヤバい方向へイッちゃう症状。だから、『スキル・ハッピー』はそのスキル発動バージョン。
でも、あり得ない。だってアスカさんはミッドに対してはあんなのだけど、基本的には優しかった。スピカさんに続く超まともな守護神だと思っていたのに・・・!?
「・・・まぁ、そう言うわけでスキルの発動ができないとは聞いていたんだ。確かにあれじゃ、敵も味方も巻き込んでアスカさんの一人勝ちって状況になる」
確かに、いまだにものすごいエフェクトが散り続ける。たぶん、アスカさんはMPが切れるまで暴れ続けるのだろう。そしてミッド達じゃないと無理な理由。それはアスカさんのあのスキルを避けることができるのがミッド達だけって意味なんだと思う。
私は今も続いている目の前の光景に、ただただ唖然とするだけだった。この光景はシステムアナウンスがこちらの勝利を告げるまで延々と続いた。
Player-ミッド
あの領地争奪戦、と言うかただの惨劇から数日。
俺と師匠、そしてイースにトムはあの死神の哄笑とともに敵陣に降り注ぐ光線の雨の中を必死で生き抜いて勝利した。
と言うか、俺が指示をしてみんなに当たらないようにしてたんだけどな。正直な話、この作戦はアスカにとっちゃラッキーと言うものかもしれないが、俺達にとっては悪夢以外の何物でもない。
今俺達は世界樹の外の庭にいた。思い思いに適当な時間を過ごしている。
「つか、何でお前はあんなところにいたんだよ?」
俺は味方をも騙してミサになり済ましていたトムに聞いた。
「あれか?簡単だ。敵側には少なからずお前とアスカを見れば俺達が何をしようとしているのかわかるやつがいるだろう?」
「まぁな。それはわかる」
「なら、効率的な対処法もすぐに思いつくだろう?」
「・・・なるほど。俺に追いつけるような奴はほぼいない。しかも今回に限って言えば、俺を倒せる可能性がある愛美もやられてる」
「そうだ。だからやつ等はアスカがスキルを使う前に勝つ必要があった。そうなったら今回の大将である、神名持ちでも戦闘能力の低い俺ならと、こぞって敵の大部分が来る」
「そうすれば、敵は俺達とお前の方に戦力が分散されるわけか」
「あぁ。まさか敵の大将が自ら乗り込んでくるとはだれも思わないだろうからな。そのうえでお前等攻撃組で一番安全そうなイースの後ろにいたんだがな」
「だから、あんとき不自然にイースとミサを俺達の方に入れたんだな」
「あぁ。だが、彼女には悪いことをしたな。作戦とはいえ、結局はあのアホ共と会話していただけだしな」
「・・・まぁ、別にいいんじゃないか?」
俺はそう言いながらある方向を指さす。トムがその方向を見ると・・・。
「ミサちゃん、とりあえず俺とデート行かない!?」
「ミサさん、とりあえず元隊長の普段はどんな感じですか?」
「(たぶん、イースさんにちょっかいを受けて死にそうになってると見た!)」
「甘いぞ、二人とも。俺の考えではロゼさんもそこに加わっている」
「たぶん、みなさんの考えている通りだと思います」
「話を聞いてくれー!?」
「な?」
「・・・まぁ、よかった」
地味に『ラタトスク』と打ちとけたミサの姿がそこにあった。
しかも、会話の途中に『じゃ、今度ミサさんのお店に行きますね』とか聞こえた。・・・なんだか、ミサの店の客層が大変なことになりそうだ。
「ミッド、トムと話してる時に悪いんだけど、報酬は?」
アスカが俺とトムの会話に参戦。
でも・・・。
「・・・そんな話あったっけ?」
「無いわよ。でもアンタ達がこういう傭兵まがいなことするんなら報酬はキッチリ出さないと、足元見られるわよ?」
なるほど、ここでタダ働きしたのに俺のところで何でしないみたいな感じか。
「まぁ、それならそれで適当にやるだけだけどな。それこそ『スレイプニルの指輪』と≪スレイプニル≫縛りで戦う」
「・・・それじゃぁ、アンタはただのザコじゃない」
「それに、基本的に俺達は好きなように好きなことやってるような連中が多いからなぁ・・・」
俺がふと視線を投げると、そこにはロゼとライトがいた。
どうもロゼはライトの戦い方にいろいろと不満があるらしく、スパルタで教え込んでいる。
「遅い!もっと早く!」
「剣と鎚じゃ勝手が違うんだよ!?」
「なら、つなげられるスキルの組み合わせを考えなさい!」
・・・まぁ、ロゼは回復がすごいからそっちに目が行きがちだが、ロゼ自身も相当強い。ロゼはスキルの多さを生かして次々にスキルをつなげていくことが得意だ。一回、どこまでつなげられるか実験してみたが、途中でループしたので諦めた。本人は武器が欲しいと嘆いていたけど。
「・・・そういや、ロゼが武器の素材を欲しがっていたな」
「何なに?呼んだ?」
「うわっ、早っ!?」
いきなりロゼがやってきた。なんというか、地獄耳だな。
「ロゼちゃん、武器の素材が欲しいの?」
「あぁ、まぁ。私は本当は刀使うんですけど、ほとんどの刀は魔法に補正がかかんなくて・・・。それでしょうがなくこの剣を使ってるんです」
そう言うと、ロゼは自分の腰にさした剣を見せる。
確かこの剣は『祈りの剣』。回復効果に補正のつく実は超レア武器。槍使い達が使う『銀色ロンギヌス』並みに有名ではないが、一部では結構高額でトレードされていると聞いたことがある。
「・・・これでも納得しないの?」
「だって、私の友人が言うには素材さえあれば、この『祈りの剣』を使って刀にできるらしいんです」
「要するに、『祈りの剣』ならぬ『祈祷の刀』でもできるのか?」
俺がそう言うと、ロゼはうなずく。
「たぶん、そんな感じ。私の使うスキルも元々は刀のスキルだから、刀にできたらそっちのが威力が高くなるのよね。それに、装備ボーナスの関係で刀装備の時のセットのが強いのよ」
装備ボーナスって言うのは、装備した時に発生するボーナス。まぁ、そのまんまだな。
これは神話領ごとのキャラでその神話領に関係した装備をすると若干ステータスに補正がかかる。
たとえば、日本神話領だったら着物とか武者鎧とかを装備するとステータスが少しプラスされる。
ロゼの装備はまぁ、なんというかちぐはぐだ。アクセサリーは日本神話領のモノだし、鎧とかは西洋系の。たぶん、性能重視してんだろう。
そして、ロゼが装備ボーナスついて装備しそうなのは・・・。
「・・・破壊僧が武装巫女にでもなるつもりか?」
「薙刀でも装備してアンタに斬りかかろうかしら?」
「やめてくれ。うなされる」
「はいはい。アンタ達が仲いいのはわかったから・・・で、素材は?」
「確か・・・」
ロゼが必要な素材を二、三上げていく。
どれもモンスター素材で、しかも俺達みたいな弱小PTじゃ手が出せないようなものばかりだった。まぁ、守護神ぐらいの大手ギルドなら簡単に手に入るようなものばっかだけどな。
「・・・それぐらいならすぐに上げれるわ。・・・でも、ロゼちゃんはアーサー王相手にかなり奮闘したのに、これだけでいいの?」
「・・・正直な話、これ以上に欲しいものは無いですからね~」
「そう?でも、こっちの都合でかなり振りまわしたし・・・」
「それがわかってるなら、いい加減に俺のストーカーを何とかしてくれ」
「いいじゃない、生まれてこの方モテたことのないアンタにモテ期到来よ?」
「ストーカーにモテて嬉しいヤツがいたら見てみたい」
「でも、イースちゃんって可愛いよね~」
・・・師匠、アンタもいきなり出てきて何を言い出すんですか?
と言うか、つい最近『どこぞの(以下省略)』的なことをイースに言ってバトルしてませんでしたっけ?
「え~、なんのことかな~?」
「ナチュラルに心読んで・・・。まぁ、そんなことより、ミサはいいのか?今ならアスカが権力乱用してすっげぇ報酬くれるぞ?」
「そ、そんな・・・私は何もしてませんし・・・」
「・・・じゃぁ、『魔法の枝』をやる」
今まで空気と化していたトムがそう言った。
・・・まぁ、トリッキーな武器だけど大丈夫か?
「・・・いいんじゃない?」
「まぁ、ミサちゃん弓使うしね」
アスカと師匠もそれでいいんじゃないかと言うノリで言う。
じゃあと言いながらトムはトレードウィンドウを立ち上げ、ミサにも早くあけろと促す。
「ちょ、ちょっと待って下さい!?『レーヴァテイン』なんて、明らかに超レアな匂いのする武器はダメですよ!?明らかに神級ですよね!?」
・・・ミサ、ひょっとして勘違いしていないか?
「・・・あぁ、これは大丈夫だ。この『レーヴァテイン』は俺の創作スキルで作れる武器だ」
「・・・はい?」
「知ってるか?ロキは実はいろいろな神話武器の創作に関っている。まぁ、ほとんどが口八丁で作らせたものだけどな」
「で、その中の一つが『レーヴァテイン』。俺がロキになった時、ミッドが創作スキルでひょっとしたら作れるかもしれないってことに気づいてな。やってみたらあんな武器ができた。・・・・・・どれがいい?」
俺とトムはそう説明しながらミサに無理やり言ってトレードウィンドウを開けさせる。
そして、ミサはげんなりとした表情になる。
「・・・何で、『レーヴァテイン』って名前の武器がいくつもあるんですか?」
「作ったからだ」
「・・・じゃぁ、これにします」
「わかった」
そう言うと、トレードが開始。すぐに終了して武器の所有権がミサに移る。
これでPKでもされない限りこの武器をなくすことはない。
「それは癖が強い。その武器は弓の他にも剣やなんかのスキルも使えるからな。他にもあるが、大体はその武器を使っていれば勝手に覚える」
「分かりました」
「よかったな。これでミサも最強への一歩を踏み出したぞ」
「何故か、嬉しいと思えないんですけど?」
「・・・で、アンタは?」
アスカが俺に聞いてくる。
・・・・・・正直な話、特にこれと言ってない。
「しいて言うならイースのことを頼む」
「分かったわ。イースにミッドが会いたがっているって言っとくわ」
「分かっててやってるだろ!?」
「・・・・・・呼んだ?」
「呼んでない!?」
神出鬼没すぎるイースが出現した。
つか、何で俺の位置がこんなに簡単にわかるんだよ!?
「・・・・・・タマには、Pスキル『追跡』がついてる」
「心を読むな!?つか、それで俺を追ってたのかよ!?」
無駄な使い方すぎる・・・!
Pスキル『追跡』は登録した相手を簡易マップで追えると言うもの。俺の『索敵』が対象を選ばないのに対して、これは対象を選ぶという感じか?たぶん、タマの『追跡』を使えばタマが自動で俺のところに来るようにしてあるんだろう。イースは俺を追跡しているタマに乗るだけで俺にたどり着ける。
「・・・・・・ハニーたるもの、ダーリンの位置は把握すべし・・・」
「誰がハニーで、ダーリンだ!?」
「・・・・・・そんなにテレないで」
会話ができない!
頼むから普通の会話をしてほしい。
「・・・・・・そう言えば領地争奪戦、終わった」
「いきなり内容が変わったな。それがどうした?」
「・・・・・・≪魔氷狼召喚≫」
そう言うと、イースの近くに魔法陣が浮かび上がり、そこから蒼い毛並みの大きな狼が現れる。そしてイースはいつものようにタマにまたがる。
・・・もしかしなくても、嫌な予感しかしない。
「・・・・・・タマ二号、覚悟」
「何で!?休戦中じゃ!?」
「・・・・・・終わったから」
「卑怯だ!?」
俺はその言葉を最後に思い切り逃げた。
他のヤツ等が俺かイース、どっちが勝つか賭けを始めやがった。しかも、全員何故かイースに賭けている。賭けが成立しない上に、俺の味方がいない・・・!?
やたらと天気のいい世界樹の周りをただ必死に逃げた。どうも俺の平和な日々はまたも遠ざかってしまったみたいだった。
というわけで二章はこれにて終了です。
もう少しうまく終わらせられるような気がしないでもありませんが、自分の技量では無理でした。すみません。
一応、三章のほうもぼちぼちと進めていこうと思っています。メインで書いてるほうよりもなぜか進むので、ひょっとすると、こっちを先にするかもしれません。
次の話の内容はカイを中心にした話にしようか、それともミッド達の過去の話にしようか少しだけ悩んでいます。もしよければ、感想にどっちがいいか書いていただければ、それも考えの中に入れてやっていこうかなとも考えています。
では、次回の話でもよろしくお願いします。