表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭ゲーム  作者: 夜猫
領地争奪戦
23/52

クエスト22・ロキの策略

Player-ロゼ

 「どこまで行ったのよ!?」


 「分からない!けど、転移結晶は無効してあるからヤツは階段を使うしかない!」


 「私達も同じだけどね!」


 私とライトはアーサー王のあとを追って世界樹ユグドラシルの中の階段を駆け上がっていた。時折ドットとなって消えていく人がいるけど、今は蘇生している時間がない。私は申し訳なく思いつつも階段を駆け上がり続けた。

 どんなに駆け上がっても一向に見当たらない。既に第五階層、本格的にまずい。


 「こんな時に、あのダメネコがいれば・・・!」


 「俺も今だけはそう思います!」


 そしてついに第九階層。オーディンこと、アスカさんの執務室のある階層。ファントムさんはそこに籠っている。


 「ダメ、なのか・・・!」


 「弱音を吐くな、新米神様!まだ領地争奪戦エリア・ウォーの終了が宣言されてないってことは、まだファントムさんは大丈夫なのよ!」


 弱音を吐くライトに檄を飛ばすけど内心は私も同じだ。

 でも、こんな姿をあのダメネコに見せたら、ものすごくバカにされそうなので脳内でミッドを惨殺しておく。

 そして、ついにアスカさんの部屋の前に来てしまった。


 「いない・・・!」


 「さっさと中に入るわよ!」


 私がそう言った瞬間、部屋の扉が派手な音を立てて開き、中から誰かが吹き飛ばされる。

 まさかファントムさんかと思ったけど、中から出てきたのはアーサー王だった。


 「お前達、何者だ・・・!?」


 アーサー王は部屋の中に向かってそう言う。

 すると、それにすぐ返事が返ってきた。


 「俺ですか?俺はこの『グリーン・ユグドラシル』のメンバーの一人、『ハンゾー』です」


 そう言いながら、数人のプレイヤーが出てくる。

 それは、私達が帰る時に見かけたプレイヤー達・・・。


 「『ラタトスク』、か?」


 「あ、トールさんじゃないかぁ!お疲れーっす!」


 「(乙)」


 「適当なツンデレ発言が見当たらない・・・!」


 「いや、必要ないからな。今はアーサー王をなんとかしような」


 「そこだ!」


 すると、アーサー王が一番最初にハンゾーと名乗った人へ攻撃を仕掛ける。


 「危ない!≪フルーグ・ハンメル≫!」


 ライトがそう言いながらスキルを発動。

 ライトの持つ『ミョルニル』が電気を纏ったかと思うと、それをアーサー王に向けて投げる。不意打ちを受けたアーサー王はそれをもろに受ける。でも、まだ終わっていない。投げれば帰ってくる『ミョルニル』は雷になって更にアーサー王を攻撃。ライトはシステムのアシストに従ってアーサー王に肉薄し、手に戻ってきた『ミョルニル』をアーサー王に向けて思い切り叩きつけた。


 「ッチ、HPが!」


 「ありがとうございます、トールさん。じゃ、俺も・・・」

 そう言いながらハンゾーさんはさっと手を振る。それだけの行動のはずなのに、アーサー王は大きく回避行動をとる。


 「・・・ありゃ、バレてきた?」


 「じゃ、俺とへな子で行く。いいよな?」


 「(おふこーつ!)」


 なんだかチャラい印象の男の人と、さっきからメモ帳機能で会話する少女が前に出る。

 男の人は両手にナイフを、少女は小太刀を構えると素早い動きでアーサー王に肉薄。ミッドには劣るが、相当速い・・・!


 「(喰らえ、隊長直伝!)」


 「「≪スレイプニル≫!」」


 すると、二人はスキルを発動。しかも≪スレイプニル≫だ。でも、意外にも私の目でも捉えられるぐらいに遅い。ミッドなら発動した瞬間に、コマ送りでもしたかのように相手の後ろにいる。そしてHPはゼロになっている。更にこいつ等が使った≪スレイプニル≫は威力が低い。


 「・・・ッチ!高速の連続スキルか!」


 アーサー王は舌打ちしつつ距離をとる。


 「隊長に比べたらまだまだだっての」


 「(隊長なら、既にHPはゼロ! (‐ω‐)ッフ)」


 「お前ら、元隊長だからな」


 「はいはい。アーサー王は異常な回復力を持つ。一気にたたみかけろ」


 「おう!」


 「(ガッテンダ!)」


 そう言うと、二人はまた突撃。

 そして、構える。


 「あのスキル・・・!」


 次の瞬間、エフェクトが散り、四つの斬線が残る。それに加えクリティカルの発生したことを示すエフェクトまでも散っている。しかも、二人ともだ。これが意味すること、ミッドお得意の強制クリティカルをこいつらも発生させてみたいだ。これじゃぁ、≪リスタ・ソニック≫を使ったミッドの戦い方そのものだ。


 「舐める、なっ!」


 「ほい!」


 反撃しようとしたアーサー王にそのタイミングをそぐようにして矢が放たれ、更にはツンデレ発言がどうとか言っていた女の人が不思議な武器を振るう。

 それはまるで鞭のような剣とでも言うのか、剣身が複数のパーツに分かれ、それらがワイヤーでつながれているっぽい。


 「見たか、連節剣の力!」


 どうも、連節剣と言うらしい。剣の柄の部分に銃の引き金のようなものがついていて、それで剣を伸ばしたり、元に戻したりしているみたいだった。


 「これでフィニッシュ!」


 ハンゾーと言う人が手をさっと振る。

 でも、特に何も起こったように見えない。だって、アーサー王のHPバーはゼロになっていない。むしろ全快になりかけている。


 「ッチ、これじゃ動けない・・・!」


 「・・・なんで?」


 「あぁ、ロゼさんはこれを見たことがないですか?」


 何で私の名前を知っているのか疑問に思いつつハンゾーさんが差し出した手を見る。

 ・・・特に、これと言って何もないけど?


 「知らないみたいですね。これ、『鋼糸』って言う暗器なんです。この専用のグローブをはめて使うんですけど、無茶苦茶難しいんですよね」


 そう言いながら朗らかに笑う。


 「まぁ、こいつは本当は切断に使うらしいんですけど、スキルに相手を拘束するものがあって、それを使わせてもらいました。これは鋼糸で相手をぐるぐる巻きにして拘束するんで、状態異常の効かないアーサー王にも通用する数少ない武器です」


 そう言いながら私に見せる。

 確かに、よく見ればとても細い糸がアーサー王にぐるぐると巻きついている。


 「あ、そう言えば紹介が遅れました。『ラタトスク』、現隊長のハンゾーです」


 「(癒し系のメモ娘兼副隊長のへな子です (^ω^)/ヨッ)」


 「ツンです。べ、別にアンタのために名乗ったんじゃないんだからね!」


 「ツンちゃん無理やりだぁ。俺はアレクサ・・・」


 「チャラです」


 「・・・俺はアレクサン」


 「こいつはチャラ」


 「俺はアレクサンド・・・」


 「(彼はアレクサンドロスです)」


 「俺はチャラです・・・はっ!?」


 ものすごくばかばかしいことをしているけど、大丈夫なんだろうか?

 すると、部屋から声が聞こえてきた。


 「あの、大丈夫でしょうか?」


 と言うか、聞き覚えのある声。

 何気なく声の方向を向くと・・・。


 「何で・・・!?」


 そこには意外と言うか、あり得ない人物がいた。




Player-ミッド

 「やっぱり、敵の攻撃がきつい!」


 「ミッド君、どうせなら空を走ってよ!」


 「無理です!」


 「・・・・・・嫁の力を、使う時が来た?」


 「なんなの!?イースはそのフレーズが気に入ってるの!?」


 「・・・・・・ハニーと言ってくれれば元気百倍、マイダーリン」


 「意味がわからない・・・!」


 「だ、ダメ、ぷくく!も、もう、笑い死ぬ・・・!」


 俺達は緊張感のかけらもなく敵本陣の前で足止めを喰らっていた。

 そして、アスカは敵陣のど真ん中にも関らず笑い死にそうだった。

 誰が指示をしたのか、相手は魔法の弾幕で俺達を寄せ付けまいと鬼のような攻撃を仕掛けてくる。


 「でも、本気で空でも飛ばないと難しいかもよ」


 「・・・だよな」


 相手の方からは『ちょこまかと・・・!』的な感じのセリフが多々漏れ聞こえる。そのうち後ろから敵の増援も来るだろうし、てか来てるし何とかしないと・・・。


 「・・・はぁ・・・。で、ミッド。あたし思いついたのよ」


 「何がだよ?」


 俺は敵の集中砲火を避けつつ、アスカの言葉に耳を傾ける。


 「アンタが、空を走る方法」


 「それができりゃ苦労はしない」


 時折やってくる攻撃、矢や剣を適当に捌く。

 イースはタマを必死に操って敵を蹂躙しているが、ミサはどうも振り落とされないようにするだけで精一杯なようだ。

 今一番戦力として活躍しているのが師匠。

 師匠は風のように走って相手を切り刻み、風の魔法スキルを使って敵を吹き飛ばす。それはまさに一騎当千。緑の颶風が吹いたかと思えば、敵は次々に倒れていく。ただ・・・。


 「見るなぁー!?」


 「え!?ちょぉ!?」


 普通に戦ってほしかった・・・!

 今の師匠は軽く暴走状態だ。師匠は普段ボロボロのマントに身を包んでいる。理由は簡単、恥ずかしいから。自分の装備が。

 これは『グリーン・ユグドラシル』創設の頃、アスカが四つの戦乙女の鎧ヴァルキリー・メイルなるものをゲット。その一つを師匠に無理やり装備させ、現在に至る。師匠は可愛い妹のようなアスカの頼みを断り切れなかったのだと思う。そして、師匠はこの装備を見られるとバーサク状態になり、見てしまった相手はもれなく瞬殺される。

 まぁ、俺やアスカと言った昔から知っている、あるいは知られてしまった相手に対しては既に悟りの境地に達し、開き直っている。


 「・・・さすがスピカね。マントを奪ったかいがあったわ」


 「お前が犯人か!?」


 酷い上司だった。


 「そんなことより、アンタ投擲スキルを鍛えてるでしょ?」


 「ん?あぁ。・・・言ってなかったか?」


 投擲スキル。これは投擲専用武器を投げることができるスキルだ。熟練度によって威力と精度が上昇する。カンストさせても絶対に命中とか言うのは残念なことにない。


 「それを使うのよ」


 どう使うんだよ。俺はそう聞こうとしたが、次の瞬間察した。

 何回も言うが俺は『猫足キャット・ポー』と言うスキルを使える。それの発動条件はいたって簡単。ただ蹴ればいい。壁はもちろん、人であれモノであれ、相手の剣、武器等々。つまり、こいつが言いたいことは・・・。


 「・・・無理だ。確かに実行できるかもしれない。けど、そうすると助走がいる」


 「どれくらい?」


 「・・・たぶん、二十から三十メートル。追いつけることは既に確認済み。けど、ミスる可能性が何とも言えない」


 気分は某赤い帽子とツナギを着ているの配管工だ。そいつのまねごとをするにしても、ここじゃ人が多すぎて距離が確保できない。


 「何のためのスピカなのよ。・・・スピカ、そこの男がスピカをエロイ目で見てた!!」


 「・・・はい!?」


 いきなり指を指された男は急に顔を赤くし、挙動が不審になる。

 ・・・・・・なるほど、その手があったか。

 師匠はアスカの声を聞いた瞬間、そのターゲットをアスカが指さした人に変更。師匠がその人もろとも敵の陣を切り崩し、道を作る。


 「・・・思いのほかうまくいったわ、ミッド!」


 「わかってる!ミスっても文句言うなよ。イース、俺の動きを目で追って、必要がありそうだったら助けてくれ!」


 イースに一言だけ言う。

 たぶん、これだけであいつに意味は伝わるだろう。

 俺はアスカの作戦通り『投擲』スキルを起動。投擲ナイフを等間隔で師匠の作った道に投げる。階段を作るように。


 「行くぞ!」


 「行きなさい!」


 俺は全力で走る。

 景色がゆがみ、目の前にあるナイフもカタツムリのようにゆっくりと動いているようにしか見えない。

 俺はそのナイフを踏み、蹴りつけ、更にその次にあるナイフを踏んで、また蹴りつける。

 こうすれば、俺は最早空を走っているようにしか見えないだろう。実際に、俺達を見たプレイヤー達は唖然としているほかに何もできない。

 そして・・・・・・。


 「モリガン!」


 アスカが親の仇でも見るかのようにモリガンを睨む。

 まぁ、もしも負けたらやられることに鳥肌が立つのはわかる気がする。俺もイースの被害に遭っているものの身としては同情せざるを得ない。

 俺は目の前に見える最後のナイフであいつの近くに飛び降りればいいと判断してそのナイフへと飛び移る。


 「≪ライトニング・サンダー≫!」


 ・・・忘れてた。俺はあいつの嫉妬メーターを振り切れさせていたことに。

 既に詠唱の準備がしてあったのか、これまた大規模魔法スキルを俺に向けて放つ。あんなの喰らえば、俺はおろか、アスカでさえもただじゃ済まない。

 紫電の塊が俺とアスカの進路上に放たれる。慣れないことをして、スピードがいつもより遅くなって捕捉されたんだろう。ヤバい、詰んだ・・・!?

 これはもうアスカを適当に投げるしかないと判断した俺はアスカを思い切り投げようとした。

 するとその時、一筋の光が紫電の塊を貫く。そしてそのままスキルを相殺してしまった。


 「さっさと行け!」


 俺は聞こえた声に驚くしかない。

 だってそれはここにいないはずのヤツの声で、もっと言えば数日前に久しぶりに聞いた男の声だ。


 「「トム!?」」


用語集

魔女モリガン・正確には、『破壊と戦の勝利をもたらす女神』。主に女性の姿で現れるが、もっぱら烏の姿で戦場を舞う。モリガンに気に入られた男性は援助を受け取ることができた。

そしてその唯一の例外がクーフーリン。モリガンを振ったのでモリガンはキレる。そのせいでモリガンはクーフーリンにヤンデレを発揮。クーフーリンはことごとくを返り討ちにした。だが、後に自分のけがを手当てして命の恩人になった彼に尽くすことを決めた。そして、クーフーリンの臨終時、肩には烏がとまっていたとか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ