用意
「おっ、姉さんおかえり」
宿に帰ると、ヘンブランが魔道具をいじっていた。
「ヘンブラン、体調は?」
「まだマシになったな、完全復活とはいかないが」
「そうか、なら良かったよ」
ヘンブランが意外と元気そうで安心した。
「そういえば―――」
シュミッドの頼みで、ダンジョンに潜ることにしたことを話す。
「はぁ!?ダンジョンに潜る!?」
ヘンブランの驚きの声が部屋に響く。
「しょうがないよ、シュミッドの頼みだ」
「はぁ…わかったよ…」
ヘンブランは渋々といった様子だったが、納得してくれたようで良かった。
さあ、用意をしよう。ダンジョンは危険な場所だ。
まず必要なのは魔導書と携行食、ポーションは多めに持って行くとして、あとマナが切れたとき用のロープとランプ、念の為に寝袋も持っていこう。あとはこのテントかな…
そうしてどんどんバッグに荷物を詰め込んでいくと、いつの間にかバッグはパンパンになっていた。
「困ったな…バッグに入り切らないや…」
「いや、絶対そんなに荷物いらないだろ…」
そう言うと、ヘンブランはため息をつきながらバッグに手を伸ばし、荷物を手に取った。
「これ、明らかにいらないだろ…」
ヘンブランはバッグから掴んだ荷物をどんどん放り出していく。
「ちょっとなにするんだよ、ヘンブラン」
「姉さんは魔法使いだろ?魔導書、ポーション、携行食のこの3つで十分だ!」
「備えあれば憂いなしだよ、ヘンブラン」
ヘンブランは、更に深い溜息をついて言う。
「あのなぁ…重い荷物はダンジョンでは命取りになりうる。できるだけ軽装にしとけ」
確かにそうだ、大きい荷物があると背後の敵を狙いにくい。
その言葉に納得していると、ヘンブランが何かを渡してくる。
「これ使え、大容量ベルトポーチだ。見た目の5倍は物が入る」
試しに魔導書やポーション、携行食など、ヘンブランに言われた物を詰め込んでみるが、まだかなりスペースがありそうだ。重さも入れた物の数に対してかなり軽い。
「ありがとう、ヘンブラン。助かったよ」
「いいってことだよ、姉さん」
さあ、用意はできた。明日はダンジョンに潜ってみるとしよう。
「明日に備えて今日は早めに寝ようかな。おやすみ」
「おやすみ、姉さん」
「もう朝か…」
部屋の窓から朝日が差し込んでいる。
さあ、行こう。
私はそそくさと着替えを済まし、昨日ヘンブランと用意したベルトポーチを着ける。
「じゃあ、行ってくるよ」
まだ寝ているヘンブランにひと声掛け、私はダンジョンへ向かった。




