鍛冶師
「久しいのぅ、エルフィ…」
アイアンゲイルについた私達は、思わぬ人物に出迎えられた。
「久しぶりだね、シュミッド。元気してた?」
このドワーフのシュミッドこそが、私がこの街に来たかった理由だ。
「姉さん、その方は?」
「あぁ。鍛冶職人のシュミッドだよ。紹介してなかったね」
途端にヘンブランが初めて私と会った時のように固まる。
「いま…なんて言った…?」
「だから、鍛冶職人のシュミッドだって―――」
「シュミッド!?国認定鍛冶師じゃねぇか!?」
ヘンブランが興奮収まらぬ様子でシュミッドに駆け寄る。
「握手とグローブにサイン、お願いします!」
「ああ、こんな老いぼれのでいいなら、喜んで」
「もうこの手とグローブ洗わねぇや…」
ヘンブランの様子がとてつもなく変だが、そんなことは放っておいて。
「シュミッド、国認定鍛冶師になったんだね。驚いたよ」
国認定鍛冶師とは、歴史上8人しか選ばれていない国の認めた最高位の鍛冶師のことだ。その8人のうちの1人が、目の前にいるシュミッドだ。
「ワシも選ばれたと聞いたときは人違いじゃないかと思ったよ。おかげで商売は上々じゃがな」
シュミッドがガハハと笑う。
「それにしても、エルフィがこの街に来るなんてのぅ。お前さんから手紙が送られてきたときは、そりゃたまげたぞ」
私はアンファングを出る前日、シュミッドに当てて手紙を書いていた。
自分が永滅の呪いにかかってしまったこと、美しい景色を見るために世界中を旅することにしたこと、久しぶりにアイアンゲイルを尋ねに行くことなどを書いて送ったのだ。
「永滅の呪いか…あと何年ぐらい生きられる?」
「あと50年ってところかな。世界一周ぐらいなら行けるでしょ?」
「50年か…ワシよりかは長生きしそうじゃな。お前さんからすれば短いんじゃろうが」
そう聞いたとき、シュミッドが今何歳なのか気になり、考えてみた。
80年前に会ったときには190歳前後だったはずだ。だから今は大体270歳頃のはず。
確かに、平均寿命的に考えれば50年は生きられない。
「ワシももう年じゃからのぅ…できることは若手に指導するぐらいじゃ」
よく見ると、シュミッドの腕には昔ほどの筋肉がない。
ドワーフの身体は残り寿命が50年ほどになると急速に老化が始まる。
きっと彼の身体も老化が始まっているのだろう。
「なぁ…姉さん…」
今まで様子のおかしかったヘンブランが、こちらに来る。
「暗くなってきたしよ、街に入らないか?」
空を見ると日が沈み始め、暗くなっていた。
「そうだね、私達は宿を取ってくるよ。シュミッドは工房で待っておいて」
「了解じゃ。じゃあまた後での」
「うん。また後でね」
そうして一旦シュミッドと別れた私達は宿を取り、シュミッドの工房へ向かった。




