商人
「やっと見つけた…」
森を歩いて数日間、私はやっとまともな町を見つけた。
町の名前はアンファング、どうやらエルフの里への経由地点として栄えているようだ。
「とりあえず、魔力を回復しよう。」
魔力総量が多いエルフとはいえ、数日間の野宿で魔力を消費したからだ。
魔力というのは自動では回復しない。
だから魔法発動には大気中から魔素を取り込み、魔力を補完するための詠唱が必要なのだ。
ちなみに、魔力を回復するには水に魔力を込めたポーションと呼ばれるものを飲むしか方法はなく、ポーションは8割以上がエルフの里で作られている。
エルフの里は大気中の魔素濃度が高いため、水に魔力を込めることができる量が多いからだ。
里に近いこの町ではポーションの値段も安い。
魔力の回復も済ませたところで、一つ疑問が浮かぶ。
エルフの里に近いということであれば、里に近いネーヘほうが都合がいいはず。
「おかしいな…」
「何がおかしいんだい?嬢ちゃん」
声の方を見ると、そこには一人の商人がいた。
商人は私の顔を見るなり、思考が停止したかのように動かなくなる。
「大丈夫?」
すると商人はまるで興奮が収まらないというように、いきなり肩を掴んでくる。
「嬢ちゃん、まさか…エルフなのか!?」
嫌な話を思い出した。
この世界にはエルフを奴隷として売りさばく商人がいるという話だ。
逃げようと思い魔法を発動させようとした瞬間、商人が全力で頭を下げた。
「すまねえ!!」
「え…?」
商人の思いもよらぬ行動に思わず声が出た。
商人の名前はヘンブランといい、どうやら自分より年上の相手に向かって「嬢ちゃん」なんて態度を取ってしまったことに謝罪していたらしい。
「本当にすまねえ…」
「いいよ別に、そんな年下と間違われて嬉しくないエルフはいないよ」
「いやそういうことじゃないでしょ…」
ヘンブランはこのあたりにも詳しく、数十年前とは森の様子は全く違っているらしい。
ネーヘは、20年ほど前に魔族が一時期、ピタリと進行を止めたせいで防衛をする際には必須であるポーションの必要性が激減し、ポーションの利益で財政を賄っていたネーヘは廃村となってしまったそうだ。
ほかの小さな村々も、ネーヘが寂れてしまったことで廃村となったそうだ。
ちなみに、その5年後に再度魔族が進行を始めたため、このアンファングがエルフの里に一番近いということで栄え始めたらしい。
数日後、旅に必要なものを補充した私は、アンファングを出ることにした。
「姉さん!」
そこには馬車に乗ったヘンブランがいた。
「乗ってくかい?」
「じゃあそうさせてもらおうかな」
こうして私達は鋼鉄都市、アイアンゲイルへと旅立った。




