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八百屋王女、なんの冗談ですか?ーー行方不明のパパが国王でした⁉  作者: 夢窓(ゆめまど)


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カテイ、ビック王宮にて、教育を受ける

廊下を歩く音が騒がしい。


ビクトリア(ビック)が叫ぶ。

「うわっ、床ツルッツル! すべるすべる!!」


カテイ

「ちょっとビック、走らない! ここ城だよ、城!」


侍女たちがざわつく中、

カールは静かにその様子を眺めていた。


(……面白い。というか、騒がしい。

こんなに音のする廊下、十年ぶりに見たな)


父王が、ぽそりと呟く。


「……あれが、カテイだ」


「ええ。おそらく人間ではなく、何かの“夢”だと思います」


父王

「ビクトリアは?」


「同じく、夢です」


父王が吹き出す。


カテイは王に深々と頭を下げようと――

勢い余って滑って前に倒れた。


ビック

「母ちゃん! ほら見てみ! 言わんこっちゃない!」


カテイ

「いやだもう!! この床、うちの八百屋と摩擦が違う!」


……王宮中の侍女たちが凍りついていた。


しかし。


カールだけが、静かに笑った。

とても、柔らかい笑みだった。


(……こんな明るい家族が、欲しかったな)


十年、静かすぎる場所で暮らしていた。


父上と僕が何を話しても、声は壁に吸い込まれ、

誰も笑わない生活だった。


……だから、ビックの声がうるさい。

カテイの失敗は見ていてハラハラする。


けれど――胸の奥がずっと温かい。


「この人たちを家族にしたい」


こんな気持ち、初めてだ。



父王との会話


父王

「……どうだ? 受け入れられそうか?」


カール

「はい。カテイさんもビックも……面白すぎて、飽きません」


父王

「そこか?」


カール

「家族は飽きない方がいいです。十年、静かすぎました」


父王

「……確かにな」


二人して遠くで転ぶビックを見て、深くうなずく。


カールの独白


「ビック、君が妹でよかった。

俺、子どもの頃からずっと牢屋にいたんだ。

自由な君が羨ましいんだ」




【王宮食堂・パンが小さい事件】


王宮の豪華な食堂。

ビックとカテイは、目の前に並んだ美しい料理に固まっていた。


ビック

「……母ちゃん、これ、前菜?」


カテイ

「いや、皿の余白多すぎない? 料理が迷子だよ……」


侍女ヒソヒソ

「(なんて野蛮……)」


ビックはパンを一口かじった。

小さくて、フワフワで、数十秒で消えた。


「……あれ? 食べ終わった。

ねぇ、これ“試食サイズ”とかじゃないの?」


カテイ

「ビック、黙んなさい……って言いたいけど、母ちゃんもそう思ったわ……」


貴族の少年

「田舎者は大変ですわね。食べ方も知らないとは」


ビック

「いや、普通に少ないだけでしょ!?

腹八分どころか、二分だよ!!」


食堂が凍りついた。


その時、カールが静かに立ち上がった。


「……ビックは間違ってないよ。

ここは……確かに“量”が少ない」


全員が息をのむ。


「父上、新しい家族を迎えるなら、

食堂のメニューも見直したほうがいいかもしれません」


父王

「……検討しよう」


(※王族の言葉ひとつで改革が始まる)


ビック

「兄ちゃん、優しい!」


カール

「……妹が困ってるのが嫌なだけだよ」


カールはほんの少し笑って、パンをビックに半分渡す。



【カールが初めて“兄”になる瞬間】


食後、カールはビックを中庭に連れ出す。


「怒ってる?」


「怒ってない。ただ……驚いただけ」


「何に?」


カールは少し俯いて告げた。


「……君が“普通に自由”だから。

俺は子どもの頃から、父上と一緒に牢屋だったんだ。

外に出たことも、友達も……家族も、ほとんど知らない」


ビック

「……兄ちゃん……」(涙)


「だから、君みたいに笑って、走って、文句言えるのが……羨ましい。

もし……妹が来るなら、自由な人がいいと思ってた」


ビック

「なんかその言い方、ずるい! 反則!」


「反則じゃないよ。

君が妹でよかったって、ただの事実」


ビックは照れくさく、

でも誇らしげに胸を張った。


「兄ちゃん……守るから! あたし強いし!」


「……妹に守られる兄って、聞いたことないけど……まぁ、いいか」


二人の距離が一気に縮まった瞬間。



【王女教育がムリすぎて逃亡事件発生】


翌日、王宮の家庭教師たちがビックに殺到する。


家庭教師A

「ビクトリア様、まずカトラリーの持ち方を――」


ビック

「フォークはこうでしょ!(八百屋カスタム握り)」

「てか皿が遠い! 距離感どうなってるのこの部屋!」


家庭教師B

「ビクトリア様、言葉遣いです。

“兄ちゃん”ではなく“カール殿下”を――」


ビック

「カールはカール!! 殿下とか言えるか!」


家庭教師C

「王宮の礼法50項の暗記を――」


ビック

「むりむりむり!! 八百屋にそんな文化なかった!」


三時間後――。


侍女

「あの……ビクトリア様がいません!!」


カテイ

「またかい!!(過去に何度も逃亡歴あり)」


王宮騒然。


カールはすぐに気づいた。


(……ああ、多分“外”だ)


外の空気が恋しくなる子だ。

だから――


カールは城壁の外、小さな市場まで行き、

果物の箱の上で寝転んでいるビックを見つけた。


ビック

「やっぱ外の空気が一番だよ……王宮むり……」


カール

「……ビック、逃げ足速いね」


ビック

「兄ちゃんこそ、なんで分かったの?」


「俺も……“自由”が好きだから。

牢屋に入れられていた頃、

ずっと空を見たかったんだ。

だから君が行きそうな場所、分かる」


ビック

「兄ちゃん……」


カールはビックの頭を軽く撫でた。


「戻ろう。逃げたっていい。

でも……俺の妹でいてほしい」


ビック

「……うん」



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