夏休み明けて
夏休み明け――テスト結果と、りんご本の衝撃
テスト結果発表
夏休みが明けて最初の日。
掲示板に、夏休み前のテスト結果が貼り出された。
1位: ビクトリア・ウィルドン 満点
2位: ランディ・アフィエラ 98点
3位: ハリス・ヴェルナー 96点
4位(同点): マリカ・セレスティア 95点
4位(同点): エドウィン・アルデバイン 95点
ビクトリアは、結果を見て頷いた。
「ふむ。まあ、こんなもんか」
ランディが、悔しそうに呟いた。
「……2点、ミスしました」
ハリスも、肩を落としている。
「俺も、もうちょっと頑張れた」
マリカは、嬉しそうに笑っていた。
「私、エドウィン殿下と同点なんて、光栄です」
一方、エドウィンは――
4位という文字を、じっと見つめていた。
側近が、恐る恐る尋ねる。
「殿下……大丈夫ですか?」
「……ああ」
エドウィンは、静かに答えた。
だが、内心では――
(4位……初めてだ)
彼は、これまで常に1位か2位だった。
4位など、一度も、なかった。
(留学生チーム……本気ということか)
エドウィンは、ビクトリアたちを見つめた。
ビクトリアは、相変わらず何も気にしていない様子で、ランディと何か話している。
(……面白い)
エドウィンは、小さく笑った。
夏休み明けの大騒動
テスト結果が発表された直後――
教室は、別の話題で持ちきりだった。
「見た!? ビクトリア様のケーキ!」
「マリカさんの、りんごのレシピ本!」
「そして――あの、キスシーン!」
令嬢たちが、サロンに集まっていた。
テーブルには、カールから送られてきた宣伝用のチラシが広げられている。
そこには――
りんごを挟んで、キスするビクトリアとランディのボヤッとしたシルエットの写真。
「……これ、本物!?」
「本物よ! 来週発売ですって!」
「予約しなきゃ!」
令嬢たちは、大騒ぎしていた。
セリーヌが、チラシを見つめながら呟いた。
「……美しい」
「でしょう!?」
「私、もう3冊予約したわ」
「3冊!?」
「ええ。1冊は見る用。ページの隅々まで楽しむの」
「もう1冊は?」
「保管用よ。絶対に汚さない」
「じゃあ、3冊目は?」
「布教用」
セリーヌは、真顔で答えた。
「友人に貸して、ランディ様とビクトリア様の素晴らしさを広めるの」
令嬢たちは、頷いた。
「なるほど……!」
「私も、3冊予約しようかしら」
「私は、5冊にしようかしら」
ビクトリアの叫び
その頃、教室では――
ビクトリアが、力なく叫んでいた。
「みんなー! テスト頑張らないとダメですよー!」
だが――
誰も聞いていない。
令嬢たちは、全員がりんご本のチラシを見つめている。
「来週、絶対に買う……!」
「私も……!」
「ランディ様……!」
ビクトリアは、ぐったりと机に突っ伏した。
「……誰も、聞いてない」
ランディが、呆れた顔で言った。
「当然ですかね、りんご本ですからね」
「にいちゃん、やりすぎだよ」
ビクトリアは、力無く呟いた。
マリカが、困惑した顔で言った。
「皆さん、テスト結果は気にならないんでしょうか?」
ハリスが、肩をすくめた。
「気にならないんだろうな」
「でも、学生にとっては一番大事なのに……」
「そうだけど」
ハリスは、ため息をついた。
「りんご本には勝てないんだよ」
エドウィンの反応
エドウィンも、チラシを見ていた。
「……りんごを挟んで、キス」
側近が、尋ねる。
「殿下、いかがですか?」
「面白い」
「面白い、ですか?」
「ああ」
エドウィンは、ビクトリアとランディの写真を見つめた。
「こんな顔、見たことない」
「確かに……」
「それに――」
エドウィンは、少しだけ笑った。
「4位という結果も、面白い」
「殿下……?」
「久しぶりに、本気で勉強しよう」
エドウィンの目には、確かな闘志があった。
翌日のサロン
翌日、サロンでは――
令嬢たちが、予約状況を報告し合っていた。
「私、5冊予約したわ!」
「私は7冊!」
「私は10冊!」
セリーヌが、冷静に言った。
「皆さん、落ち着いてください」
「でも!」
「分かります。でも、冷静に」
セリーヌは、深呼吸をした。
「私は、15冊予約しました」
「15冊!?」
令嬢たちが、驚いた。
「見る用、保管用、布教用、そして――予備です」
「予備……!」
「さすが、セリーヌ様……!」
令嬢たちは、感心した。
ビクトリアの嘆き
その夜、ビクトリアは自室でぐったりしていた。
「……テスト結果、さらっと無視された」
マリカが、紅茶を淹れながら言った。
「学生にとっては、一番大事なのにですね」
「そうなんだよ」
ビクトリアは、ため息をついた。
「でも、みんなりんご本にしか興味ないんだよ」
ランディが、呆れた顔で言った。
「……カール様、すごいですね」
「にいちゃん、商人の才能ありすぎだよ」
ハリスが、笑いながら言った。
「でも、お前ら――満点と2位と俺3位だぞ?」
「そうだけど」
「すごいじゃないか」
「ありがと」
ビクトリアは、少しだけ嬉しそうに笑った。
来週への期待
そして、来週――
りんご本が発売される。
令嬢たちは、すでに予約を済ませ、発売日を心待ちにしている。
ビクトリアとランディは――
恥ずかしさで、顔を真っ赤にしている。
エドウィンは――
次のテストで、1位を取ることを誓った。
結論
テスト結果は――
さらっと無視された。
りんご本は――
大ヒット確定。
ビクトリアは――
嘆いている。
ランディは――
諦めている。
そして、エドウィンは――
本気で勉強し始めた。




