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八百屋王女、なんの冗談ですか?ーー行方不明のパパが国王でした⁉  作者: 夢窓(ゆめまど)


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ビクトリアのお人形

カールは、ビクトリアの人形を作ってはどうかと言った。


ビクトリアを模した、華麗な人形。


だがビクトリアは、人形遊びをしたことがない。


あるものでしか、与えられないから



セクシー大根の思い出


子供の頃、ビックは母ちゃんに言った。

「人形、欲しい」


母ちゃんは、畑仕事の手を止めて、ビックを見た。

「人形?」

「うん」

「……ないな」

「え?」

「うちには、人形なんてない」

母ちゃんは、あっさりと答えた。


ビックは、少しだけ残念そうにしたが――

母ちゃんは、畑に行って大根を引っこ抜いてきた。

「ほら」

「……大根?」

「よく見ろ」


ビックが、大根を見ると――

なんとなく、人の形をしていた。

二股に分かれた根が、まるで足のよう。

「これ、セクシー大根な」

母ちゃんは、木炭で大根に目を書いた。


「ほら、人形のかわりにしな」

「……本当に?」

「ああ」

ビックは、セクシー大根を受け取った。

なんとなく、嬉しかった。


3日後

3日後。

夕飯のテーブルに、大根の煮物が並んでいた。

ビックは、それを見て――

「……あ」

「どうした?」

「これ、セクシー大根?」

「ああ」

母ちゃんは、あっさりと答えた。

「大根は、食べるためにあるんだよ」

「……そっか」

ビックは、少しだけ残念そうにした。


母ちゃんが、付け加えた。

「また、セクシー大根が入ってたら、目を書いてやるから」

「うん」

「泣くな」

「泣いてないよ」

ビックは、セクシー大根の煮物を食べた。

美味しかった。



人形への興味喪失

それから、ビックは人形に興味がなくなった。

どうせ、食べられるなら――

最初から、食べ物でいい。

そう思った。


王宮での誕生日

王宮に来てから、最初の誕生日。

にいちゃんと父ちゃんが、人形をくれた。

「ビック、誕生日おめでとう」

「ありがとう」

ビックは、人形を受け取った。


足は、まっすぐ。

セクシーじゃない。

可愛い服を着ている。

完璧な人形だった。

だが――

なんか、面白くなかった。

「……どうした?」

にいちゃんが、心配そうに尋ねた。

「ううん、なんでもない、ありがとう。」

ビックは、笑顔で答えた。

だが、内心では――

(セクシー大根の方が、面白かったな)

そう思っていた。



与えられないから、幸せ

ビックは、ふと気づいた。

与えられないから、幸せってあるんだ。

セクシー大根は、本物の人形じゃない。

でも、母ちゃんが工夫してくれた。

それが、嬉しかった。

完璧な人形は、最初から完璧。

だから、面白くない。


ランディは、何も欲しくない

ある日、ビックはランディに聞いた。

「ランディ、何か欲しいものある?」

「……特にないですね」

「本当に?」

「ええ」

ランディは、あっさりと答えた。

「物欲、ないの?」

「あまりないです」

「へえ」

ビックは、少しだけ意外そうにした。


にいちゃんも、物欲がない

そういえば、にいちゃんも物欲がない。

牢に入ってた時、何も持ってなかった。

出てきてからも、必要最低限しか持たない。

「にいちゃん、何か欲しいものある?」

「ないな」

「本当に?」

「ああ」

にいちゃんは、あっさりと答えた。


3人とも、物欲がない

ビック、ランディ、にいちゃん。

3人とも、物欲がない。

そして――

食欲も、ない。

「まあ、そうかなぁ」

ビックは、呟いた。

物がなくても、生きていける。

食べ物がなくても、なんとかなる。

そう思って、育ってきた。

だから――

物欲も、食欲も、ない。


マリカの反応

マリカが、驚いた顔で言った。

「殿下、本当に何も欲しくないんですか?」

「うん」

「服も? 宝石も?」

「特に」

「……食べ物も?」

「まあ、焼き芋と玉ねぎスープがあれば」

マリカは、呆れた顔をした。

「……そうですか」


ハリスの反応

ハリスが、笑いながら言った。

「お前ら、欲がなさすぎるんだよ」

「そう?」

「ああ」

「ハリスは、欲があるの?」

「まあ、普通にな」

ハリスは、肩をすくめた。

「美味いもん食いたいし、いい服も着たい」

「へえ」

「普通だろ?」

「そうかな」

ビックは、首を傾げた。


結論

ビックは――

物欲がない。

ランディも――

物欲がない。

にいちゃんも――

物欲がなかったけど、

結婚して、変わった。


だが――

ビックにとって、セクシー大根だけは、特別だった。

それは、与えられないからこそ、幸せだったから。


ビクトリアは、知らなかった

人形の使い方

ビクトリアは、知らなかった。

女の子のお人形は、服を着替えさせたり、おままごとするのに使うものだということを。

王宮に来てから、にいちゃんと父ちゃんにもらった人形。

足はまっすぐで、可愛い服を着ている。

ビックは、それを部屋の棚に飾った。

「……これでいいかな」

それだけだった。


マリカの困惑

ある日、マリカが部屋を掃除していて気づいた。

「殿下……この人形、ずっと同じ場所にありますね」

「うん」

「……遊ばないんですか?」

「遊ぶ?」

ビックは、きょとんとした。

「人形で、どうやって遊ぶの?」

マリカが、目を丸くした。


女の子の友達がいなかった

ビクトリアには、女の子の友達がいなかった。

子供の頃は、母ちゃんと畑仕事。

王宮に来てからは、にいちゃんやランディと一緒。

女の子同士で遊ぶという経験が、ない。

だから――

人形でおままごとをする。


マリカの提案

マリカが、恐る恐る提案した。

「殿下、よろしければ……一緒に遊んでみませんか?」

「え?」

「人形で、お茶会ごっことか」

ビックは、少し考えてから――

「……やってみる」

「本当ですか?」

「うん」

マリカは、嬉しそうに人形を取り出した。


初めてのお茶会ごっこ

マリカが、人形を並べた。

「はい、こうやって……」

「うん」

「人形に、お茶を出すんです」

「……人形に?」

「はい」

ビックは、困惑した顔をした。

「でも、人形は飲まないよね?」

「そうですけど……ごっこですから」

「ごっこ……」

ビックは、ぎこちなく人形にお茶を出した。

「……どうぞ」

マリカが、人形の声で答えた。

「ありがとうございます~」

ビックは、固まった。


セクシー大根との違い

ビックは、ふと思った。

セクシー大根は、面白かった。

なぜなら――

母ちゃんが工夫してくれたから。

一緒に遊んだから。

でも、完璧な人形は――

どう遊んでいいか、分からない。

女の子の友達がいれば、教えてもらえたかもしれない。

でも、いなかった。

だから――

人形に、興味を持てなかった。


マリカの気づき

マリカは、ようやく理解した。

殿下には、女の子の友達がいなかった。

だから、女の子の遊びを知らない。

人形遊びも、おままごとも、お茶会ごっこも――

全部、知らない。

マリカは、少しだけ悲しくなった。

でも、同時に――

だから、殿下は特別なんだ。

そう思った。

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