夢の末
「遂に、遂に完成したぞ!」
一人の青年が、歓喜に満ちた声を響かせる。
彼の名前は青木 健。
最先端のテクノロジーに精通しており、まだ20歳であるにも拘らず、学会の権威から一目置かれている。
そして彼は、その明晰な頭脳を最大限に活かし、漸く一つの装置を作り上げた。
それこそが、「クロノス」である。
外見は巨大な金属製の箱といったところだが、人類初の画期的な性能を有している。
過去、未来のあらゆる場所へ一瞬にして移動する事も、世界の時間を完全に止める事も、これさえあれば可能となる。
「それじゃあ、早速テストを始めるぞ…」
興奮冷めやらぬ様子でクロノスの内部に入り、複雑な構造の機械に手を触れる。
そして健がスイッチを押した次の瞬間、クロノスが眩い光に包まれた。
彼が扉を開け、外の世界に飛び出すと…
ギャォォォン!!
耳を裂く咆哮を轟かせる、獰猛な恐竜の姿が遠方に。
「やった… 夢が叶ったんだ… 本当に、本当に良かった…」
健は頬を濡らしながら、感慨に浸っている。
「よし、他のも試さないとだな。」
再びクロノスを起動させて、現代に戻った。
その後、先程の時間転移で装置が欠損していないか等、念入りに確かめた。
一通り点検が終わると、彼は再び目を輝かせてクロノスに入った。
「さあ、いくぞ!」
スイッチが押された次の瞬間、世界は静寂に包まれた。
太陽は昇る事も沈む事も知らず、ただ一点に留まっている。
鳥の群れは羽を微塵とも動かさずに、青く澄んだ空に佇んでいる。
そして健の瞳は輝きを放ったまま、自らの集大成を満足そうに見つめている。
それ以降、時計の針が音を立てる瞬間は、永遠に訪れなかったという。




