第9話 ヒーローとしての有り方
「ニトロゲンをお前なんかのために作らなければよかった!」
「…」
「黙ってないでなにか言ったらどうだ!」
「……俺、ユヌやめるわ
ヒーローなんて…俺には向いてない」
その瞬間、場が静まり返った。困惑、唖然、連帯感、皆にさまざまな感情が生まれてきた。
「俺に、ユヌを名乗る資格は無い」
「おい、何もそこまでしニャくたって…」
「いや、あれでいいんだ。猫」
「あいつにユヌは向いていない」
ひび割れた地面には、彼らとユヌの変身アイテムがあった。
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謎の男とシマエナガが会話をしている。男が言った。
「やあ、『フィーバット•デンスル』。今日はどんな用だ?」
「頼みたいことがあって来たんだ。」
「実はだな…」
その話を、陰でこっそり聞いている猫。
「デンスル…
あいつ、俺達を騙してたのかニャ…」
フィーバットが話を終え、出てきたところで猫が言った。
「デンスルってどういうことニャ!」
「聞いていたのか…なら話は早い」
フィーバットは猫を持って、人気のない路地裏に出た。
「俺はエレメト集団の幹部、『フィーバット•デンスル』だ」
「お前…エレメト集団だったのか…」
「あれー?言ってなかったっけー?」
「ふざけるニャ!
今の素科がそのことを知ったら…」
「どうなっちゃうんだろうねー?」
フィーバットは分かっている様子で言った。
「さてと、俺はやるべき事があるんだ。
どいてもらえるかな?」
「どくわけないニャ!俺がお前を止めるニャ!」
「へぇ…」
フィーバットは新しいビンとマシンガンを出した。
「変、身」
マ、マ、マ、マグナム!エレメント!
A!G!シルバー!
マシンガンから撃った弾がフィーバットに次々と吸い込まれていき、それがやがてスーツとなった。
「さあーて、俺に勝てるかなー?」
「せめて、素科の精神が回復するまで時間を稼ぐ!」
マシンガン!AG!
「猫は素早いのニャ!
それぐらいの攻撃は、余裕で…」
ススススラッシュ!マグナム!
フィーバットの持っていたマシンガンが、一瞬で剣になった。
「ニャ⁉︎」
「君には遠距離武器は無い。近づいてきたら…邪魔なお前を切り裂く」
「どうすればいいニャ…」
その時、空からファンが降ってきた。
「はーい!ワタクシ参上!」
「頼もしいような…そうでもないような…」
「ワタクシには遠距離武器である、銃がある。これでお前なんか瞬殺だあー!」
「ほう…少しはやるようだな…」
ファンが銃を連射した。だが…
「壁」
フィーバットがそういうと、銀色の壁がすぐに作られ、防がれた。
「え?」
「マジかニャ…」
「じゃあ、俺の番かな?」
さっき壁に当たった銃弾がすぐに逆方向を向いて、飛んできた。
「あっつ!眩しいニャー!」
「これが銀の『反射』の力か…いいね」
「ワタクシの弾、どこに撃ったらいいのー!?」
「あいつは元々分からないんじゃねえのか?」
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「俺は…被害を出しすぎた…
みんなが頑張って作ってくれたのに…」
寝室でブツブツ言っている素科を店長さんは心配そうに見ている。
「素科さん…
今素科さんを励ますことができるのは…私だけ…」
「ね、ねぇ…」
「うん…?」
「君がやったことも…確かにダメなことだけど…
あの人もちょっと言い過ぎてたんじゃないのかな?」
「そんなことない…
俺は…とんでもないことをした…
許されない事だ…」
少し沈黙が続いて、店長さんが口を開けた。
「………私は君のやったことは正解だと思ってる」
「でも…」
「世の中は何も…結果が全てじゃないんだよ。」
「…」
「私は君がやりたかった事、よくわかる。
その、『やろうとした』事が…大事なんじゃないかなって…」
「それに、まだユヌが使えなくなったわけじゃないし…」
「私…ユヌの君、かっこよくて好きだよ」
「かっこいい…」
「まだ、君にはチャンスがある。だから…もう一度、やってみない?
『ユヌ』」
素科は少し考えてから立ち上がった。
「まあ…それもいいよな…」
「てことは!」
「ありがとう。
ヒーローとして、ユヌとしての俺のやり方が分かった気がする…」