第18話 防衛機能
「冬野さん!
ここはあぶない!から…?
あれ、なんで俺…」
「冬野さんって…なんで素科さんが…?」
「なんでだ…?
俺は…初めて会ったはずなのに…」
なにかがおかしい。会ったはずのない相手の名前を普通、一発で当てられるはずはない。と、なれば答えはただ一つ。
「俺達は…前に会ったことがある…?」
「いいねー。面白い事になってきた」
「ひとまず、逃げましょう!」
「あ、ああ!」
「そうはさせるか」
ホログラムはビンと鎌を持ち、鎌の先端にビンを挿れた。
「変身…」
バーチクチク!バーチクチク!
セレン!セレン!セレンホログラム!Se!
鎌から煙が出てきた。
それがたちまちホログラムに覆い被さり、スーツが作られた。
「バーフィルのためだ。悪く思うな」
「バーフィル…?」
summon smoke!
「やれ」
「変身!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴールデン!
ギラギラ輝くゴールデン!
全てがギラギラゴールデン!
ゴ ゴ ゴ ゴールデン!黄金のAu(英雄)
「前勝ったものねぇ…」
煙は素科の周りをグルグル回っている。だが、素科はすぐに煙を捉えた。
「ここだ!」
エレメント!ヒッサツ!
ゴールド!
「ゴールドスマッシュ!」
煙は粉々になって、消えていった。
「煙を一発で…」
「次はお前だ!」
エレメント!ヒッサツ!
ゴールド!
「はああぁぁぁ………」
「遅い」
ホログラムはハンマー投げのように、素科を手だけ持って、遠くに放り投げた。
「ぐはあぁぁ………」
「素科さん!」
「くそ…前よりも強くなってやがる…」
「これなら”あのビン”を使う必要もないな」
「あのビン…?」
ア•ア•ア•アイアーン!
エレメント!ビッグアイアンチェンジ!
アイアンユヌ!FE!
「攻撃には防御だ!」
素科が鋼鉄の壁を何重も出した。いくらホログラムでも、この量を壊すには時間がかかる。それを勘付いたのか、ホログラムは壁越しで言った。
「素科。良いことを教えてやろう。
“忘れる”っていうのは人間の脳の防衛機能なんだ」
「だからなんだ!」
ホログラムが変身を解除した。
「お前がその女のことを忘れてるっていうことは、その女に対する忘れたい”なにか”が、あったんじゃないのか?」
「忘れたいなにか…?」
「こっちに来たら教えてやろう」
「…」
素科はしばらく考え込んだあと、変身を解除して、鉄の壁を消した。
「それでいい」
「それで…どういう意味なんだ…」
素科が歩きながら言った。
「素科さん…危ないですよ…」
「大丈夫だ。やつは変身していなから、致命傷になるようなことはない」
「でも…」
「お前が冬野を忘れていたのは…
『こいつが冬野冬香だからだ』
」
冬野は少し悲しげな表情をしている。