アデラ、無事婚約しました。
二つ年上のノイワット様のは、人との違いについてとことん違いを突き詰めていくスタイルでした。
良いか悪いかは、基本ネルロ様に確認しているようでした。
そして、良いとも悪いとも言わない私をそばに置いて自由に振る舞う事を覚えたようです。
ノイワット様の行いは、それはそれは自由でした。
庭を燃やしてしまったり、カーテンを細切れにしたり、
制止した護衛を骨折させてみたり。
私はといえば、ノイワット様の近くにいれば私自身のオカシナところが目立たなくなるので安心して隣におりました。ノイワット様の居ないお茶会では、度々よく分からないことに悩まされます。
ですのでノイワット様のご家族が笑顔でいられるよう微力ながらアシストもいといません。
そのためには僭越ながら意見することもしてまいりました。
お屋敷で火のスクロールを使う気配があった日は、それとなく庭が枯れ木が燃えたら作業の手間が無くなりますね、とお伝えしました。
とても威力がありましたので、枯れ木どころか生木も根こそぎ消し炭になりました。
屋敷が燃えなくて良かったです。
切れ味の良いレイピアを手に入れたときは丁度紅茶をサーブしていた侍女で試し切りしそうでしたので、
ケーキだけとか、カーテンだけ切れたら上級者ですね、とお伝えしました。
俄然やる気になったのは良いですが、壁と近くにあった花瓶も犠牲になりましたので、ご自身は”下手”ということに気がつかれたようです。
八つ当たりに、絨毯をずたずたにしていました。
人を細切れにしたりせずに良かったです。
街にお出かけした日は、市でお店の人がこどもを捕まえ引きずり倒して怒鳴り散らしていました。
おそらくこどもが何かくすねようとしたのですね。
ノイワット様が前触れも無く術を練り上げ衝撃波を出そうとしました。
その時の護衛が直前で身体を張ってノイワット様の術を妨害しました。
そのまま展開されたら、護衛の腕だけではすまなかったと思います。
展開前での妨害ですら護衛の左腕はボキボキのへろへろでした。
後遺症は残りましたが、切断はしなかったようです。
おそらくそこら一帯えぐれ、何人か死傷し、私と護衛も少なからず負傷したでしょう。
ノイワット様に後々聞くと、店主を倒し、こどもを解放しようとしていたようです。
人のためにご自身の力を使おう、役立てようとする積極的姿勢に感服です。
オカシイですね。私や護衛で皆様の笑顔を守ったはずですが、
お家の方は、怒ったり嘆いたりがっくりしています。
街での功労者は護衛。彼がケガを厭わず守ったのに。
おそらく人がキズ付いたら、いけないのです。
ケチョンケチョンになった護衛の腕は、お家の方は沈痛な面差しにしました。
そうすると、庭やカーテンで済んだときは感謝または労いの言葉が妥当だと、そんな言葉をもらえるものと思うのですが、、、そういったお言葉はありませんでしたね。
だから違ったかもしれません。学んできたことが正しいとも限りません。
まぁ、ノイワット様のワクワク生き生きした笑顔を見ることができましたので良いこととしましょう。
正直申しますと、私はノイワット様を通して他人の反応を学習しておりました。
簡単な法則としては、壊すに類する行動は皆様の利益を損なうから厭われるようです。
理論立てて考えても不可解なのは、様々あります。
笑顔なのに実はケンカしていたり。
いいよ、と言っていたのに本当はダメだったり、その逆もあったり。
言われていないのにやっておかなくてはならない事があったり。
勿論、言われずともやっちゃダメなことは沢山!
根気よく、統計的に判断します。
みな様いつの間に分かるようになったの?
なんで分かるの?
ノイワット様の隣は居心地が良いです。
やって欲しいことは口にしてくださいます。
話し合って決めることもできます。
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テーブルに庭の昆虫の死骸を並べるのに飽きた頃、
迷い込んだ猫が同じようになるのは、もはや自然な流れでした。
お辛そうなネルローディアス様に何度目とも分からない注意を受けて、
それ以降は鳴き声の少ないハ虫類を購入して、研究されるようになりました。
そして年経ごとにノイワット様も私と行動を共にすることが増えました。
ちょっとした助手ですね。
私は、臭いがひどくなければたいてい大丈夫です。
今まで培った『基準』に鑑み、ノイワット様にご意見申し上げる立場でもあります。
ノイワット様のお部屋は薄暗く、昆虫の標本に始まり、ハ虫類の剥製やらホルマリン漬け、結晶標本が所狭しと並べられております。
ご家族には忌避されている様ですが、私は勲章のように誇らしく思います。
昆虫の標本は、私たちとの身体の構造が違うことをわかりやすく伝えるために始めたこと。
それにいちいち解体していると手間もかかるし、ネルローディアス様を筆頭にたしなめられるからですね。
同じ理由で、魔力なしの剥製制作や標本保存の方法を確立しました。
こちらは広く知らしめ、様々な分野で重宝されております。
また、普段と様子の違うカエルの発見からその土地の汚染にいち早く気がつき対応されました。
沢山のカエルたちを解体したおかげですね!
ノイワット様は、研究者気質なのです。
とことん突き詰めて行かれるスタイルです。
様々な術式の機構を開発されたりなさいました。
ご自身の火力もさることながら国防に関する武器などの開発もあり、今や注目の方です。
キャロ、どこ?