焼け跡からの旅立ち
焼け焦げた村を見渡すアルファ。黒い煙がまだわずかに立ち上り、焦げ臭い匂いが鼻をつく。昨日の悪夢のような光景が、現実だったことを改めて突きつける。アルファは強く拳を握り締め、地に膝をついてしばらく動けなかった家族や友人たちのいた場所を静かに見つめていた。
やがて、ゆっくりと立ち上がり、傍らに立てかけた無傷の剣、ダインスレイフを手に取る。ひんやりとした金属の感触が、わずかに彼の心を落ち着かせる。
「……行こうか、ダイン。」
心の中で呼びかけると、まるで応えるかのように、脳内に声が響く。
『あぁ、お前の気が済むまで付き合ってやるさ。だが、その顔はまだ曇ったままだな。本当に、もう大丈夫なのか?』
「大丈夫、というわけじゃない。でも、止まっているわけにはいかないんだ。こんな力じゃ、いつまで経ってもアジダハーカには届かない。それに……」
アルファは言葉を詰まらせ、再び焼け落ちた村を見渡す。
「……皆が、ただ無駄に死んでいったわけじゃないってことを、俺が証明しないといけないんだ。」
遠くの山々を見つめるその瞳には、悲しみと共に、確固たる決意が宿っていた。
「まずは、俺たちが強くなる場所を探す。どこか、腕利きの剣士や魔法使いがいるような場所はないか、ダイン?」
『さあな。俺が知っているのは、血なまぐさい戦場と、それを望む愚かな人間たちのことくらいだ。だが、まあ、この世界のどこかに、お前が求めるような場所もあるだろうよ。勘を頼りに行くしかないな。』
アルファは背を向け、焼け跡に別れを告げるように一歩を踏み出す。その足取りはまだ重いけれど、その目は未来を見据えている。