プレゼント
8話
冒険者ギルドにゴブリンの素材を持ち込もうとしたら、その数なら直接、錬金術ギルドに持っていって欲しいと言われた。
俺は、いったん疲れたので、宿に戻る。
浄化をしてから、宿に入るのを忘れずに…。
帰って来ると、席について、ぐだっとする。
『精神力もかなり疲弊してますから、私はいったん眠っておきます。』
了解…。
「大将。朝飯とお酒ちょうだい…。」
「おうよ。心配いらなかったみたいだな。」
「いや、かなりきつかった。」
「そうかい。」
ポテトサラダに、ベーコンに、少しいい赤ワインに、薬草パンだった。
「大将!相変わらず、美味いぜ!」
「なんだ、お前。酔っ払ってんのか。鍵かけ忘れないで、しっかり寝ろよ。」
給仕の少女が心配そうにこっちを見ていた。
俺は、酔い心地のまま、しっかり歩いて、部屋に向かった。
鍵をかけて寝る。
布団が気持ちいい。
起きたのは、夕方だった。
「やばい。錬金術ギルドに行かないと…。」
ギリギリセーフみたいだ。
しばらくして、番号札で呼ばれる。
「ゴブリン79体ですね。解体済みで間違いありませんか?」
「はい。」
「では、奥へどうぞ。」
大きい机のある部屋に案内される。
「まず、骨と魔石をお願いします。」
出す。
お姉さんが異空間収納で、回収する。
「次に肉をお願いします。」
出す。
お姉さんが異空間収納で、回収する。
「次は臓器ですね。血抜きして、乾燥させて出せますか?」
「大丈夫だと思います。」
出す。
お姉さんが異空間収納で、回収する。
「最後血液は、これらの瓶の中に小分けして入れて下さい。」
栓のついた瓶だ。
1度、瓶を全て異空間収納に回収して血液を入れて出す。
お姉さんが異空間収納で、回収する。
「では、買い取りは小金貨24枚でいかがですか?」
「それで十分です。」
かなり稼いでしまったようだ。
お金は、振り込んでおいてくれるそうなので、23枚は振込で、1枚は手元に残した。
錬金術ギルドを後にして、低級魔力ポーションを買う。
今日も、夜のゴブリン退治だ。
宿に戻る。
食事。
胃にしっかり詰め込む。
はあ、思ったより、精神的にきているのかもしれない。
ワイルドボアのステーキ。
西門を抜けて、湖を目指す。
やりたくない…。
あんまり、血生臭いのは嫌いなんだよなあ。
『頑張ってください。』
…気合を入れて朝まで頑張った。
ゴブリン69体。
レベルは3上がった。
もういい。
もう、ゴブリンは見たくない。
それから、ふらふらと錬金術ギルドへ行き、解体したゴブリンを売って、小金貨21枚もらい、宿に帰った。
食事をもらう。
サラダとソーセージと薬草パンとビール。
ビールが効いた。
俺は、部屋にたどり着くと寝た。
起きた時には、すでに夜だった。
浄化してから、食堂へ降りる。
ご飯を食べて、部屋に戻った。
そう言えば、給仕の少女にアクセサリー作ってあげるって言ってたっけ。
そんなことを思い出す。
スキルポイントは残り4。
錬金術基礎(錬金術の感覚理解)LV1。
錬金術低級(アイテム作成)LV1。
金属加工LV1。
魔法付与LV1。
せっかくだから、いいのを作ってあげよう。
朝、朝食をもらう。
「おう、マシな表情になったな。」
「ちょっと、疲れちゃってたみたいだ。」
「宿泊の延長はどうする?」
「一旦いいや。」
「なんだ、遠出するのか?」
「廃坑が3日くらい歩いたところにあるって聞いた。」
「あそこか。あそこは、不人気なんだよな。埃っぽいし、暗いし、危険だし。」
「まあ、なんとかやってみるよ。」
「そうか。…帰ってきたら、また、顔、出せよ。」
「わかった。」
俺は、給仕の少女へのプレゼントのアクセサリーを作るため、材料を買いに行く。
銀に、スライム魔石、少量のミスリルでいい。
材料は全部で銀貨3枚ほど。
あまり高すぎて、重くとられても申し訳ないので、これくらいでいいだろう。
異空間収納に材料を確認。
管制人格さんに細かい調整をしてもらい、花のヘアピンを作る。
まずは、魔石と銀とミスリルを溶かして、形を変える。
魔法付与で、浄化の魔法をのせておく。
魔法付与LV1 では、元の魔法の10分の1ほどしか、再現できないらしい。
俺の浄化はLV3 なので、LV0.3くらいの浄化が付与される。
まあ、お守りくらいにはなるだろう。
午後になり、食堂に降りていく。
給仕の少女が、こっちの様子を伺うようにちらちら見ている。
多分、しばらく、街を離れることを聞いたのだろう。
俺は軽く手を振り、少女に近づく。
なんか、ドキドキするな。
異空間収納から、さっき作った花のヘアピンを渡す。
「これ、プレゼント。作ったやつ。一応、少しの浄化の魔法が付与されてるから。」
「…ありがとう。」
少女は、受け取ってくれた。
そして、店の奥に行ってつけてきて、髪を整えて見せてくれた。
「…似合う?」
「いい感じ!」
「おい、人の娘を親の前で口説いてんじゃねーよ。」
大将は呆れたように言った。
俺と少女は気まずげにそれぞれ、その場を後にした。
その日の夕飯が少し辛口だったのは気のせいだろう。