第257話 西からくる嵐
『 オーマ=ヴィオレット
@Ohma_Violette
新装備の発注が完了しました!
少し複雑な装備と言う事で、完成は二週間後を予定との事です!
なので魔都の本格的な攻略開始もそのくらい先になりますが、
その前に一つお知らせがあります!』
『 オーマ=ヴィオレット
@Ohma_Violette
深層魔都の攻略における協力者の募集内容を一部変更します!
募集条件は『深層に来れるだけの実力があること』のみとし、
悪魔と戦えるかどうかの『実力検査』を、
来週以降の私の配信で行います!』
『 オーマ=ヴィオレット
@Ohma_Violette
『実力検査』の場所は深層の入り口!
下層の山頂にある境界から真っ直ぐ降りた底の大部屋で、
私と互いに非殺傷の訓練武器で試合形式の組手を行い判断します!
詳しい日程は以下↓の画像で!』
『 オーマ=ヴィオレット
@Ohma_Violette
以前配信でクリムさんとやったように、攻撃スキルの使用はお互いに禁止。
エア・レイドやマジックステップのような、動きの補助を行う物は有りとします。
当日は各自、得意な武器に対応した訓練用の武器を用意してご参加ください!
どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします!』
『 オーマ=ヴィオレット
@Ohma_Violette
質問があったので追記です!
魔法使い系のジョブの方は攻撃魔法も可とします!
ただ、その場合私も魔法の相殺の為に限り、魔法を使用するのでご了承ください!
使用する杖などの魔法媒体は安全の為にも訓練用の物でお願いします!』
オーマ=ヴィオレットが立て続けに投稿したSNSの内容に、ダイバー界隈はまた新たな盛り上がりを見せた。
下層で見かけなくなったチヨの代わりに、オーマ=ヴィオレットが直々に相手をして実力を測るというのだ。
『あくまでも試合形式』『訓練用の武器』『攻撃スキルの禁止』等、いくつも条件が明記されており、命を危険に晒さないという彼女の気づかいが窺える。
元々ダイバー達の中には自分の力が何処までオーマ=ヴィオレットに通用するかを試してみたいと考えている者も潜在的にそこそこ多く、当日までまだ一週間あるにも関わらず早速訓練用の武器を買った事を画像付きで報告する投稿もぽつぽつと現れるくらいの賑わいを見せていた。
◇
316:名無しのダイバー ID:7prpUWSgV
新装備無事に発注できたか!
317:名無しのダイバー ID:HC5AGYP2/
L.E.O.だよな?なら安心
320:名無しのダイバー ID:hihdXTmCm
>>317
新装備L.E.O.製ってどこ情報?
326:名無しのダイバー ID:mAOsM/NI6
>>320
迷惑系が発注の日にヴィオレット凸ってたからそこから情報が割れた
その時にヴィオレットが居た場所が渋谷のL.E.O.
329:名無しのダイバー ID:2pffVev3J
>>326
大丈夫だったの!?
333:名無しのダイバー ID:mAOsM/NI6
>>329
迷惑系(男)がソーマに告白してフラれたのバラされて逆にダメージ受けてたよw
335:名無しのダイバー ID:hihdXTmCm
>>333
?????????????wwwww???????????www
339:名無しのダイバー ID:EUJHQWXFY
草
そう言う反応にもなるわなw
347:名無しのダイバー ID:dYAqpP1vX
>>335
滅茶苦茶切り抜き拡散されてるから見て来いw
今『腐』の界隈で熱いらしいぞアイツwww
352:名無しのダイバー ID:DC6fOAnmD
ダイバーって基本顔良いからなぁ…ナマモノだろうと構わずコンテンツにするぞあそこは…
356:名無しのダイバー ID:dYAqpP1vX
巻き込まれたソーマはかわいそうだけどなw
358:名無しのダイバー ID:QSLDwpnhW
あの迷惑系人気者にはなれたな……w
391:名無しのダイバー ID:DC6fOAnmD
あっち界隈の盛り上がりは別に良いとして、ヴィオレットちゃんの実力検査お前ら行くの?
392:名無しのダイバー ID:OhHAwrpwS
>>391
無理。条件そもそも満たせねぇ
396:名無しのダイバー ID:e3W84v2jZ
>>391
SNSでちらほら行くって宣言してる奴出て来てるけどやっぱほとんど有名クランじゃん
俺らとは世界違うわ
401:名無しのダイバー ID:9YiMrSNyK
>>396
下層潜る時に大体この辺りのクランに入れて貰って助けて貰うからな
402:名無しのダイバー ID:OCIl+x1T1
>>396
成長諦めるとダイバーはマジで成長止まるから気をつけろ
406:名無しのダイバー ID:k626haQm0
>>402
これ。
前のヴィオレットの配信で一番衝撃受けたわ
407:名無しのダイバー ID:OhHAwrpwS
信憑性どんなもんなんだろな…誰か検証した?
410:名無しのダイバー ID:l0E/LpeQP
検証の方法無くね?
まだ眉唾なとこあるわ
422:名無しのダイバー ID:Wi8CcbZUw
>>410
過去のダイバーの引退前とか見るとちょっとわかるかも
確かに現状に満足してたり投げやりになった辺りから成長落ちてる気がする
425:名無しのダイバー ID:e3W84v2jZ
>>422
満足はともかく投げやりは逆じゃないのか
成長落ちて来たから投げやりになるんだろ
427:名無しのダイバー ID:OCIl+x1T1
>>425
一理ある
430:名無しのダイバー ID:9YiMrSNyK
まぁモチベ維持はどっちにしろ大事って事だ
俺も深層行くだけなら行けると思うし検査受けるだけ受けてみようかな
431:名無しのダイバー ID:ybpsmSX9P
>>396
魔都発見組はほぼ皆参加するらしいね『実力検査』
438:名無しのダイバー ID:cQPRNLsOq
春葉アトとか顔パスで良いだろうにw
クリムもそうしたんだし
443:名無しのダイバー ID:k626haQm0
>>438
クリムも参加するらしいぞ
ヴィオレットと組手したいとか
447:名無しのダイバー ID:cQPRNLsOq
>>443
えぇ…クリムああ見えて結構バトルジャンキーか?
448:名無しのダイバー ID:lRbPko3u0
一応募集の条件自体が変わってる訳だから参加した方が色々と丸くはあるな
451:名無しのダイバー ID:3ucqyOysR
>>447
ああ見えても何も元々戦闘競技出身だぞあの子
ダイバーになる前から幾つも大会で優勝してるし
456:名無しのダイバー ID:ZRjZk1BXK
本人はヴィオレットさんに会いたい!とかしか考えてなさそうw
459:名無しのダイバー ID:OhHAwrpwS
>>456
ありえるw
463:名無しのダイバー ID:rolb+i+ab
日程の画像見たけどヴィオレットちゃん側の負担エグない?毎日じゃん
467:名無しのダイバー ID:s/9OTwYxq
魔族が人間よりタフだとしても春葉アトとクリム含んだダイバーとの連戦だと流石に心配だな
470:名無しのダイバー ID:fYpS7qx/L
流石に途中で休憩とかは挟むでしょ
そもそも参加条件満たせるダイバーもそこまで多い訳じゃないんだし
472:名無しのダイバー ID:w7Lk0kIdR
Katsu-首領-も参加表明出したな
484:名無しのダイバー ID:RyAMEDOgH
>>472
追加情報として補足すると、飯テロからも数人出るらしい
485:名無しのダイバー ID:qn/THnmVU
SNS見たら猛虎が本格的に渋谷ダンジョン潜るって言ってるぞ!
497:名無しのダイバー ID:w7Lk0kIdR
>>485
ティガーが招集かけたんかな?
とは言え魔都の攻略に連れてけるほど強い奴はそこまで居なかったと思うが
505:名無しのダイバー ID:rolb+i+ab
あー猛虎ってティガーが本来率いてるクランだっけ
って事はティガー今クランほっぽり出して出稼ぎに来てるみたいな状況だったのか?
511:名無しのダイバー ID:u2n5YE+7+
>>505
百華も来るらしい
こっちは魅國のクランだし…また変な競争心燃やしたか?
514:名無しのダイバー ID:Wi8CcbZUw
猛虎と百華かぁ…前はバチバチだったよな
517:名無しのダイバー ID:BWtynHu8Y
>>514
今は大分落ち着いたぞ
520:名無しのダイバー ID:y1VWD2EON
>>517
落ち着いたって言うかあれはもう冷え切ったって言うんじゃ…
523:名無しのダイバー ID:s/9OTwYxq
喧嘩とかしなきゃ良いけど
525:名無しのダイバー ID:OhHAwrpwS
調べたけど百華もそこまで強い感じでもないな
魅國が一人特筆して強いだけで
528:名無しのダイバー ID:Wi8CcbZUw
>>525
そこは猛虎も一緒っていうか…虎華呼居がそう言うクランだったからな
531:名無しのダイバー ID:XsaRE1V6U
ティガーと魅國が立ち上げて、その二人の活躍で規模を拡大したクランだからまぁ…
あえて悪い言い方するとほぼ腰巾着よな
537:名無しのダイバー ID:lzk06Q9xy
猛虎と百華が落ち着いたってのも旗頭のティガーと魅國が地元離れて渋谷に来てたからだったりして…
546:名無しのダイバー ID:w7Lk0kIdR
>>537
あー…それでか
じゃあ今後渋谷ダンジョンうるさくなるのか…
549:名無しのダイバー ID:s/9OTwYxq
大丈夫なのか?魔都攻略の邪魔にしかならなそう…
555:名無しのダイバー ID:XsaRE1V6U
>>549
そこは問題ない
アイツらじゃ深層には行けない
563:名無しのダイバー ID:Wi8CcbZUw
猛虎も百華もな…結局クランリーダー以外は見栄っ張りの集まりって言うか
対ゴブリンの戦争の時あのクランだけリーダー以外呼ばれなかったってのがもうね
568:名無しのダイバー ID:mkIVfHE01
そんなクランがこんな時期にわざわざ渋谷ダンジョンに来るとなると偶然じゃないよな…
◇
「──なるほどなぁ。チヨがそう言うとったんか」
「ああ、春葉アトから聞いた限りやとな。……もう渋谷ダンジョンのアレは東京だけの問題やないっちゅうこっちゃ」
時刻は午後九時を回った頃。
東京某所のホテルにて長期宿泊中のティガーは、高層フロアならではの夜景を見下ろしながら部屋に呼んだ一人の女性と会話していた。
女性もまた同じホテルの別の部屋に長期滞在するダイバーであり、必然的に会話の内容はダンジョンに関係する物になる。
そして、今しがたティガーが話していたのは先日ファミレスで春葉アトから聞かされた内容だ。
春葉アトからはこの内容を伝える場合、可能な限り対面で話す事。そして、信頼できる少数に情報を絞る事を厳命されており、その事からもティガーはこの女性を信頼している事が窺えた。
「……それで? わざわざウチを呼んだんや。それ伝えるだけが目的とちゃうやろ? 本題はなんや?」
女性の問いかけに一度振り向いたティガー。
しかし彼女は視線を再び夜景へと逸らし、緊張を滲ませた声で打ち明けた。
「──ウチは今後の戦いで、『アレ』を解禁するつもりや」
「っ! ……やっぱり、そう言う話やったか。アンタ、それがどういう意味か分かっとるんか?」
「あぁ、全部覚悟の上や。……実を言うとなぁ、あの時──悪魔共に追い詰められた時にも、一度はクリム助ける為に使おう思たんや」
ティガーの告白に、女性が僅かに息を飲む。
事情を知る数少ない彼女にとって、ティガーの打ち明けた内容はそれだけで彼女の決意の深さを理解するのには十分だった。
「まぁ、あん時はええタイミングで春葉アト達が来てくれたおかげで、使わずに済んだけど……もう、手段を選べんとこまで来てもうたみたいや」
「……」
春葉アトから聞いた内容が彼女にこの決断をさせたのだろう。
『手段を選べない』……ティガーにとって、それは大きなリスクを伴う選択を強いる事に等しい。
真剣な目で女性に向きあったティガーを見る彼女の目は、ティガーを見定めるように真っ直ぐ彼女の目を見ていた。
「……お前に頼むんが間違っとるんは承知の上で言うわ。もう一度だけ、ウチの背中任せたいんや──魅國」
そう言って頭を下げたティガー。
女性は──魅國は回想する。一度は袂を別った目の前の相手と、背を預け合っていた日々を。
その背に自らの命を預けた最後の戦いを。
「──"コカコイ"か……本気なんやね」
それは彼女達にとってあまりにも多くの意味を持つ言葉だ。
嘗ての同盟の名であり、決別の切っ掛けでもあり、命を預けた物の名でもある。
「ええんか? 今度こそ、死ぬかもしれへんねんで? 今のウチはあの日とは比べもんにならんほど強ぉなっとる。しかも、チヨに鉄扇も強化してもろた。……もう、火力は加減できひんよ?」
「あぁ……手綱を任せられるんは、お前だけや」
「──ええわ。アンタみたいなじゃじゃ馬、ウチ以外には扱えん。乗ったるわ」
「! おおきに……!」
魅國の言葉に、もう一度頭を下げて感謝を伝えるティガー。
「……ウチもアンタに、見て貰わんとあかんモンもあるしな……」
「? 今なんか言うたか?」
ティガーにも見せていない──いや、事ここに至るまでついに見せる機会が無かった『秘密』。
当の魅國ですら本当の意味を理解していない、彼女自身の『謎』。
……しかし、魅國はそれを伝えるのはまた今度で良いと判断し、頭を振った。
「いや、それについてはまた今度話すわ……──そう言えばSNSで見たんやけど、猛虎の連中がこっち来るそうやないの。何でわざわざ呼んだんや? ウチが言うんもお門違いやけど、戦力にはならんやろ?」
「はぁ……アイツらか。今回の一件に関しては、ウチは知らん。大方、お前が呼んだ百華に感化されただけやろ。……まぁ、こっちはこっちで手綱握るわ」
部下の勝手な行動に呆れつつ、しかし長い事クランを放っていた手前、彼女達の行動を今更咎める事も出来ない。
程よくガス抜きさせながら暫く渋谷の下層でも潜らせれば、直ぐに音を上げて大阪に帰るだろう。そう考えての発言だったが──
「……なんやて? ウチは百華呼んでへんよ? ウチかてあの面子で深層潜れんことくらい、分かっとる。アンタが猛虎呼んだから、あのアホ共が息巻いてやって来る言い出したんやないんか?」
「……」
「……」
互いに予想もしていなかった言葉を聞いたティガーと魅國。
ホテルの一室に気まずい沈黙が漂い──やがて二人の深いため息が重なった。
「……なんや、嫌な予感して来たなぁ……」
「奇遇やねぇ……ウチもや。あまりこっちの顔に泥塗らんで欲しいんやけどなぁ……」
西の方から近付いて来る嵐の気配に、夏の夜にそぐわぬ寒気を感じた二人だった。




