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第254話 配信の最後に

投稿遅れてすみません!

今回で長くなってしまった雑談配信も終了です!

 ヴィオレットが質疑応答に入ると伝えた途端、コメント欄には無数の質問が押し寄せた。


〔ずっと人間を騙してきた感想は?w〕

〔新装備はどんなの予定してる?〕

〔アニメのキャラには変身できますか!?〕

〔今どこにいるの?凸りたいから教えてwww〕

〔魔法って自分で作れるの?〕


 中には当然のように悪意ある質問も混ざっていたが、それらのみをスルーしてヴィオレットは一つずつ丁寧に答えていく。


「新装備も出来ればドレスアーマーにしようと思ってます。これを機にWD製にするのも良いですね……注文を受けてくれればですが」


「アニメキャラへの変身についてですが、時間をかければ出来るかも……としか言えませんね。というのも、変身魔法で別人になるのは実は結構難しいんです。元々の顔立ちが似ていればそこまででもないんですが、全く別の顔になろうとすると相応の練習が必要になります。およそ……そうですね、練習に数十年くらいはかかります。なので私に変身魔法を教わっても、直ぐに自由な姿になれる訳じゃない事は明言しておきますね」


「魔法の自作は出来ますよ。現にチヨも奈落の腕というオリジナルの魔法を開発しています。ただ、当然ながら異世界で使われていた言語をマスターする必要があるので、今の皆さんだと実質不可能ですね。キーボードの上でランダムに跳ねさせたスーパーボールが、思い通りの言葉を打ち込んでくれるくらいの確率でしょうか」


 常人離れした動体視力であっという間に流れ去るコメントを拾いながら、その場で返していくヴィオレット。

 悪意ある質問の他にもいくつか重複した内容も多かった為、濁流のように押し寄せる質問もそれなりに捌けてはいたが、それでも間に合わなかった物は後で答える為に手元のスケッチブックに高速でメモを取っていく。


〔ソーマの灯の魔法真似しても出来ないんだけど?〕


「それは必要な魔力のイメージが魔法ごとに違うからですね。念のために言っておきますと灯の魔法は魔法の中では簡単ですが、それでも先程の手あs……水魔法よりはだいぶ難しい魔法です。ソーマさんに教えた時も一時間程かかりましたし、そもそも灯の魔法を使う際のイメージのコツを皆さんには教えていないので、多分何時間練習しても使えるようにはならないと思いますよ。無理に発動しようとしても制御を失敗してボヤ騒ぎになるだけなので、あなたの身を守るためにもやめてくださいね」


 物によっては緊急性の高い内容もあった為、そちらを優先して対応していく。

 そんな中、一つの質問が特別彼女の目を引いた。


〔レベルアップで魔族や悪魔になる事もある?〕


 その質問に彼女の脳裏にチヨの姿が過る。

 ヴィオレット自身は直接本人から聞いた訳ではないが、彼女はチヨが元々人間だった事をその振る舞いや言葉から半ば確信していた。

 下層から姿を消したという彼女が悪魔になった経緯について考察する傍ら、ヴィオレットは質問に彼女自身の知識から答えていく。


「レベルアップは魔力によって肉体が変質する現象である事は既に説明しましたが、その変質現象によって種族そのものが変わることがあるかという事でしたら……可能性はあります」


 異世界でも稀にだがそう言う逸話が残されていた。

 悪竜に呑まれた男が腹の中の魔力を取り込んでしまったせいで竜人となり、悪竜の腹を裂いて現れた話などは彼女にとっても印象深い。

 その逸話での変質は厳密には以前百合原咲や春葉アトも直面した、魔物化と呼ばれる現象であるのだが……それが果たしてレベルアップによって引き起こされないかと言えば、また別なのだ。


〔あるのか…〕

〔レベルアップって安全じゃないの!?〕


 質問に混じり、リスナーの動揺のコメントが流れていくのを確認したヴィオレット。

 彼女はそこで慌てず、あくまでも冷静に補足を入れた。


「心配しなくても大丈夫ですよ。可能性はありますが、いくつか条件が重ならなければそうそう起こりません。レベルアップに影響するのはあくまで『心の奥底の願望』です。なので、私と同じくらい『人間であること』にコンプレックスがある場合は種族にも影響が出るかもしれませんが……多分そこまでの方は少ないんじゃないですかね?」


〔望まなければ問題ないって事?〕


「基本的にはそうですね。……例外は身の丈に合わない強大な魔物を一人で倒した場合でしょうか。例えばゲームなどに例えると解りやすいと思いますが、低レベルの段階で適正レベルを大きく超えたエリアの魔物を上手く倒す事が出来れば一気に成長できますよね。ゲームの場合はレベルアップによる成長はある程度決められているので問題ないのですが、現実だとそうではありません。いくら元は自分の願望だとしても、一度に多量の魔力を取り込めばレベルアップによる身体の変質も極端な物になりやすく、『求めていた以上の力を手に入れた結果、人でなくなる場合』や『目標の姿そのものになってしまい、結果的に種族も変わってしまう』という事も考えられます」


 例えば『もっと腕力が欲しい』という願望が強いダイバーが居たとして、少しずつレベルアップしていけば本人が『この辺で良いや』と無意識で満足したラインで腕力の成長は止まる。

 しかし、そう言ったラインを本人が判断する間もなくレベルアップが一気に進行してしまえば、腕力は異常な程に増大し、結果として漫画キャラのような異常に肥大化した腕を持ってしまうといった感じだ。

 そして、それらが()()()()()()に作用する。背が高くなりたい、鼻を高くしたい、痩せたい……そう言った無意識の願望やコンプレックスが暴走した場合、レベルアップの末にどうなってしまうのか……それは誰にも想像もできないのだ。


「……まぁ、こう言う事態は本当に稀だと思います。ダンジョンを普通に攻略していけば、普通に程よい速度でレベルアップしますから。そう言う意味でも、無謀なレベリングや探索はお勧めしませんね」


〔こっわ…〕

〔ちょっと無理して深層目指そうと思ってたけどやめとこ…〕

〔倒せる範囲の魔物なら問題ないって事だよね?〕


「基本的にはそうですね。まぁ、万が一保有魔力量が高い割にそんなに強くないなんて『生きた魔力タンク』みたいな魔物が居れば別ですが……居ませんよね?」


〔リアルではぐれメ〇ルを見かけたって話はきかんなぁ〕

〔あいつらが現実に居なくて良かったって初めて思ったわ…〕


 流れていくコメントを見て、質問が止んでいる事に気付いたヴィオレット。

 一つの質問に対してやけに長い返答になってしまったが、どうやらその間にあらかたの質問はコメントに流れて行ったようだ。

 手元に視線を落とせば、返答の傍らメモしておいた質問がびっしりとスケッチブックのページを埋めていた。


「……では質問もそろそろ落ち着いたようなので、この辺でメモしておいた質問に答えていきましょう」


〔はーい〕

〔俺の質問残ってるかな…〕


 そしてヴィオレットはスケッチブックの左上から、メモに残していた質問に順番に答えていく。


「最初は『ヴィオレットちゃんは最終的には人間になるの?』ですか……そうですね。このまま悪魔を倒して行けば、多分そうなります。この翼も尻尾も、角も無くなり……その時には寿命も人間並みになってると思います。既に千年生きた私がその時どうなるか分からないのは、ちょっと怖くもありますが」



「次の質問は……『なんか異世界の存在を証明できる証拠って無いの?』と言う事ですが……証拠ですか──あっ! アレがありましたね! ──【ストレージ】」


〔あるの!?〕

〔何!?〕


 少し考えた後に腕輪から何かを取り出したヴィオレット。

 彼女の口ぶりから異世界から持ち込まれた物品だろうと想像したリスナー達の注目が集まるのを、コメントから伝わる雰囲気で察するヴィオレットだったが──


「と言っても、配信越しで分かるかは微妙ですが……これです」


〔布の切れ端?〕

〔黒い布か?〕


 それはハンカチ程の大きさの黒い布切れだった。

 もっとファンタジーチックな物が飛び出すかと期待していたリスナー達の、肩透かしを食らったような反応に苦笑いを返すしかないヴィオレットは、続いてこれが何なのかを説明していく。


「これはアルケニーの糸に魔力を浸透させて織ったものです。魔力の通りが非常に良く、魔力操作だけで自在に動かせたり、鋼鉄以上の強度にも出来る異世界のアイテムですね。……元は私が愛用していたローブドレスでした」


 そう言って布に魔力を流すと、ただの黒い布が浮かび上がり、彼女に操られるままにゆらゆらと空中を漂う。

 風にそよぐようにはためいたかと思えば、時が止まったように固まり、机に軽く振り下ろされる。

 『カンッ!』と乾いた木の音が響き、布が硬質化している事が配信越しにも解った。


「とまぁ、このように衣服でありながら剣にも盾にも鎧にもなる万能装備だったんです。耐久性も相応に高かったんですけどね……こっちの世界に来るまでの戦いでこんな有様になってしまいました」


〔うわぁ勿体ない…〕

〔どんなヤベー奴と戦ったんだヴィオレットちゃん…〕


「どうでしょう? これで異世界の証明になればいいのですが……」


 そう言って魔力の制御を解いたヴィオレットの手に、ただの黒い布に戻った切れ端がパサリとかかる。

 一連のパフォーマンスは確かに一考の余地あるものではあったのだが……


〔俺は信じる!〕

〔検査すれば色々分かるのかも知れんけど流石に見ただけだとな…〕

〔魔法で同じ事が出来るかもしれないし証明には弱いかも〕


 と、全員を納得させるほどのものではなかったようだ。


「まぁ、無理もないですね。実際、魔法で普通の布を今のように操作する事も出来なくはないですし……」


 そう言って腕輪に布切れを収納しなおしたヴィオレット。

 一応彼女の腕輪の中にはまだまだローブドレスの切れ端は入っているのだが、それらを一度に見せたところで印象が変わる訳でもないだろう。

 彼女は今の布切れの存在のみを質問への返答として、次の質問の返答に移るのだった──





「──最後の質問は『今後も今までと同じように人間の姿で戦うのか』……ですか」


 質疑応答に入ってから早一時間ほど経っただろうか。

 スケッチブックにメモした質問の、最後に残ったその内容に少し考える。


(既に正体も明かしたし、私としては魔族の姿で戦う事にも躊躇は無い。その方が全力も出せるし、戦力を考えるのであれば魔族の姿と力を存分に発揮できるメリットもある……)


 特に翼による飛翔能力と、尻尾による刺突等は私の戦闘能力に直接的に関わって来る要素だ。

 魔都での戦いにも大いに役立つ事は間違いない。……しかし、一方で懸念もある。


(問題は、そのパフォーマンスが悪魔を倒す毎に落ちていく可能性がある事だ。能力の上限が安定しない状態で魔族の力に頼りきりになれば、いざと言う時に思った力が発揮できないというリスクもある……安定性を考えれば、人間の姿で自ら能力を多少セーブした方が良い側面もある)


 敵の攻撃を咄嗟に回避する際、翼に頼っているとその能力が落ちた時に回避が遅れる可能性がある。しかし、靴に付与した風で空中を蹴って回避する事を徹底していれば、そう言った場合でも問題なく回避が出来るのだ。

 ……もっとも、こちらはこちらでいざ魔族のパフォーマンスを発揮しようとした場合に、どの程度まで能力が落ちているかの把握が遅れるデメリットもあるのだが。


「……この質問に関しては、次回の探索までに答えを出しておきます。ただ、今後は魔法による攻撃もどんどん使って行こうかと考えています。もう、出し惜しみする必要もありませんからね」


〔エンチャントは?〕


「勿論使っていきますよ。今まで見せていなかった属性や能力も発揮して、全力で魔都を攻略します」


〔おお!〕

〔楽しみ!〕


 そう言って拳を握り決意を表明すると、ポジティブな応援のコメントが届く。

 炎上前と比べてチャンネル登録者数も大分減ってしまったし、荒らすような悪意のあるコメントも増えてしまったが……改めて応援してくれているコメント主の名前を見ていて一つの共通点を見つけた私は、胸が熱くなる思いだった。


(こうして見ると、今も私を応援してくれているのは初配信の頃から応援してくれている人が殆どだったんだな。……最初から、魔族だとか人間だとか関係なく『オーマ=ヴィオレット』を──私を見て応援してくれている人たち……)


 勿論、魔族が実在するなんて思ってもいなかったからというのが大きいだろう。

 でも彼等は私の正体を知ってなお、こうしてエールを送ってくれている。

 ……思えば私は悪意の声にばかり目を向けて、彼等の方を見ていなかったのかもしれない。

 いつまでも悪意に怯えていたら、彼等の応援に失礼だよな。


「──この配信の最後に、私の正体を知ってなお応援してくれた皆さんに感謝を。ありがとうございます……皆さんのおかげで、私は立ち直る事が出来そうです。これからも、応援をよろしくお願いします! オーマ=ヴィオレットでした! 皆さん、ごきげんよう!」


〔うおお!〕

〔復活だ!〕

〔どうせまた炎上するぞwww〕

〔ごきげんよー!〕

〔ごきげんよう!〕


 感謝と挨拶を最後に、ずいぶん長く感じた配信を閉じる。

 ──もう、悪意の声は気にならなかった。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 色々悪意のある言葉も有れど、やはりヴィオレットちゃんが「自分は自分だ」という意思を明確に出来た…というだけで暴露回としては成功と見て良いかもしれないですな。 それでは今日はこの…
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