伝わらない、この想い
『私、バイトの休憩終わるから、切るね』
そう言うと、電話口の淵田皐に通話を切られた。ほぼ一方的に。
「……なんだよ。皐のやつ」
通話が切れて、スマホの画面が暗くなる。
「さっきー、どうだった?」
バルコニーから部屋へ戻ると、幼馴染みの円加が訊ねてきた。
「バイトだからって、切られた」
「あはは、功ちゃん嫌われてるー」
「うっせ」
「どうせまた功太郎の言い方が遠回し過ぎて、気付いてもらえなかったんだろ?」
ソファに座っていたもう一人の幼馴染みの由樹が口を開く。
「“一緒に遊ぼう”って言うだけなのに。もしかして、さっきーに断られるの怖いとか?」
「なっ!? ンな訳あるかよ」
生まれて十七年。自分の誘いや頼みを断る奴はいなかった。
だが、高校時代のただ一度。初めて断った奴がいる。
それが彼女だった。
「……また、夜に掛けてみる」
「おー! もし功ちゃんが玉砕したら、骨は埋めてあげるね」
「円加。それを云うなら“骨は拾ってやる”だから」