第1話 失礼だぞ!
『世界各地にて、大量のゾンビが出現しております。』
「は!? やばいじゃん!」
それは朝のニュースだった。いつものテレビ、いつもの時間、いつもの朝の番組から、異質なニュースが流れる。
「やばい、やばい!! 本当にゾンビなんているのかよ! こうしちゃいられない、急いで非常食とか準備しないと!」
『…と、いうのはウッソで〜す。今日は4月1日、エイプリル・フール〜。』
彼の名前は、井出雅夫。この物語の主人公である。
「…だ、だよね〜…、ひ、引っかかったフリ〜…。学校行かなきゃ…」
マサオは恥ずかしさを振り払い、身支度を急いで整える…ニュースのその続きを聞かずに…
『…あ、あれはなんでしょう…ほ、本当にゾンビが!!』
「おかあさ〜ん? どこ〜?」
…朝から張り詰める不穏な空気。家の中で母親を見つけようとしているだけなのに何かとんでもない空気を感じた…
「…お母さん? お母さん!!」
「…う、うぅ…」
階段を上ると二階の廊下で、母親が蹲っているのを見つける…
「…お母さん…だ、だいじょ……うわっ!! ゾンビだぁああ〜!!!」
マサオはそのまま驚いて、階段から転げ落ち気を失ってしまった…
そして、目が覚めるとそこには誰もいない。テレビもつかない。外に出ても異様に静かだ…
「…ゆめ?」
しばらくすると、目の前に人影が横切る。
「す、すいません。な、何かあったんですかね?」
話しかけると男は立ち止まった。そして、振り返ると…
「てわぁあ〜、ゾンビだぁあ!!!」
「ガブっ!」
驚いたマサオは、呆気なくゾンビに噛まれてしまった。通常、ゾンビに引っ掻かれたり、噛まれればゾンビが感染るとされているのが常識だ。
「うわぁあ〜、噛まれたぁあ〜、うわぁあ〜、ゾンビになるううううう!!!」
「…」
「…」
…大げさなリアクションのマサオだが、噛んだゾンビが暫く黙りこくって動かなくなり、しばらく沈黙が走る。
「…マズッ。」
「は?」
沈黙を掻い潜って出てきた言葉は、意外な言葉だった。
「お前、マッズーッ!! 超気持ち悪〜い、オエェ〜…ゾンビか!? お前、ゾンビか? いや、ゾンビの方がまだ美味いわぁ、オエェ〜、マジィ〜死ねぅ〜…」
マサオを噛んだゾンビが目の前でのたうち回る。
「え…ちょ、なに…ちょ、失礼だぞ…てか、そんなに不味いの!? オレ!!」
「う…うぅ、不味かったぁ…。死ぬかと思った…ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ…ハァ…」
「息遣い、多すぎない!!?」
ゾンビの男が涙目になる程、マサオは不味いらしかった…そして。
「…あれ、お前…ゾンビから普通の人間に戻ってない?」
「あ…ありゃ、本当だ。」
おっさんのくせに、『ありゃ』とか使うなよと思いつつもマサオは可能性を感じた。
(…これは、このおっさんだけか? それとも…)
「…おっさん、オレはそんなに不味かったのか?」
「ああ、ドブ以下の味だ!」
「それは、それでやだな!!」
おっさんはドヤ顔で答える。
「なあ、おっさん。もしかしてだけれど、オレはこの世界の救世主なのかもしれない。他にも、ゾンビになった人達がいっぱいいるんだろ? オレなら全員救えるかもしれないぜ。」
「…いや、救われなくてもいいから君なんて食べたくないと思うよ?」
「そ、そんなにか!!」
マサオは決めた。…世界を救って彼女を作ることを。
「おっさん、行くぞ! 早く次のゾンビを見つけるんだ! 彼女を…、いやこの世界を救う為に!」
「…え、ええ〜…」
おっさんとマサオ達の旅はまだこれからだ…次回作に期…続きます。




