表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/84

レーナを探して 11

「ランベルト、トリュフ密売の罪は重いのか?」

「軽くしたら他の者への示しがつきませんので、それなりに」

「何と言うことだ……」


 レーナを救う方法はないだろうかと、カルロ王子は、必死に考えた。


(ここは、王室特権を使うしかない!)


 カルロ王子は、白々しく言った。


「ああ、その罪のことだが、私は常々変だと思っていたのだよ。トリュフを全て王室が取り上げるというのは、どう考えてもおかしい話だ」


(いや、ついさっき知ったばかりでしょう!)


 ランベルトは、心の中で突っ込んだ。


 カルロ王子は、いかにも普段から庶民のことを考えている風に演説する。


「ふ、今どき、強権というか、国民ファーストでないというか、私は国民ファーストこそが、これからのヴェントーネ王国に必要だと思うのだ」

「急にどうしました? 国民ファースト???」

「民が国の主役ということだよ。私が何のために、今まで庶民の振りで視察をしてきたと思っているのだ。すべては国民の生活を知り、国政に生かすためだ」

「そうだったんですか」


 ランベルトは、カルロ王子がただ楽しんでいるだけだと思っていた。


「私は、王子としてトリュフの自由売買を認めることとする! 常々考えていたことだから、レーナを助けようとかの個人の事情とは全く無関係」


 ランベルトは、(そもそもこの罪は、先々代の国王がトリュフを独り占めするために決めたこと。その時の反発はすごかったらしい。むしろ取りやめるとなれば、国民は大賛成。発案者のカルロ王子の株も上がることだろう)と、考えた。


 だから大賛成だ。



「お城に戻り次第、王陛下へお伝えしましょう」


(よし、これでレーナの罪もなくなる!)


 カルロ王子は、ホッとした。


 レーナが恐る恐る言った。


「え、ちょっと待ってください。カルロって……、王子様だったんですか?」

「え……、あ! ウワアアアー!」


 カルロ王子は、余計な事を喋ってしまったと気付いて叫んだ。


「キャアー!」


 カルロ王子が急に大声を出したので、レーナは驚いた。


 焦ったカルロは、どうしようもなくなってランベルトを責める。


「ランベルト! なぜ止めてくれなかった!」

「あまりにナチュラルに話しておられたので、先ほどすでに打ち明けられたのかと思っておりました」

「どうしよう!」

「知られてしまったのだから、正直に認めた方が良いかと思います」

「そうだな……」


 カルロ王子は、レーナに向かって真剣に謝った。


「レーナ、今まで黙っていて悪かった。私はヴェントーネ王国の第一王子、カルロなのだ」

「そうだったんですか」

「そして、ランベルトは、私の護衛を務めている騎士だ」

「改めて、よろしく」

「ランベルトさんも、ちゃんとされた方だったんですね」

「何だと思っていた?」

「カルロの遊び仲間かと」

「遊んでいるように見えたか?」

「アハハ! そうですね」


 レーナが屈託なく笑った。


「本当に驚かせてすまない」

「いいえ。私たち国民のことを常に考えてくださる、素敵な王子様です。とても親しみやすくて嬉しいです」

「レーナ……」


 これならいけそうと、カルロ王子は自信をつけた。


「さ、事件も解決したところで……」


 カルロ王子は改めてレーナに聞くことにした。

 それにはランベルトが邪魔だ。


「ランベルト」


 カルロ王子が目配せする。


「また席を外せとおっしゃるんですね。分かりました」


 ランベルトが出て行き、また、二人になった。


 いよいよ、核心に触れる。


「グリーンカレーの話の続きだが……」

「はい」

「私たちは同じカレーを食べていたんじゃないかと思う」

「……」

「レーナは名輪(なわ)綾里(あやり)と言う名前に聞き覚えがないだろうか」

「え⁉ どうしてその名を⁉」


 レーナは、自分の前世の名前をカルロ王子が口にしたので、とてもとても驚いた。

 昔の記憶を打ち明けた相手はペッピーノだけ。誰かに話した覚えなどない。


「知っているんだな」

「え、ええ……」

「片岡翼と言う名前に覚えはないだろうか」

「それも⁉ どうしてあなたが二人の名前を知っているの?」

「私は、かつて片岡翼という日本人だった」

「ええ⁉」


 驚きのあまり、レーナはよろけて近くのコップを落とした。ガシャンと高い音を立てて割れた。


「そんなことって……」


 レーナは、奇跡が起きたと思った。


「カルロ、いえ、片岡先輩……、私は名輪綾里です」

「やはり、そうだったか。これは驚いた」

「そんな……」


 奇跡の再会に感動した二人は、涙を堪えきれずに泣き出した。


「私たちは一緒に大地震に巻き込まれ、同じようにこの異世界ヴェントーネに転生したんだな」

「知り合いなんていないと思っていました。こんなところで巡りあえるなんて……」

「綾里……」

「片岡先輩……」


 二人は、自然と体を寄せ合い見つめあった。

 カルロ王子がレーナの頬にそっと手を添える。レーナの潤んだ瞳が美しく光っている。


「見た目は別人だが、中身は変わっていないんだね」

「そうかもしれません」

「あの時、私は君に告白して、その返事を聞けなかった。今度こそ聞かせて欲しい」

「もうあの時とは状況が違います。顔も身分も名前も違う」

「それでも構わない。あの時の返事を聞かせて欲しい」

「……あの時、私も好きと言おうとしていました」


 愛が成就したことに、カルロ王子は感涙した。


「レーナ! いや、綾里! その言葉をずっと聞きたかった。まさかここで願いが叶うなんて」


 レーナも感動している。


「転生してから、伝えられなかったことがずっと心に引っかかっていました。そのために、他の男性に求められても受け入れることが出来ませんでした。結婚も諦めていました」


 カルロ王子は、ようやく抱えていた問題が解けた気がしてスッキリした。それと同時に、レーナが自分を忘れずにいて、ほかの男を拒否していたことに感激した。


「今の私も君をお妃に選びたいと考えている。レーナはどうだろうか?」

「お妃なんて、私にはとてもとても……。一介の料理人がいいんです」

「そういうと思っていた」


 ガッカリしたが、レーナらしくてそこが好きでもある。


「私だってなんとか王子をやっている。君だってできるさ」

「でも……」

「そんなに料理が好きなら、お妃になっても続けていい。どうか結婚を考えて貰えないだろうか」

「料理人をしながらお妃してもいいんですか? それなら、考えさせてください……」


 レーナが言下(げんか)に断ってこなかったのだから、まだ希望はあるとカルロ王子は考えた。


 片膝ついて、レーナの手にキスする。


「私には君が必要だ。ずっと一緒にいて欲しい」

「カルロ……」


 カルロ王子は、立ちあがってレーナを抱きしめた。


「レーナ、大好きだ。愛している。今までも、これからも、この想いは変わることがない」


 カルロ王子の言葉に、レーナは泣いた。

 不安な気持ちがすっと溶けて、流す涙と共にどこかへと消えていく。


「私たちの愛は、時を越え、世界を越えたんだ! なんて素晴らしいことだ!」

「本当ですね。凄いことです」

「私と一緒に都へ帰ろう!」

「都には帰れません」


 ここまできてのレーナの拒否に、カルロ王子は言葉を失う。


「どうして?」

「私、家族に黙って出てきてしまったから、きっと怒っていると思います」


 レーナは、家族の反応が心配だった。


「そのことなら心配いらない。タッソ家には、王室を通して、一切君に関わらないように伝える。何か言ってきたら私が君を護る。だから安心して戻ってくれ」

「そこまでおっしゃるのなら」


 カルロ王子の懇願で、レーナは都へ帰ることを決意した。


「まだですか?」


 ランベルトが顔を覗かせた。


「ランベルト! 凱旋だ! レーナが私たちと都に帰ることになった」


 その晴れ晴れとしたカルロ王子と、隣で頬を染めるレーナを見たランベルトは、告白が成功したのだと分かった。


「ようやく、お妃様がお決まりになったようですね」


 お城に朗報を持って戻れる喜びに、ランベルトの声も明るくなる。


「ワンワンワン!」


 ペッピーノも、何か楽しいことになっていると分かって興奮している。自分の尻尾を追いかけて、グルグル回ってはしゃいだ。



 了


これで完結です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ