レーナを探して 9
「ここにいるのか?」
「そのようです」
「ガルルル……」
ペッピーノは、すでに何かを感じているようで、物凄い形相で廃墟を睨んで唸っている。
レーナを連れ去った男たちが中から現れた。
「おやおや、もうここまで来たのか」
「犬の鼻も侮れないな」
それぞれが手に武器を持っている。
カルロ王子とランベルトは、剣に手を添えて身構えた。
「レーナを返せ!」
「あんたの話はしてあるよ。直接交渉するんだな。約束の金はきちんともらうぜ。金塊1㎏だ」
「レーナを連れ去ったクセに、そんなもの、やれるか!」
「それじゃあ、ここまでだ!」
男たちが襲い掛かってきた。
3対2だ、余裕で勝てると三人は考えていたが、ペッピーノを頭数に入れていなかった。ペッピーノ一頭で、十人分の攻撃力があることを、彼らはまだ知らない。
ペッピーノの背中のたてがみが、興奮で針のように逆立った。
「グルルルル……」
「え?」
「グワオオオオオオ‼」
野生に戻ったペッピーノの咆哮が物凄い迫力で男たちを襲う。男たちは、恐怖に震え上がった。
「ウワアア!」
「猛獣だ!」
「飼いならされて牙が抜かれたコヨルフじゃねえのか!」
一斉に逃げだしたが、ペッピーノは逃げ惑う男たちを追いかけまわした。
「ガオオオオオオ!」
「ウワアアア!」
とても逃げ切れない。
三人は散らばったが、色白が追いつかれて、背中から押し倒された。
「ゲボオ!」
「アニキ!」
「ヤベエ!」
「た、助けてくれ! このままじゃ食われる!」
他の二人が助けようと思っても、手が出せない。
カルロ王子とランベルトは、その隙を突いて二人の首筋に冷たい刃を当てた。
「少しでも動けば、血が流れるぞ」
「両手を上げろ」
男たちは手を上げた。
「降参するか?」
「するする」
「悪かった。金は要らねえ。命の方が大事だ」
「レーナは?」
「女なら、この上にいる」
「お前たちに指示した奴の名前は?」
「エント・ジリアニだ」
観念した男たちは、ペラペラと全部喋った。
「もういいだろう?」
「よし、行け!」
剣を離すと、転がるように走って逃げ出した。
ペッピーノの下敷きになっていた色白を引っ張り上げる。
怪我はしていない。
色白も、ほうほうの体で逃げていった。
「ペッピーノ、よくやった」
「ちゃんと力加減して、偉い奴だ」
モフモフして褒めてやると、「ワン!」と、喜んだ。
「上にいるのは、レーナとエント・ジリアニか」
「早速、行きましょう!」
「ああ!」
「ワンワン!」
ペッピーノが先陣切って建物に飛び込んでいく。中の階段を真っ直ぐに駆け上がった。
「レーナの匂いを見つけたようだな」
「我々も続きましょう!」
カルロ王子とランベルトも階段を駆け上がった。
「ワン! ワン!」
「あそこの部屋か!」
2階の奥の部屋に、レーナと男がいるのを見つけた。
「いた! レーナ!」
そこになだれ込む。
レーナは椅子に座らされている。
突然入ってきたカルロ王子たちに目を丸くした。
「ペッピーノ! カルロ! ランベルト!」
そばにいる男は、武装していないが抜け目のない顔をしている。
「お前ら、俺と交渉したいそうだな」
「お前がエント・ジリアニか。レーナを放せ!」
「嫌だよーん」
自分の優位性に自信満々のようで、ふざけている。
「グルルルル……」
ペッピーノが、唸りながらにじり寄る。
「おっと、それ以上コヨルフを近づけたら、女は無事じゃいられないぜ」
レーナの体に短剣を突き立てた。
「やめろ!」
「この後、これがどうなるかは交渉次第だな」
エントは、蛇のような気味悪い目でカルロ王子たちを見た。




