表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/84

レーナを探して 7

 カルロ王子は、レーナといざ二人きりになると照れてしまって、なかなか本題に入れないでいた。


「あ、あの……」

「はい……」

「何と言っていいのか……」

「なんなりと……」

「急にいなくなったのは、家族が原因か?」


 最初に聞きたいことはそこではなかったが、話が弾まないことには切り出せない。


「……それもあります。だけど……、私のことを知らない場所で、一から始めたかったんです」

「そうか。それなら大成功だったな。君の名は都まで届いたよ」

「え? そうだったんですか?」

「それを辿ってここまで来たのだから、本当だ」

「そうでしたか。嬉しいです」

「君はどこに行っても変わらない」

「……」

「君を捜し出したのは、もう一度会いたかったからだ」

「そうですか……、でも、私はカルロの求めに応じることは出来ないと思います」

「そんなことはない」

「カルロ……」

「私は君の料理を食べたい。君と話したい。君の顔を見ていたい」

「……」


 レーナは、直球の告白に照れる。


「そして、君に聞きたいことがある」

「何でしょうか」

「君のグリーンカレーだ」

「グリーンカレー? ああ、ポニファーチョの店で出しましたね。お酒に合わないから、メニューに加えて貰えませんでした。なんとか改良しようとしましたが、スパイスが手に入りにくく、諦めていました。食べたいのですか?」

「いや、そうじゃない。食べたいのは食べたいが、そうじゃなくて、レーナに真剣に聞きたいことがある」

「何でしょう?」

「私は、あのグリーンカレーと同じものを食べたことがあった」

「え?」

「すっかり忘れていたんだが、あとから思い出した。レーナはどこであの味を知った? あれは完全に完成していた。自分で考えだせる味ではないはずだ」

「あれは……」


 当然、前世の記憶で作っている。

 市場でスパイスを見た時、カレーが閃いた。

 このヴェントーネ王国ではまだ誰も食べていないはず。作ったら驚かれて評判になると考えた。

 あまりに斬新過ぎて人気は出なかったが、美味しいと言ってくれる人も少なからずいたので、いつかリベンジできればと考えている。


「不思議な事ですね。私も昔食べた記憶で作っています。カルロと同じです」


 レーナは不思議そうな顔になった。

 レーナのグリーンカレーは、前世で働いていたレストランの賄いでよく食べていたものだ。

 カレー好きな先輩が作ってくれて、料理人仲間に評判良かった。

 レーナも大好きで、先輩から作り方を学んだ。

『賄いで出していいよ』と、認められるまでに上達したため、先輩が辞めてからは、レーナが作って出していた。


「カルロも食べたことがあるって、もしかして、私と同じような記憶があるってことでしょうか?」


 カレーと一口に言っても、味も見た目も千差万別。

 作る人が変われば、味も変わる。店によって違い、家庭によって変わる。

 無関係の他人が作って同じ味になる確率など、おそらく、0.01%以下。つまり、()()()だ。


「同じようなカレーを食べたことがあるなんて、とても考えられません。もしそうなら、それは奇跡でしょう」


 ――奇跡は起こる。それは自分の体験で分かっている。


 そのことを、レーナもカルロ王子もそれぞれが頭で考えていた。


「ああ、私もそう思う。しかし、その味の記憶は、私の舌に、とても、とても、深く刻まれている。決して忘れることはない。私は確かに食べたことがあった」

「どういうことでしょう? 同じ人が同じレシピで作らないと、同じ味にならないのがカレーなのに」


 レシピが同じでも、ちょっとしたさじ加減の違いで味が変わってしまう。複雑で難しい味なのだ。


「それなんだ!」


 カルロ王子は、意を決した。


「レーナ!」


 ガシッとレーナの両腕を掴む。

 突然のことに、レーナは驚いた。


「カルロ?」

「私たちの記憶だが、もしかしたら共通しているんじゃないかと思うんだ。それは、つまり……」

「つまり?」

「私たちは、同じカレーを食べている」


 いよいよ核心に触れようとしたその時だった。


「レーナはいるか?」と、怪しい男たちが三人現れた。


 冷たい目つきの色白の男。頭脳戦に強そう。

 小柄だが筋肉質な男。この中では一番侮れない感じがする。

 巨漢で禿げ頭。なぜか上半身裸。それでいて、汗臭そう。


「何だ? 君たちは」


 ランベルトが近くにいないことを知らないカルロ王子は、いざとなったら二人で協力して倒せるだろうと高を括って語気を強める。


「お取込み中か。邪魔したようだな」

「ああ? 男がいるなんて聞いてねえ。女一人という、貰った情報と違うな」

「コヨルフがいねえなあ。この鉄の棒をお見舞いしてやろうと考えていたのに」


 巨漢は先のとがった鉄の棒を持っていて、ペシ、ペシ、と、自分の手のひらに打ち付けて遊んでいる。それでペッピーノを殺すつもりのようだった。


「目的は彼女か? 私が手出しさせない!」

「はいはい、王子様の登場のようですね」

「なんだって?」


 庶民に扮装してきたのに、あっさり正体を見破られてカルロ王子は動揺する。


「レーナ姫を守る白馬の王子様ってか」


 カッカッカと大きな歯を見せて小柄な男が笑った。


「私は王子ではない!」

「分かっているよ。冗談の通じない奴だな」

「で、どうする?」

「どうするもこうするも、作戦実行だ!」


 三人の内、巨漢と小柄がカルロ王子に襲い掛かり、色白がレーナの腕を掴んだ。


「イヤア!」

「レーナを放せ! ランベルト!」


 外で待機しているはずのランベルトを呼んだが、姿を見せない。


「ランベルト! ランベルト?」


 いくら呼んでも来ない。


(まさか、こいつら先にランベルトを倒してからここに来たのか⁉ 一声も出させることなく倒したとしたら、相当の強者共!)


 壮大な勘違いをした。


 その頃、ランベルトはペッピーノを追って3ブロック先にいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ