レーナを探して 4
「次はどこへ捜しに向かおうか」
「やはり、行商人に聞くのが一番ではないでしょうか。彼らは各都市の情報に通じています」
「そうだな。よし、そうと決まったら聞き込み開始だ」
二人は、市場へ行くと行商人中心に聞いて回った。
ほとんどは空振りだったが、とある行商人から興味深い話を聞けた。
「ここから北にある町ルムーノで面白い話を聞いたさあ。あれは、女料理人が絡んでいたようだねえ」
「ほお。もっと詳しく聞かせてくれ」
「ええーっと、何だったっけなあ? ちょっと、思い出せないなあ」
突然、とぼけ始める。
「内容によっては謝礼を考えてやるから、話してみろ」
「約束ですぞ」
行商人は、にやりと笑った。
「何でも、偽トリュフの売人が捕まったらしいんでさあ」
「偽トリュフの売人?」
「そうでさあ。そいつは各地で偽トリュフを売りさばき、荒稼ぎしていたらしいんでさあ。それを、若い女料理人が偽トリュフだと暴いたとかなんとか」
「うむむ……。話だけ聞けば、いかにもレーナらしい」
「確かめに行ってみますか?」
「もちろんだ」
「あ、旦那、謝礼は?」
ランベルトは、小金を渡した。
「まいど!」
カルロ王子とランベルトは、急いで教えられた北の町ルムーノに向かった。
***
北の町ルムーノは、ヴェントーネ王国第四の規模を誇る大都市である。
人口が多いだけあって、大通りにはたくさんの煌びやかな店舗が並び、軒がひしめき合っている。
飲食店だけじゃない。宿泊施設にカジノやシアターの娯楽施設などが揃い、一晩中楽しむことのできる不夜城でもある。
たくさんの通りが長く伸びていて、どこを歩いても何かの店が開いている。その数は何千軒にも達しそうだ。
「うわー、この中から人間一人を捜し出すのは、とても難しそうですね」
「やみくもに探しては、いくら時間があっても足りないな」
人々が立ち止まることなく歩いている。歩くスピードや騒々しさは、城下町のある都やペイポンと全然違う。
「こうしてみると、都は静かなものだな」
お城のある都市がヴェントーネ王国の都であり、城下町はその一部分となる。
「都は文化教育都市。こちらはビジネスマン狙いの大都市ですから、集まる人々の目的も違います。比べるものではありませんよ」
(都を銀座だとすると、アンダーグラウンドの雰囲気が強いこちらは新宿だな)と、カルロ王子は例えた。
「ここで手掛かりが見つかるでしょうか?」
「偽トリュフ売買事件について聞いていけば、レーナに繋がるかも」
「行ってみますか」
二人は、青果店を中心に偽トリュフ売買事件について聞いて回った。
「ああ、そんなことがあったなあ」
八百屋の主人が知っているようだった。
「そいつは捕まったのか?」
「トリュフは全て王室に送られる決まりだと、知っているかい?」
「いや。ランベルト、そうなのか?」
知らなかったカルロ王子がランベルトに確認したところ、肯定した。
「そのようになっております」
「ということは、庶民の口には入らないのか。不自由なものだな。それで偽トリュフの売人はどうなった?」
「本物だったら王室に献上しなかった廉で捕まるが、偽トリュフだから捕まらなかったそうだ」
「なんと、そんなことが!」
カルロ王子は驚いた。
「しかし、偽トリュフを売っていたのだろう? それは罪ではないのか?」
「偽トリュフをトリュフだと偽って売れば詐欺で捕まったが、どう考えても、本物のトリュフが王室を通さずに出回るはずがない。流通するのは下賜されたトリュフのみで、販売には許可証がいる。買った方も、許可証を持たない行商人が扱っているのだから偽トリュフだと知っていたはず。それでは詐欺にはならないとの話だったらしい」
「うーむ……。確かに……」
買った人が罪に問われたくなくて、騙されたことを認めなかったのだろうと、カルロ王子は考えた。
「では、その偽トリュフの売人は、まだどこかでのうのうとしているということか?」
「そうなるね」
「若い女料理人が偽トリュフだと見抜いたと聞いたが、どこにいるか知っているか?」
「それなら、この先の通りで、アクアパッツァの屋台を出しているらしいよ」
「アクアパッツァの屋台⁉ 場所を教えてくれ!」
レーナのアクアパッツァを再び口にできるかもしれないと、カルロ王子は興奮した。




