モフモフ相棒ペッピーノ 1
ペッピーノと出会ったレーナ。
飼い主にいじめられていたペッピーノが気に掛かっていたところ、殺処分されると聞いてしまう。
異世界に転生してから孤独な生活を送っていたレーナには、気になる大型犬がいた。
近所で飼われている、ハスキー犬に似たペッピーノである。
まともに世話されていないようで、毛並みは悪く、ところどころ抜けてしまって禿げていてみすぼらしく、痩せて元気がない。
栄養が足りなくて、休養も足りなくて貧相で、ボロボロなみすぼらしい服を着ている自分と、どこからどこまでも似ていると感じた。
ある時、飼い主がペッピーノにパンを投げつけるところを目撃してしまった。とても愛情があるとは思えなくて、見ているレーナが悲しくなった。
家族として最低限の愛情を示すことはそんなに難しいことなのだろうか。
性格は穏やかで、レーナが近づいても吠えない賢い犬。レーナは前を通るたびに頭を撫でた。
「あなたはちょっと栄養が足りていないから毛並みが悪いけど、しっかり体調を整えれば、とても立派な番犬になれるわ」
「クゥーン……」
ペッピーノは、レーナの励ましの言葉に呼応するかのように濡れた鼻で手のひらをつつく。
レーナの気持ちが通じたのか、遠くに姿を見ただけで尻尾をブンブン振って歓迎してくれるようになった。
近づくと、つぶらな瞳を輝かせてペロペロとレーナの顔や手をなめて喜んだ。
ペッピーノは、いつも鎖に繋がれて狭い犬小屋に閉じ込められていた。
十分な散歩をさせていないのだろう。足腰の筋力が弱っていて、レーナに飛びつこうとしても力が弱くて転んでしまうのだ。だからレーナの方から抱きしめてあげた。
どれだけ虐げられても、人を恨まず、吠えない健気な姿にレーナは涙が滲む。
働くばかりで何の楽しみもない日々に、ペッピーノは一抹の癒しを与えてくれた。
ただ、そうは言っても他人の飼い犬。
家事と仕事で忙しい自分には何もできない。
飼い主に忠告したくても、近所の人とトラブルを起こしたくない。
ただ、黙って見守るだけであった。