表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/84

新天地でモフモフ料理無双 3

『炎回廊亭』と看板に書かれたレストランを発見。


「ここね。うわー、豪華な造り。間違いなく高級レストランだ」


 ヴェントーネ特産の石造りの堅牢な建物。そこかしこが金で装飾されているピカピカの外観。

 内装も天井にはシャンデリアが吊るされて、床には赤い絨毯が敷き詰められて豪華絢爛。

 入り口にはドアマンが立っている。

 レーナの身なりでは、話も聞いてくれないだろう。裏手に回って搬入口から訪問することにした。


 裏口は開け放たれていて、たくさんの料理人とスタッフが働いているのが見えた。

 ここなら高級食材トリュフの価値を正当に評価してくれるはずと、期待が高まる。


 腰を低くして、近くにいた掃除中の女性に声を掛ける。


「お忙しいところ、お邪魔します。一分だけお時間戴けませんか?」

「勧誘かい? そんなことをしていないで、真面目に働いたらどうだい?」


 最初のセリフを間違えたようだ。


「いえ、勧誘ではなく、最高級のトリュフは要りませんか?」

「シェフ! トリュフ、要りますかって!」


 シェフとは料理長のことで、厨房内では一番偉い。ありがたくもその人に取り次いでくれた。

 しかし、そう簡単に事は運ばない。奥にいたシェフはそっけなく断ってきた。


「いらないよ。他を当たってくれ」

「一度、味を試してみませんか?」

「帰ってくれ」


 壁は厚いが、トリュフの良さを一度知れば絶対病みつきになるはずだとレーナはもう少し粘ることにした。


「そんじょそこらでは手に入らない最高品質です。見るだけでもお願いします」

「前にあんたのような飛び込みでトリュフを売りに来た人がいて、ろくでもない商品を買わされたんだよ」


 諦めの悪いレーナを追い返すために、理由を教えてくれた。


「それって、どんなトリュフでしたか?」

「白トリュフだよ。城下町では大人気のキノコだと聞いて、安かったから仕入れてみたが、中は真っ黒で香りも味も全然なくてガッカリした。周辺の店はどこも買わされていて、皆も警戒しているんだ」

「そうだったんですね」


 売れない謎が解けた。


「外が白くて中が黒いトリュフはありません。おそらく、トリュフによく似たメラノガステルだと思います。香りも味もなく、食べる価値のないキノコと言われています」

「そうだったのか。いやあ、おかしいと思ったんだ。こんなに味のないものを、王室は喜んで食べているのかと」


 まがい物ワインを売る業者がいたように、偽トリュフを売る行商人がここで横行しているようだ。


「これ、教えて頂いたお礼です。賄いで使ってみてください」


 レーナはお礼にトリュフを一つ渡した。


「ふうん。まあ、貰っておくよ」


 全く期待のない声で受け取った。



 外に出てしばらく街中を歩いていると、さっきのシェフが追いかけてきた。


「トリュフ売りのあんた! ちょっと待ってくれ!」


 レーナは足を止めて待った。


「ハアハア! 見つかって良かった」


 たくさん走ったのか、肩で息をしている。


「何でしょうか?」

「あのトリュフ、まだあるかい?」

「ありますよ」

「全部くれ!」

「本当ですか⁉」


 飛び上がって喜んだ。


「前に買わされたトリュフとは、似ても似つかないいい香りと味だったから、うちで引き取るよ」

「良かった!」


 レーナは、まとまったお金を手にすることができた。

 誤解が解けて、トリュフの良さを知って貰えたことも嬉しかった。



 懐具合が良くなると、心のゆとりも出てくる。

 心のゆとりは笑顔を作る。

 ニコニコとペッピーノをモフモフした。


「ペッピーノ、これでしばらくは食べ物に困らないで済むわ」

「ワン!」


 ペッピーノも嬉しそうにしている。


 市場に行くと、丁度店じまい直前だったので、売れ残りの魚を激安で買えた。


「この魚と残ったトリュフで絶品料理を作ってみよう!」


 形が崩れて売り物にしなかったトリュフが、少しだけ手元に残っている。時間が経つと香りが無くなってしまうから、早いうちに食べることにした。



 必要な物を購入して川原に行った。


 一尾をペッピーノに分け与えると、生のまま食べた。

 生で食べられないレーナは、調理を始めた。


 枯れ木を集めて焚火を起こし、買ったばかりのスキレットでソテー。ジュワーと音を立てて焼けていく。


 中まで火が通ったら、トリュフのみじん切りを入れた。途端に、ポワンと独特の香りが立った。


「ああ、いい匂い」


 売れ残りの魚がトリュフによって高級料理となる。


「できた!」


 魚のソテー、トリュフ風味の完成だ。

 スキレットのまま食べる。


「いただきます! モグモグ……、ムフー! 絶品! ああー、久しぶりのちゃんとしたご飯だあああ!」

 感涙しながら食べた。


 目の前の景色もよい。

 雄大にそびえる赤茶色のヴェントーネ火山。

 それを見ながら食べると、ここがまるで高級リゾート地のレストランにも思えてきて、優雅な気分になった。

 家出して大正解だった。


「美味しいし、景色もいいし、最高!」


 料理と景色を堪能していると、「あのー」と、後ろから声を掛けられた。


「ワ!」


 パッソーニ一家がやってきたのかと身構えて恐る恐る振り向く。

 そこには、丸顔で背の低い青年がいた。

 怖い印象は全くない。むしろ人の好い顔をしている。

 パッソーニ一家ではなさそうでホッとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ