料理対決 VSオノフリオ 9
レーナが魚とウニの肉団子を出した。使った魚は味の劣る外道である。
(ほーら、やはり)
オノフリオは、(してやったり)とニヤリと笑った。
レーナは、用意された魚では味が落ちるため、ハーブとレモン汁に浸けて臭みを取り、ミンチにした。
裏ごしのウニを混ぜて楕円形に整えると、レモンの葉で挟んでセイロで蒸す。バルサミコ酢とカラメルで作った甘酸っぱいソースを掛けた。
オノフリオも見たことのない料理方法だった。
「レモンの葉を外してご賞味ください」
「これは……」
口にした審査員たちは、一様に感動している。
ポルペッティはフワっと柔らかく、レモンの爽やかな香りが移って、まるで高級魚の味わいとなっている。濾して混ぜたウニの旨味が溶け込み、高級風味の一皿となっている。
満腹でもう食べられないと思っていたが、その旨さに胃液の分泌が刺激された。唾液が湧き出て、簡単に完食できた。
(なんだ? ソレ?)
嗤ってやろうと待ち構えていたのに、オノフリオは何にも言えなくなった。
審査員の一人は、魚の名前が分からずレーナに質問した。
「レーナ殿、これはなんという魚か」
「こちらは、市場に出回らない名もなき魚です。漁師さんたちからは外道と呼ばれ、網に掛かっても嫌がられて海に捨てられます。だけど、きちんと料理すれば、このように美味しく食べることができるのです」
それは、魚と自分の境遇を重ねた渾身の一皿でもあった。
オノフリオは、カニとタイの詰め物パスタを出した。定番の人気メニューで安心の味覚。
ところがバターがきつかったのか、審査員たちの食が進まず、それを見たオノフリオの顔が引きつる。
「オノフリオ殿は、レーナ殿が使った魚を使わなかったんですね」
「ええ、まあ」
雑魚など使うわけがないオノフリオのテーブルには、高級魚しか用意されていない。
「いよいよ最後のデザートです」
オノフリオはレモンパイを出した。卵とバターと砂糖をふんだんに使っている。
「ウーム……」
審査員たちのほとんどが、一口二口で動きを止めている。パイとはいえ、小麦粉が胃に重いのだ。
「レーナのデザートです」
レーナは、即席塩レモンで作ったレアチーズケーキを出した。
「これは、サッパリして美味しい」「食べやすい」
甘みと酸味と塩気が食欲をそそり、口の中に残ったバターを洗い流すかのよう。
あっさりと完食された。
「ヌヌヌウ……」
残された料理を比べると、圧倒的にオノフリオの皿が多かった。
「では、審査をお願いします!」
オノフリオは、あの素材で負けることはないと思っていたが、念のため審査員を全員買収していた。
審査員が票を投じていく。
一人ずつ口頭発表なので、誰がどちらに入れたのかは一目瞭然となる。
「レーナ」
(は?)
「……レーナ」
(何ぃ!)
「オノフリオ」
(ウム、当然)
少しだけホッとする。
「オノフリオ」
(当然だが、なんてことだ。あいつとあいつ、裏切りやがった!)
オノフリオがレーナに投じた二人を交互に睨みつける。
今のところ、2対2。
残るは一般審査員。彼の票で勝敗が決まる。
一般審査員には、自分に投じたらあとで商品券を渡す約束をしている。貧乏人なら商品券に目がくらんで、必ずや自分に入れるだろうとオノフリオは自信を持っていた。




