料理対決 VSオノフリオ 7
カルロ王子は、ここでも正体がばれないようスタッフに紛れて陰から対決を見守っていた。
(頑張れ、レーナ! ここから応援しているよ! フレー! フレー!)
直接応援できないので、せめて心の声でエールを贈る。
レーナがオノフリオの肉はどんなものかとテーブルを見てみると、綺麗に脂の挿しが入った高級牛肉や柔らかそうな仔牛の肉が置かれている。
こちらを見て笑っているオノフリオ。
「なるほど。そういうことか。こうでもしないと。勝つ自信がないということね」
レーナはますます意欲が沸いた。
「硬い筋肉だろうと、きちんと下ごしらえをすればとても美味しくなるんだから」
牛肉の塊から手ごろなサイズで切り出すと、バットに入れていく。
赤ワインを樽からたらいに注ぐと、バットの牛肉にタプタプまでぶっかける。これでしばらく放置する。
輪切りにスライスしたレモンと塩とハーブで、即席の塩レモンを作った。
魚を見ていてあることに気付いた。
一般には出回らない雑魚が置かれている。それは、高級魚に形が良く似ていて、素人には見分けの難しい外道だ。
レーナが間違えて使ってしまうと考えたのだろう。ところが、タッソ家では漁師からただで手に入れられるので、よく食べていた。だからレーナはすぐに見抜けた。
オノフリオの狙いが手に取るように分かる。
「それなら、それで」
レーナは、わざと引っかかってやろうと考えて、雑魚に手を出した。
それをオノフリオが目にして、「あの小娘、まんまと引っかかっている」と、あざ笑った。
二人がこまねずみのように動いて、次々と仕上がっていく。
「凄い!」
「早い! もうできた!」
観客も審査員も、「ホー」と、感心しながら二人の動きを見守る。
パン! パン!
終了の合図の空砲が上がった。
「終了です! 両者、手を止めるように!」
レーナとオノフリオが同時に手を止める。
「前菜の先攻はオノフリオ、サラダはレーナが先攻。交互に出してもらいます」
前菜は、オノフリオの料理を食べて、レーナの料理を食べる。
次のスープは、レーナが先でオノフリオが後になる。
メインディッシュは、オノフリオが先に出す。
このように審査員が食べていくルールとなっている。
王室が絡んでいるだけあって、あの硬い肉と雑魚を除いては、実に公平なルールとなっている。
つまり、あの食材は王室と無関係ということだとレーナは考えた。
「では、私から」
オノフリオが前菜を出した。
海の幸山の幸のコロッケ三種盛り。バター、トリュフ、サルサのソースが散りばめられている。前菜からすでに重くて贅沢な一皿。
審査員たちは、黙々と食べる。
「次にレーナの前菜です」
レーナは、食用花をふんだんに飾り付けた華やかなカプレーゼを出した。
味もさることながら、盛り付けの美しさも審査の対象と考えたからだ。
審査員たちは数秒ほどプレートを眺めたあと、黙って食べ進めていく。




