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レーナの秘密 4

異世界になかった料理をレーナは創作していく

 ここの人たちは料理に関して未開のようで、簡単なものしか食べていなかった。

 塩、砂糖、油を使った料理ばかりで味が単調であった。

 ワインはあったが高級なため、一般家庭では調味料として使われていない。

 無料で手に入るハーブと、魚から出た旨味でレーナは味付けした。

 生まれ変わったようなレーナの料理に家族は驚き、どんどん太っていった。

 家族は、レーナが作っているのにそのことを伏せ、タッソ家の料理はとても美味しいと、まるで自分たちが作っているかのように近所で自慢した。相反するように、レーナのことは何もできないごくつぶしの子だと貶めた。


 そのことを知って悔しくなったが、「いつか見返してやるから、見ていなさいよ」と、レーナの原動力にもなった。


「お金があれば、もっと材料を仕入れられるのになあ」


 いい材料が集まれば、もっと美味しい料理を作れるが、タッソ家では誰も働かないからお金はない。買いたいものが買えなくて、いつも悔しい思いを抱えていた。


 何か方法はないかと悩んでいたレーナは、市場で蚤の市について聞いた。これに目をつけた。

 地域では、毎週日曜日に蚤の市が開かれる。ここには誰でも自由にお店を出せる。

 お金を稼ぎたいレーナは、屋台を出してアクアパッツァを売ることにした。


「恥ずかしい真似はしないでおくれよ。近所で悪く言われてしまう」


 家族は反対したが、それを押し切った。


 今までレーナは何もできない子だと近所で言いふらされてきたが、外で食べて貰えば誤解も解けるはず。そんな期待も込めていた。



「アクアパッツァ、いかがですかー!」


 レーナの屋台は、冷たい視線を集めていた。

 タッソ家の何もできない子が、よくわからない食べ物を売っていると思われていた。


「アクアパッツァは魚介類のトマトスープでーす! いかがですかー!」


 必死に客引きして愛想よく振る舞っていると、タッソ家のことを知らない人々が徐々に買ってくれようになった。


 レーナのアクアパッツァを食べた人たちは、一様にその美味しさに感動して、そうなると近くの人にも、「ここのアクアパッツァ、とても美味しいよ」と、勝手に宣伝してくれるようになった。

 こうして口コミで客が集まっていき、初回は完売。予定通りにお金が集まって、次の資金となった。



 何度か出店するうちに、早くから買わないと売り切れてしまう人気商品となり、レーナの到着を心待ちにして開店を待っていてくれるファンまで現れた。


 完売すると、他の店を見て回る余裕もできる。

 見て回っていると、レモネード屋がたくさんあることに気付いた。

 さらに、レモンがとても安く大量に売られている。

 レモンを買いながら売店の人と話をした。


「レモンがとっても安いですね」

「ここはレモンが特産品じゃないか」


 この敷地にも当たり前のようにレモンの木が植えられていて、黄色いレモンがたくさん生っている。


「そうか。ここではレモンがたくさん採れて安いのね」


 海が近くて、風通しが良く、土壌がレモンの生育に合っているのだろう。


 売主と値引き交渉したあとは、渇いた喉を潤すのにレモネードが最適。どの売店でも手作りレモネードが飛ぶように売れていく。

 自分もレモネードを売ろうかと考えたが、人気商品は競合が多くて競争に勝てそうにない。


 何かいいアイデアはないかと考えながら出店を見て回っていると、白い粉が売られていることに気付いた。

 小麦粉とは違う。堂々としているから怪しい粉ではないだろう。


「これって、何を売っているんですか?」

「天然の重曹だよ。掃除に洗濯、料理に使える万能粉だよ」

「へえー。重曹が採れるの」


 値段も安い。

 レーナは、レモンと重曹を組み合わせてレモンスカッシュを作って売れば、人気になるんじゃないかとアイデアが浮かんだ。

次々とアイデアを出して人気料理人になっていくが、それには目的があった

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