カルロ王子のお妃選び 10
カルロ王子が裏から城に戻ると、ランベルトが着替えを用意して待っていた。
「お召し物をお取替えください」
スタッフ用から王子用に着替えると、両陛下のところへ急ぐ。
「どこに行っていた」
「ちょっと休憩を」
「ここからお妃候補たちを見てみなさい。好みの娘はいるか?」
手渡されたオペラグラスで園内を覗いた。
色とりどりのドレス。顔を隠さないように帽子は禁止されている。その代わりに大きな羽根飾りを頭に付けている娘も多い。
いかに目立つかを考えた結果なのだろうが、カルロ王子は奥ゆかしい娘が好み。奇抜なファッションは逆効果である。
赤青金色のド派手なドレスを着たフランカを偶然見つけた。
「あれは居酒屋のフランカ」
人となりはうんざりするほど知っている。わざわざここで見定める必要なし。
「レーナはどこかな? ……いた!」
人混みを進むレーナを見つけて胸が躍る。
レーナの姉は、胸元が大きく開いて肩を露出した華やかドレス。レーナは、首元と手首までしっかり隠れる地味なドレス。
お妃選びに参加させてもらえず、姉と比べ物にならないドレスを着せられている。
居酒屋で毎晩遅くまで働いているのも家族のせい。
(相当、不遇な生活を送っているに違いない)
レーナが可哀想になった心優しいカルロ王子は、彼女を救う手立てはないものだろうかと考えた。
カルロ王子が真剣な表情で誰かを見ているので、両陛下は、気に入った娘がいたのだろうと安心した。
「カルロ王子、気に入った娘がいたんですね?」
「ああ……、いえ……、まだ……」
「構いませんよ。じっくり選びなさい」
ニコニコしている。
カルロ王子は、自分の気持ちを本人に伝える前に、レーナがお妃候補として話が進んでしまうことを怖れた。
レーナとは、形式を先んじるより二人の愛をじっくり育てるべきだと思っている。
侍従が時間を告げた。
「国王陛下、妃陛下、まもなく候補者へのお顔見せのお時間です」
「カルロ王子も参列しなさい」
「いえ、本日はご遠慮申し上げます。まだその時期ではないと思います」
「そうか。まあ、ある程度絞り込むまでは、表に出る必要もないだろう。好きにしなさい」
カルロ王子の意向を尊重して自由に任せてくれた。
アリアンナは、時間ギリギリで戻ってきたレーナにとても不機嫌になった。
「どこに行っていたのよ! もう始まるってのに!」
「すみません」
「あんたは、いつも、いつも……」
司会が参加者たちの前に現れると、作法の説明を始めた。
「全員、頭をお下げください。両陛下がバルコニーにお出ましの間、会話は一切禁止。身動きも禁止です」
「ほら、アリアンナ、始まるわよ」
「ウグ……」
お陰でそれ以上小言を言われることなくすんだ。
「国王王妃両陛下のお出ましです。頭をお下げください」
一斉に、ドレスを広げて腰を低くくし首を垂れる。
両陛下が二階のバルコニーに現れた。
人影は2名のみ。カルロ王子は姿を見せない。
王が言葉を述べる。
「この良き日に、かような大勢の淑女たちがカルロ王子のため集われたことに感謝する。良き伴侶が見つかることを期待しておる」
話を終えた両陛下は奥に引っ込んだ。カルロ王子は最後まで現れなかった。
「この後、呼ばれるまで自由にお過ごしください」
途端にザワザワしだした。
「カルロ王子殿下はいらっしゃった?」
「どなたか見た方はいらっしゃる?」
「薄目で探したけど、どこにもいませんでしたわよ」
司会が説明した。
「カルロ王子殿下は、きちんと皆さんを見ておられます」
「え、どこから?」
皆がキョロキョロと城を眺めた。
「いないじゃない」
「カルロ王子殿下に会いたいのに」
「お顔見せはないの?」
納得いかない者たちに詰め寄られても、司会は動じず、問答無用で進行していく。
「オーディションを始めます。お一人ずつ前に出て、自己紹介してください」
お妃選びの熾烈な戦いがいよいよ始まった。




