カルロ王子のお妃選び 6
お妃選びの日がやってきた。
会場となった城から見下ろせる広大な園庭は、国中から集まってきた着飾った淑女たちで埋め尽くされている。
お妃候補には付き添いが一人だけ許可されている。つまり、候補者の倍の人数がここにいて、大混雑している。
これだけのライバルがいるのだと、やってきてから知ることになる。
会場には王室料理人が作る料理テントがあり、ご馳走の匂いが漂っている。
前菜、スープ、サラダ、メインディッシュ、デザート、さらにワインなど、一通り食べて行けば立派なコース料理となる。
しかし、多くの参列者の目的はそこではないからか、ほとんど関心を寄せていない。
みな、カルロ王子に見初められるため、みっともない姿を見られないよう、喉が渇いてもお腹が空いても飲食を我慢していた。
園内放送が流れた。
「国王王妃両陛下が挨拶に出て来られるまで、静かにお待ちください」
最初こそ押し黙って厳かに佇んでいた参加者たちだったが、待ち時間があまりに長かったため、飽きて私語が増えていった。
「まだかなあ」
「いつ深窓の王子は現れるのかしら」
「やだあー、緊張しちゃう」
「無理することないわよ。結婚したら毎日緊張するんだから」
「見初められたらどうしよう」
「顔だけで選ぶのかしらね?」
「王室なんだから、身上調査も当然するでしょ」
「あなた、素敵な恋人がいなかったかしら」
「誰の事?」
「やだ、もう別れたの?」
「あなたこそ、いつも恋人のことを惚気ていたじゃない。調べられたらまずいんじゃないの?」
「バツイチでもOKなの?」
「そっちこそ、今日は子供たちを誰に預けたの?」
「私に子供なんかいないわよ!」
「そうだったかしら?」
ライバルを蹴落とそうと、腹の探り合いとけん制と秘密の暴露合戦があちこちで勃発している。
「カルロ王子、今日という素晴らしい日を、私は生まれた時からお待ち申しておりました」
選ばれた時のセリフを今から練習している猛者もいるが、全部棒読み。
彼女の隣で母親らしき女性がボソッとささやいた。
「殿下を忘れているわよ」
「ああっと、カルロ王子殿下、今日という素晴らしい日を……私は……、私は……」
「……生まれた時からお待ち申しておりました……」
「生まれた時からお待ち申しておりました」
あっちを直せばこっちをど忘れして、何回も言い直した。
ライバルの多さに圧倒されて、アリアンナがガチガチに固まっている。
横にいたレーナが見かねた。
「アリアンナ、もっとリラックスしないと魅力半減よ。笑顔、笑顔」
緊張のあまり怖い顔になっていては、箸にも棒にも掛からず終わってしまう。
レーナはゾーエのドレスで参加していた。既婚者用の地味なドレスだが、普段着よりずっとまし。
(こんなに素敵な衣装を着たのはいつ以来だろうか)
思い返せば前世での成人式以来。
日常はシェフ服ばかり着ていたが、あの日だけは豪華な振袖を着て過ごして嬉しかった。
このドレスによって自分の女っぷりも少しは向上しているはずだが、今日の主役はアリアンナ。自分は関係ない。
「そう言えば、フランカも参加しているはず。どこにいるのかしら」
フランカのドレスを見たいと思って人混みを探したが、多すぎて見つからない。
目立ちたがりの彼女のことだから、いずれ目に留まるだろう。




