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カルロ王子のお妃選び 3

 タッソ家でも一世一代の大勝負とばかりに、アリアンナを飾り立ててお妃候補として園遊会に参加させることになった。

 ゾーエの工作によって、アリアンナの近所での評判は悪くない。お触書を知ったゾーエは、近所の人に頼んで無事に推薦を得ることができた。

 それだけで、アリアンナはもうお妃に選ばれたかのように浮かれている。


「女の幸せは結婚よね。それも最高の男との結婚なんだから、国中が私をうらやむわ!」


 ルンルンとドレスを試着するアリアンナを見て、妹のヴィオラは、「アリアンナばかり綺麗なドレスでズルイ! 私もドレスを着て行きたい!」とむくれた。


 ゾーエが慰める。


「ヴィオラにはまだ早かったねえ。今回のお妃候補は、15歳から18歳までの子女となっているんだ」


 ヴィオラはまだ10歳だった。


「次のお妃選びはいつ? その時、私は出られる?」

「そうだねえ。こればかりは王様がお決めになることだからねえ」


 カルロ王子の下には王女が続けてお生まれになっており、待望の第二王子が生まれたのは昨年のことである。

 もし同じように第二王子のお妃選びがあったとしても、ヴィオラは10歳近く年上となり、おそらく対象外であろう。分かっていたが、可愛そうなのであえて言葉を濁していた。


「ねえ、レーナも対象になるんじゃない?」

「レーナは無理だよ。選ばれるわけがない。当日はアリアンナのサポートで働いてもらうつもりだよ」


 選ばれるわけがないと、頭ごなしに決めつけている。


 初耳のレーナは驚いた。


「え? お店に出なくていいの?」

「その日は特別な祝日として、すべての営業が禁止されるんだと。つまり、国中の店が休み。だけど、お前に休みはない。アリアンナの引き立て役として、しっかり働くんだよ」

 

 レーナは、お妃にまったく興味がないからどうでもいい。それよりも久しぶりの休みで嬉しい。


「貴重なお金を使って手に入れた、大事なドレスだ。当日までに手入れをしっかりやりな。もちろん、食事の準備も怠りなくやるんだよ」


 ゾーエは、レーナに面倒な仕事を全て押し付けた。


 この家のお金をかき集めて購入した中古ドレスは、ところどころに油とコーヒーと食べかすの染みが頑固にこびりついている。さらに黄ばんだ汗染みまでついている。

 それらを全て取り除き、新品同様にするよう言われた。



 ドレスの洗濯を押し付けられたレーナは、どうやって汚れを落とせばいいか考えた。


「頑固なシミには重曹が一番」


 ここでも重曹が大活躍するだろう。

 ぬるま湯に重曹を溶かして、汚れの部分を浸けこむ。

 頑固な汚れには、少量の水で溶いた重曹ペーストを塗りつける。


「これで汚れが浮いてくるはず」


 放置している間に食事の支度を行った。


 30分ほど経ち、料理を中断して洗濯に戻る。

 重曹で分解された油汚れが水に浮いている。


「よし、いい感じ」


 裏に乾いたタオルを当てると、表側から歯ブラシでトントンと汚れを叩いていく。

 タオルに汚れが移れば、そこは終わり。汚れた個所を変えて同じ手順で繰り返していく。


 すべての汚れが取れると、ドレスが見違えるほど綺麗になった。

 最後に重曹を使って丸洗い。水を吸ったドレスはとても重いが頑張った。

 シワにならないよう、パンパンと手で叩いて水を払い、物干し竿に干した。


「フー、出来たあ」


 風に揺れるドレスはとても美しく、誰が着ても絶世の美女に見えるだろう。

 腕が疲れて汗だくになったけれど、達成感で胸がいっぱいになる。


「ワンワン!」


 ペッピーノが揺れるドレスにじゃれつこうとしていたので、慌てて止めた。足の裏の泥が付いたら大変だ。


「お願い! やめて!」


 必死に体を抑えていたら、ペッピーノにも通じたようで諦めてくれた。



「仕事に行ってきます」


 出勤の時間になったレーナは、ペッピーノと出て行った。


 それを確認したヴィオラは、こっそりと物干し竿に近づいた。


「いいなあ。私も着たい」


 ドレスをよく見ようと引っ張ると、竿ごと落ちてしまった。せっかく洗ったドレスが泥だらけだ。


「どうしよう……」


 これを知られたら、アリアンナとゾーエに叱られるだろう。

 考えただけで、怖くて泣きそうになる。


「私、知―らない!」


 口を手でふさいで部屋に逃げ込むと、布団に隠れた。

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