表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/84

モフモフ相棒ペッピーノ 4

レーナの奮闘虚しく、連れて行かれそうになったところに救世主が現れる。

「ギャイン! ギャイン!」


 尻尾を巻いて逃げ惑うペッピーノだったが、鎖に繋がれているから逃れられない。


「だから、やめて!」


 大きくこん棒を振り上げた飼い主とペッピーノの間に、レーナが入った。

 こん棒が背中を直撃する。


「痛い!」


 身を挺してペッピーノを庇った結果、死にそうな激痛がレーナを襲った。


 飼い主はビビった。


「バカ! 何やってんだ! 今のは俺のせいじゃないからな! お前が勝手に割り込んだからだ!」


 飼い主は、謝るどころかレーナを責める。


「クウーン……」


 ペッピーノが悲しそうに鳴いた。


「……ウウ、これで気がすんだ?」


 痛みに痺れる体を無理やり起こして、飼い主に向かう。


「お前、正気か? 犬の身代わりに叩かれるなんて。呆れた野郎だ。しかし、処分は決まったことだ」

「私がペッピーノを引き取ります。それでいいでしょ」

「こんな番犬にもならないボケた犬を? 物好きなこった!」


 バカにして吐き捨てるように言った。


 レーナは、痛みを堪えてペッピーノの背中を優しくなでる。


「この子は優しくて番犬には向いていないかもしれないけど、ボケてはいません。賢い子です」

「クウーン」


 ペッピーノがレーナの打たれた背中を盛んになめている。


「ほらね。ちゃんと分かっているでしょ。自分の怪我より、他者の怪我を治そうとする優しくて賢い子なの。ちゃんと育てれば名犬になれる。だから、殺さないで、私に譲ってください」

「そんなに言うなら、売ってやる。いくらで買う?」


 とうとう、お金のことを言い出した。


「お金はありません」

「じゃあ、この話は無いな」


 そこにセルジョがすっと現れた。


「ずっと見ていたが、いい加減にしろ」

「セルジョ!」

「ペッピーノの処分費だって掛かるはずだ。むしろ、その金を彼女に渡して引き取ってもらってもいいはずだ。それを弱みに付け込んで金を要求するなんて、恥ずかしくないのか?」


 レーナには応援してくれるセルジョが男前に見えた。


 ビシッと言われた飼い主は、さすがに恥ずかしくなったのか、「分かった。ただでやるよ」と言った。、


「あとで自分の犬だと難癖付けて騒ぐなよ。俺が近所中に経緯を触れ回るからな」

「ああ、うう……」


 図星だったようで、飼い主が真っ赤な顔になる。


「じゃあ、ペッピーノは今日から私の犬ですね」

「好きにしろ」


 飼い主は荷車からペッピーノを下ろすと、鎖の持ち手を「ホレ」と、レーナに投げてよこした。


「ペッピーノ! 良かったね!」

「ワンワン!」


 レーナが大きな体を抱きしめると、ペッピーノは嬉しそうにレーナの顔をペロペロと嘗め回した。


「ふん。後悔するなよ。それと、セルジョ、お前も物好きだな」


 飼い主は、空の荷車を引いて帰っていった。


 レーナは、セルジョにお礼を言った。


「セルジョさん、本当にありがとうございました」

「いや、いいんだけど、大型犬はエサ代が掛かると思うよ」

「それなら大丈夫です。幸い、食べ物はたくさん手に入るので。でも、こんな朝早くに散歩していたんですか?」


 セルジョは、少しうな垂れる。


「君の昨夜の怒りを見て、自分が恥ずかしくなったんだ。僕はペッピーノを見捨てようとした。気になって目が覚めて、様子を見に来て、君が自ら飼い主に打たれてまでペッピーノを庇っているのを見て心苦しくなった。それで気が付いた。僕がペッピーノを助けるべきだったってね。遅くなってごめん」

「セルジョさんは行動してくれた。それだけで十分です」


 レーナの言葉に、セルジョの表情は少しだけ晴れやかになる。


「あんたが作るアクアパッツァ、本当に旨かったよ」

「また食べに来てください」


 帰っていくセルジョを見送った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ