転校
コツコツと廊下の床を足が叩きながら長身な男は機嫌が良さそうに聞いてきた。
「いやぁ、樹君緊張しているかい?」
「はい、そうですね・・・少し胃が痛いです。」
そう言うと男はッハハっと爽やかに笑う。
この男は大宮徹今日から転校した学校の先生で担任である。
「大丈夫さ、うちのクラスはみんなフランクだからすぐに馴染めるさ。」
そう言うと先生は3-Bと札の付いた扉の前に立ち止まった。
そして扉を開ける、僕は緊張して胸が高鳴りながら後をついていった。
「はーい、ホームルーム始めるぞぉ~。」
そう言うと教室は段々と雑音を消しながら僕と先生に注目が集まる。
そして一つ咳払いをして先生は話し出す。
「今日は新しい転校生を紹介するぞ~、さぁ樹君。」
先生は頷き、僕を見て背中を叩いた。
「は、初めまして埼玉樹です。よろしくお願いしまちゅ!」
あ、噛んだ・・・。
一瞬クラスが静まり返る、沈黙が辛いっていうか死にたい。
汗が頬を伝って落ちていく。
瞬間クラスが大爆笑に包まれた。
「あはあははは、よろしくな!!」
「なんだよ、っちゅってアハハ!!」
僕はポカンとしながら、立ち尽くしていると先生が少し大きな声で言った。
「はーい、静かに~一様ホームルーム中だぞ~じゃあ樹君はあそこの席に座って、じゃあホームルームの続きするぞ~。」
そう言われて一番後ろの窓から二番目の席だった。
そして席に着く、すると隣の席の端正な顔の男子に声を掛けられた。
「よお、転校生!俺は飯能義人よろしくお願いしまちゅな。」
そう言って手を差し出してきた、一瞬混乱するが握手をして言った。
「緊張してたんだからかうのは止めてよ、よろしく。」
握手を挨拶で初めて求められた、イケメンのみ許された行動だなっと思っていると前の席の女子の席が言った手を上げて言う。
「大宮先生ー、飯能君が転校生イジメてまーす。」
そしてッドっとクラス中が笑う。
そして先生は困った顔をして言った。
「はいはい、いつまで経ってもホームルーム終わらないぞ~。」
そして再び先生がホームルームを続けていると前の席の女子が僕の方に体を向けて話しかけてきた。
「私は狭山恵よろしくね!」
そう名乗る少女は栗色の髪の毛で少し日焼けのした活発そうな女の子だった。
目を輝かせて狭山さんは色々と聞いてきた。
「ねぇ、何処から来たの?やっぱ都会から?頭良さそうだよね!」
「え、ええっと。」
あまりの距離の近さに俺が困惑していると先生が言う。
「こら!佐山、ホームルーム終わってないぞ。」
「ごめん、先生~じゃあ後で話聞かせてね!」
そう言って佐山さんは前を向いた。
明るい人だなぁっと思いながら胸を撫で下ろすと窓側の少女に目が行った。
黒い髪にショートカット窓からの風に髪を揺らす少女、外に舞う桜がとても絵になってまるで芸術の作品の様だった。
少女はこちらの視線に気づいてこちらを見る。
目が合い離せないそして無意識に呟いた。
「綺麗・・・。」
僕は我に返った。
「あ、ごめん・・・。」
そう言うと少女は少しニッコリ笑って言った。
「ありがとう、よろしくね私は青梅さゆり、よろしくね。」
「よろしく・・・。」
そうして僕の脳裏は少女の笑顔で埋め尽くされた。