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005 秘密結社

「秘密結社《完全なる平和(パーフェクトピース)》に入れ」


「秘密結社?」


 俺は思わず聞き返してしまう。


 なぜ、いきなり秘密結社に入れと言ってきたんだ?


「そうだ。お前らには秘密結社《完全なる平和》に入ってもらう。ちなみに拒否権はない」


 拒否権ないのかよ。

 そんな勝手な。


「ユウシンが入るならわたしは入るよ、その秘密結社に」


「ユウザキ、お前にとっても悪い話ではないと思うぞ」


「そうなのか?」


「ああ、魔力量ゼロじゃ安全な水は飲めない、明かりの確保も出来ない、普通の魔道具は使えない、【身体強化】も出来ないからろくに力仕事も出来ない、魔物を倒すなんてのはもってのほかだ」


 バレットさんは続ける。


「魔力量が50に満たないような奴らがどんな扱いをされているか知ってるか? まずそんな子が生まれたら周りの目を気にして殺されるか、奴隷として売りとばれされるのが大半だ。そして奴隷になっても普通の仕事は出来ないから、娼婦にされたり、魔法などの実験体にされたり、見世物として魔物と戦わされたり、普通の人とは扱ってもらえない」


 それからも、バレットさんは続ける。


「そんな感じでまず、魔力量が50に満たないような人がそこら辺の町を普通に歩いている事は基本ない。もしいたとしても普通の扱いはしてもらえる事はない」


「じゃあ……魔力量ゼロは……」


「論外だな」


「そんな……」


 この世界じゃ、あの国王の対応が普通だって事か。

 だからって、こんなの理不尽過ぎるだろ。

 俺は勝手に召喚されただけなんだから。


「で、でも、俺にはスキルがある。城の測定では何もなかったけど……」


「なあ、ユウザキ。お前はそのスキルをどこまで知ってる」


「それは……」


 そんなスキル事なんて知らねえよ。

 教えてもらった訳でもないし。


「オレの方がお前のスキルの事は知ってるぞ。スキル名は〈死からの反撃(デスカウンター)〉。名からして、死ぬことがスキル発動の条件だろうな」


「な、なんで!?」


「それは、秘密結社《完全なる平和》のメンバーが城での判定を偽装したからだ」


「どうしてそんな事を!? そのせいで俺は処刑であんな場所に飛ばされて――」


 俺が声を荒らげるが、それをバレットさんが止める。


「まあ、落ち着け。もともと秘密結社《完全なる平和》がそのまま入れる手はずだったんだが、国王があんなに早く動くとは想定外だった。すまなかった」


 バレットさんは深く頭をさげた。


「まあ、生きてるからいいですよ」


 俺の言葉を聞いてバレットさんは頭を上げる。


「そういえば、もともと入れるつもりだったて、なんでですか? 魔力量がゼロだからですか?」


「ああ、それは俺たち秘密結社《完全なる平和》が事前に勇者召喚の情報を掴んでいて有望な人材を引き抜こうとしてたんだ」


「それなら、他にもいたでしょ連次郎とか」


「城に潜伏している奴がお前のスキルは可能性があるとか言ってたぞ。だからスキルが王国側にばれないようにして、引き抜く手はずだったんだが」


 本来はそのまま引き抜かれるはずが先に処刑で死の谷へ飛ばされてしまい、その連絡が一番近く、単独で死の谷へ行って戻ってこれるバレットさんに入り急いで助けに入ったとの事だった。


 後、バレットさんが「魔力ゼロなのに死の谷であんだけ生き残れるんだから強力なスキルなんだろう」とも言った。


 それと、「もし普通に測定されてスキルが発覚してもあの王国のことだ。正当な扱いは受けられなかっただろう」との事だ。


「秘密結社《完全なる平和》には魔力量を偽装する手段がある。魔力量どうにかすることはできないが」


「それがあれば俺は普通に町に出られるって事か」


「ああ。悪い話じゃないだろ」


「たしかに……」


「後、俺たちはお前らの故郷に帰る方法を知っている」


「えっ!? 教えてくれ! たのむ!」


「ただでは教えられない」


「俺が秘密結社《完全なる平和》で働けって事か?」


「まあ、そうだな。後、これは秘密結社《完全なる平和》の最大の目的とも関係してくるんだが」


「最大の目的?」


「ああ、とある組織を壊滅させる事だ」


 バレットさんのとある組織についての説明を始めた。


「組織名は《平和を壊す者(ピースブレイカー)》。構成人数は不明。おそらく、そこら(じゅう)の国に潜伏している。目的は世界征服。この世界が終われば、次はユウザキ、お前の故郷が征服の対象になるぞ」


「そんな事が……」


「お前らの故郷へといける方法があるんだ。可能だろ」


 そっか、俺らが帰れて他の人がいけない訳がないのか。


「《平和を壊す者》に対抗するには、勇者たちの力が必要になってくる。だからお前らを故郷に帰して『めでたしめでたし』とはいかないんだよ」


 俺らが今帰っても、この世界が征服されれば次は日本が……


「まだ、奴らは表立った活動はしてないが、裏で着々と進めている」


 それからバレットさんは間を置いて言った。


「悪い話じゃないだろ。拒否権はない。というかそれしか選択肢がないだろ」


「そうだな、入るよその《完全なる平和》に」


「よし決まりだ! これからお前達を死ぬほど鍛えてやる」


「えっ、わたしも!?」


 ここで、ずっと黙っていたカーミルが口を開いた。


「そうだ。お前もまだまだ弱い。《完全なる平和》に入ったからには強くなってもらうぞ」


「分かったわよ」


 それからバレットさんから今後の予定について話があった。

 俺のスキルを色々と調べる為に《完全なる平和》のメンバーの蘇生魔法が使える人と合流するとの事だった。

 死が発動条件だとしても、再発動の時間があったりして殺してしまったら大変だからだと。


 えっ、俺、殺されるの?

 そんな訳……ないよな?

 ないと言ってくれ。


「今日は色々あって疲れただろ。飯持ってくるからそれ食って寝ろ」


 バレットは部屋を出ていった。


「人間のご飯、久しぶりだな」


「あっ、そこ?」


 俺は少し笑ってしまう。


「だって、呪いでずっとあの谷にいたんだよ」


「そっかー、そうだよな。普段何食べてるの? 谷では巨大蜘蛛食べてたけど」


「あんなの非常事態じゃないと食べないよ。普段は魔物のお肉とかだよ」


 しばらくカーミルと話しているとバレットさんが食事を持ってきた。


 飯は、肉と野菜がゴロゴロ入ったスープと黒パンだった。

 俺はパンを頬張り、スープで流し込んで食べていった。


 カーミルの食事の量が俺の4倍くらいあったが先にペロリと平らげ、物足りなさそうにしていた為少し分けてあげた。

 分けてあげた時の満面の笑みはすごく可愛かった。

 

 そして、ベッドで寝ることになった。


 カーミルと二人で。


 食器を取りに来た時、バレットさんが「ベッドの空きがないから二人で寝てくれ」と言ってきた。

 俺たちのいる場所は《完全なる平和》の隠れ家の1つで、表向きは普通の宿屋として使っているとの事で、普通の部屋が埋まってしまったようだ。


 最初、俺が床で寝るのを提案したのだがそれならカーミルが「わたしが床で寝る」と言い、なんやかんやで2人で一緒に寝ることになった。


 俺がベッドに入り、カーミルも入ってくる。

 カーミルが明かりを小さくする。

 

 この明かり1つ操作するのにも魔力がいるんだよな。


「わたしを助けてくれてありがとね」


「俺は何もしてないよ」


「そう? 呪いを解いてくれたし、わたしを庇ってくれた」


「呪いは別に解こうとした訳じゃないし、体が勝手に動いただけだ」


「ユウシンは優しいね」


「俺はそんな優しくないと思うぞ。後、いい人でもない」


「そんな事ないと思うよ」


「この話はもうお終いだ。明日は早いみたいだし寝るぞ」


「おやすみ、ユウシン」


「ああ、おやすみ」


 すぐにカーミルの寝息が聞こえてくる。


 寝るの早いな。


 普段だったら、女の子が横にいたら寝れないと思うが今日は色々ありすぎてだいぶ疲れている。

 普通に寝れそうだ。


 それにしても今日は凄い1日だったな。

 教室から異世界に召喚され、魔力量を測ったらゼロで、処刑として死の谷へ飛ばされ、カーミルに出会い、巨大蜘蛛に襲われ、秘密結社に入る。

 こんなに濃い1日は生まれて初めてだ。


 そして、俺は眠りに落ちた。

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