030 反撃開始
スキルが発動すると、俺は自分に着いている奴隷の首輪を外して砕いた。
結菜に着いている奴隷の首輪に触れて無効化した後、外して握りつぶした。
「ありがとう」と結菜は笑顔で言う。
ドランさんに着いている奴隷の首輪も同じように外して破壊した。
「【中回復】」
ドランさんの体が淡く光、痣や傷が消えていく。
「ユウザキ君、助かったよ」
ドランさんにお礼を言われる。
「【身体強化】【魔法強化】」
「【超身体強化】【超魔法強化】」
結菜とドランさんが強化の魔法を使用する。
ドランさんは魔力量1万超えなのか。
「【水刃】」
ドランさんが鉄格子を魔法でバラバラに切断した。
結菜が向かい側の牢の扉を力で無理やりこじ開ける。
俺は向かい側の牢に入り、ミールさんとカールさんに着いている奴隷の首輪を外した。
「ユウシンさんありがとうございます。牢から出れる日が来るなんて」
「助かった。礼を言う」
ミールさんとカールさんがそれぞれお礼を言った。
「ドランさん、カーミルはどこにいますか!?」
俺はドランさんにカーミルの居場所を訪ねる。
「カーミルさんは恐らく、龍の聖域にいます」
「龍の聖域ってなんですか?」
「龍の聖域とは、龍の神がいるとされている場所です。入れるのは王子が結婚式を上げ、王へと即位する時のみです」
「ここからどれくらいで着きますか!?」
「僕が全速力で飛べば1時間ほどです」
「それなら、今すぐにカーミルを助けに!」
「ユウザキ君、落ち着いてください。結婚式開始まで後、5時間以上あります。それに僕もユウザキ君もカミユイさんも装備が何もない状態です。城から何か拝借しましょう」
俺はいつも紙装甲みたいな防具しか装備してないから、今着ている麻の服で問題はない。
でも、短剣は欲しいな。
ミールさんが「ユウザキ? カミユイ?」って誰みたいな顔をしていた。
「あれ? 俺達に名字があるってバレるとあまり良くないんじゃないですか?」
ドランさんに耳打ちをする。
「それなら、心配しなくていいよ」
どういう意味だ?
「ミールさん、それは俺達の名字です。俺は勇崎優心。勇崎が名字です」
「あたしは上結結菜です。上結が名字です」
「二人共貴族だったの?」
ミールさんは驚いた顔をしていた。
「いえ、貴族ではないですよ。召喚される前の居た世界は誰にでも名字があったんですよ」
「そうだったんですね」
ミールさんは納得したようだ。
「すいません。申し遅れました。僕はドランと言います。ユウザキ君とカミユイさんの仲間です」
「ワタシはカーミルの母、ミールです」
「カーミルの父のカールだ」
3人がお互いに自己紹介を終えると、ドランが口を開いた。
「今、王子の結婚式準備で城の戦力の大半は龍の聖域にいます。王子と王もいないので装備を集めるついでに城を制圧してしまいましょう」
城の中を把握しているドランさんを先頭に、牢のある部屋を出た。
ちなみに他の牢には人はいなかった。
少し進むと敵兵士と2名と出くわした。
「貴様ら何をしている」
「脱出は処刑だ」
敵兵士2名は剣を抜く。
「【龍水刃】」
ドランさんの魔法で敵兵士2名は胴の部分から綺麗に真っ二つになる。
真っ二つになった死体を見て結菜が青ざめていたので「大丈夫か?」と声を掛けた。
結菜は「うん、大丈夫」と言った。
ドランさんが死体から持ち物を物色する。
俺も死体への元へ行き、剣を拾う。
普段使っている短剣の倍以上の長さはあるが、使えない事はないだろう。
「ユウザキ君、その剣を少し貸して貰えませんか?」
俺は「いいですけど」とドランさんに剣を手渡した。
「【龍水刃】――これでどうですか?」
ドランさんは、剣を俺が普段使っている短剣くらいの長さに切ってくれた。
「ありがとうございます。もう1本お願いできませんか?」
「いいですよ――【龍水刃】」
「ありがとうございます」
ドランさんに短くしてもらった剣を受け取る。
これなら、さっきより大分使いやすそうだな。
「進みましょうか」と物色を終えたドランさんが言う。
廊下を曲がった先にいた敵兵2人の背後を取る。
「【龍水刃】」
「悪いな」
ドランさんは魔法で、俺は短い剣で首を斬り飛ばした。
2つの首が廊下に音立てて落ちる。
ドランさんが死体から手慣れた感じで物を取っていく。
10秒ほどでドランさん物色は終わる。
突然、結菜が吐いた。
「結菜!? どうした!?」
俺は結菜に駆け寄る。
「――人が死ぬところ見てたら気分が――」
結菜は胃の中の物を吐き出した。
俺は「大丈夫か!?」と結菜の背中を擦る。
「――ねえ、なんでみんな平気なの……」
結菜は絞り出すような声で言った。
ミールさんとカールさんは困った様な顔をしていた。
「カミユイさん、龍の国では自分と同じ村や町の者が王などからやってもいない罪を着せられ公開処刑など、日常茶飯事でした……」
結菜は「そんな……」と声を漏らす。
俺は少しの間、結菜の背中を擦り続けた。
「結菜、落ち着いたか?」
「うん、ありがとう。ねえ、1つ聞いていい?」
「どうした?」
「ねえ、優心はなんでそんなに簡単に人を殺せるの?」
俺を見てくる結菜の目は悲しそうだった。
「――――俺は、覚悟を決めたからだ」
「覚悟?」
「ああ、大切な者を守る為、助ける為なら容赦しない」
結菜を助け出す時に決めた覚悟だ。
「教えてくれてありがと」
結菜の悲しそうな目はもう無かった。
ドランさんが結菜に回復魔法を掛けると、俺達は再び城内を進み始めた。
「ドランさん、今ってどこ向かってるんですか?」
「宝物庫を目指しています。あそこになら良い武器があるでしょう」
それからしばらく歩いていると扉の向こうから声が聞こえてきた。
「痛い、痛い、助けて!」
「うるさい女だな。俺様が折角抱いてやって、気持ちよくしてやろうとしてるのに」
「ほどほどにしとけよ。オレも後で使うんだからな」
「痛い、痛いよ、助けて」
「分かってるって、おっ」
「もう終わっただろ。次はオレの番だ、替われ」
「分かったって、せっかちな奴だな」
「もう嫌よ、助けて!」
2人の男と1人の女の声だった。
会話内容から何が起きているのかはだいたい想像はついた。
俺は扉を蹴り飛ばした。
「「なんだ!?」」
中には裸の男2人が立っており、裸の女の子が1人酷いありさまでベッドに倒れていた。
裸の女は俺と同じくらいの年の見た目だった。
そして、首には奴隷の首輪が着いていた。
「ねえ、優心。剣を1つ貸して」
俺は結菜に無言で剣を貸す。
「あたしも優心と同じ覚悟を背負う――【加速】」
結菜は1人の男の心臓を剣で貫いた。
「なんだ!? お前ら!? 何を――」
「悪いな」
俺はもう1人の男の首を刎ね飛ばした。
「もう大丈夫だよ」
裸の女の子に結菜は手を差し伸べた。
女の子は結菜に抱きつき、大きな声で泣き出した。
しばらくして、女の子が落ち着いた後、俺は奴隷の首輪を外して上げた。
女の子は奴隷の首輪が外れた時、凄い驚いていた。
驚いていたのは、奴隷の首輪は普通、簡単に外せる物ではないからだと思う。
女の子はそのまま置いていったら危険な為、俺達に着いてくる事になった。
「ドランさん、宝物庫まで後どれくらいですか?」
「この先の広間を抜けたらもうすぐだよ――広間に大量の気配がある」
俺と結菜は「えっ!?」と声を出す。
広間に入るとたくさんの人がいた。
100人くらいだろうか?
下は5歳くらい、上は90歳くらいまでの見た目の様々な年の男女がいた。
剣やナイフ、槍などの武器を持っている者もいた。
防具は付けておらず、服は全員見窄らしい物だった。
そして、全員に奴隷の首輪が着いていた。
先頭に1人、鎧に身を包み、剣を装備した男がいた。
俺と結菜がドランさんを待っている時、襲撃してきた敵の先頭にいた男だった。
「赤子より弱い男ではないか。まあいい、『あいつらを半殺しにして捕らえよ』」
奴隷達が襲ってくる。
「嫌だ、戦いたくないよ」
「もう殺したくない」
「助けてくれ」
「俺はこんな事したくない」
「嫌、助けて」
奴隷達は無理やり戦わされている。
「ドランさん、俺が首輪を全部破壊します」
ドランさんは小さく頷く。
「ハハハ、赤子より弱い男、知らないのか? 奴隷の首輪を壊せば死ぬのだぞ」
俺は男の言葉を無視して駆け出した。
奴隷達の間を縦横無尽に駆け巡り、奴隷の首輪を破壊していった。
「体に自由が!」
「首輪が外れた!」
「助かった!」
俺は1分足らずで全員の奴隷の首輪を破壊した。
「どういう事だ!? なぜ奴隷の首輪が! お前ら! こうなったら――」
「悪いな」
俺は男の首を斬り飛ばした。
その後、奴隷だった人たちからめちゃくちゃお礼を言われた。
それから、宝物庫に入り使えそうな物を物色した。
俺は、良さそうな短剣を2本手に入れた。
宝物庫を後にした俺達は、城を完全に制圧した。
城の広場に出ると、ドランさんがドラゴンの姿になった。
俺はスキルが切れた為、結菜に抱えてもらい一緒にドランさんの背中に乗った。
そして、龍の聖域へと飛び立った。
待ってろよ、カーミル。
今、助けに行く!




