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013 バレットの用事

 朝日が昇り始めた頃。


 宿屋の食堂はまばらに客が入っており、各々食事をしていた。

 そのなかにテーブルで一人、ハンバーガーを食べる男がいた。

 くすんだ茶色の髪、ガタイの良い体、身長180はほどあり年は30歳程度――バレットがいた。


 バレットは食堂に来る前、優心とカーミルに置き手紙を置いてきた。

 中身は『オレは用事があるから夜まで自由にしてろ。休暇だ。バレット』と書いてある。

 部屋に掛かっている鍵は、特殊な器具を使い5秒ほどで開けた。

 魔法を使っても開ける事は出来るが、使えない場面もあったりするのでそのような器具を持ち歩いている。


(あいつら、抱き合いながら寝やがって。ああ、この仕事が終わったら娼館でも行くか。ユウザキの野郎はカーミルといちゃいちゃしてるから誘わなくていいか。てか、あいつ、あの状態で手を出してないとかさすが童貞だな)


 バレットの用事とは、明日、ゲースド・ロエリロードの屋敷に潜入するにあたって、必要な情報を仲間――秘密結社《完全なる平和》のメンバーから受け取る事である。

 情報のやり取りは周りから目立たないように行わなければならず、慣れていなければ分からない為、優心とカーミルは置いてきた。


 ハンバーガーを食べるとお金を払い、バレットは宿を後にした。


 バレットは宿から少し歩いた所にある建物――冒険者ギルドへと入る。

 中は、多くの冒険者で賑わっていた。

 依頼を探す者、パーティーを募集する者、併設された酒場で朝から飲んだくれてる者など様々だ。

 

 バレットは依頼を探す冒険者でごった返した掲示板へと歩いて行く。

 そして、掲示板で依頼を探すフリをする。

 1分ほどすると1人の冒険者が掲示板にやって来て、数秒ほどで貼られている依頼表を取る。

 その冒険者が依頼表を手に掲示板を離れようとする時、バレットに軽くぶつかるが一言もなく受付へと歩いて行った。


 その数分後、バレットは依頼を受けずにそのまま冒険者ギルドを後にした。



 時間はお昼時。


 バレットは宿屋の自分の部屋に居た。

 椅子に座っており、机には数枚の白紙が置いてあった。

 1枚の白紙を右手に取ると「【火球】」と魔法を発動する。

 左手に小さな火の球が生まれる。

 そして火球に白紙を近づける。

 すると地図が浮かび上がって来る。

 その地図をバレットは隅々まで確認する。


(でけえ屋敷だな。隠し部屋が複数に脱出用の地下道、緊急用の転移陣も2つずつ。至れり尽くせりだな。おい)


 バレットは、潜入経路、脱出経路、ゲースドの逃亡防止方法などを決めていった。

 それが終わると地図を燃やして処分する。

 他の白紙もあぶり出しで内容を確認し、把握したら処分した。


(やはり、何人か誘拐された女――ゲースドの性奴隷――が屋敷内にいるか。そちらの方は救出後、他のメンバーが色々とやってくれる手筈か。いや、やってもらわねえとそこまで手が回らねえよ。オレ達はカミユイの救出、魔導師とゲースドの始末、他の奴らは拘束すれば始末しなくても良いか。余計な奴は殺したくはねえが、任務が最優先だ)


 バレットのポケットに入ったギルドカードが一瞬振動する。

 それを取り出し確認すると、名前、ランク、魔力量以外の内容が表示される。


『ゲースド 異常なし』


 ゲースドを監視している《完全なる平和》の一員からの定時報告来た。

 バレットのギルドカードは改造してあり、遠くの人と連絡が取れる魔道具を内蔵している。


(後はオレの作戦を連絡したら、明日の夜まで待つだけだな)


「腹減ったし昼飯でも食いいくか」


 バレットはひとり呟くと部屋を出た。



 1人バレットは、テーブルに座っていた。

 ここは宿から少し離れた店だ。


 「お待たせいたしました」と店員が料理と飲み物を置く。


  ガシャン。


 バレットの腕が、テーブルに置かれた飲み物の入ったコップに当たり落としてしまう。


 店員が急いで片付けを始める。

 

「悪りぃ」とバレットは銀貨3枚を店員に渡す。


 店員は「ありがとうございます」と銀貨を受け取る。


 料理を食べ終えバレットは店を出る。


 それからバレットはしばらく街をぶらぶらしていた。


(作戦の連絡は終わってるし、そろそろ帰るか)


 昼食時、店員に渡した銀貨は中が空洞になっており、そこにバレットが考えて作戦内容の紙が入っていた。


 バレットのポケットが振動する。


(なんだ? まだ定時連絡には早いぞ。嫌な予感しかしねえ)


 ポケットに手を入れ、ギルドカードを手のひらに忍ばせる。

 そして、頭を掻くフリをして内容を確認する。


『緊急 ゲースドとカミユイだけ先に転移で屋敷に』


(なんだと!? まさか早くしたいだけで緊急用の転移を使ったのか!? 後一日で着くじゃねえか! なんで今なんだよ!?)


(クソ! さっさとあいつらと合流して乗り込まねえと! あいつらの位置は魔力量偽装の魔道具に仕掛けをしてあるから分かる――あっちか!)


 バレットは優心とカーミルがいる元へ走り出した。

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