第四話・事件発生
女ッ…女装…
お着替え中に、事件が起きた。
「レイスさーん」
「お?どした茜音」
茜音は無表情のまま黒い女物のドレスを掲げた。
「間違って女物のドレス持ってきちゃいましたー」
「は!?馬鹿だろお前ッ」
茜音は無表情という名の日常スタイルを変えないままで続けた。
「交換を要請しまーす」
「何で!!」
茜音はぐいぐいとドレスをレイスに押し付ける。レイスは頑なに拒否する。ここで初めて、茜音は眉間にしわを寄せるという表情変化を催した。
「だってー、レイスさん女顔だしー、美人だしー、似合いますって。ていうか似合いますお客様」
「誰がお客様だ。ふざけんな誰が着るか。俺は自分のお気に入りを着る」
「じゃあジャンケンですねー」
茜音はこぶしを突き出した。レイスも嫌々手を出す。心境は仕方ない、新人の一番最初のわがままだ、少しは聞いてやろう。だろう。しかし。
「じゃーん、けーん、ポンっ」
結果、レイスの負け。レイスは聞かなきゃ良かった、と後悔しながら泣く泣く着ようとしていた黒いシックな感じの格好良い衣装をわずかに微笑んでいる茜音に渡す。
クソッ何だその笑みは!腹立つ!←心境
青筋が浮かぶのをこらえ、レイスはドレスを受け取った。
「くそー、帰ったら返せよ、お気に入りだったのに…」
「似合ってますよ、レイスさん………プッ」
「嬉しくねぇし、しかも今笑ったか?笑ったよな?」
レイスは黒いドレスの下に短パンを履いて、さらに太股にベルトを装着、そこに愛用している剣をさして装備した。レイスにはドレスが女よりも似合っているかもしれない。さすが女顔美人。