第三話・出発ついでに魔程式
レイスはため息をつきながら横目で後ろの茜音を見やると、茜音と目が合い、微笑まれる。レイスはとっさに前に向き直った。
セントラルプレイスで、横幅の広い男、セルリックが待ち構えていた。
「ボス、連れてきた」
「おうよ、もう行けるぞ。夜だし、目立たねーだろ」
セルリックは足元のマンホールのような蓋を持ち上げて、外へと通じる穴を作った。
風が吹き込み、穴を覗き込めば暗い闇の空間の中、輝くにぎやかな城が見えた。
「不時着すんなよ?言って来い!!」
穴を覗き込んでいる二人の背中を早く行けと言わんばかりにたたく。二人は踏ん張って落ちることを免れた。
「ちょい押すなボス!!」
「落ちたら…綺麗?」
「何が綺麗なのか言ってみろ茜音」
レイスは苦笑いしながら息をついた。かすかにピキッとなりそうになる。
「そんじゃ、いっちょ言って来るか!」
レイスはホールから飛び降りた。暗闇の中、どんどん落下していく。そんな中で、魔程式を詠唱する。
「荒風、我包、静地降立、風換守術!」
魔程式の影響で、自然物で自由奔放であるはずの風がレイスを包み込んで、落下速度を和らげた。少し上空で、茜音もゆっくりと下りてくる。茜音は《飛行》とかかれた札を使用していた。
緩やかに落下していく二人は城の中庭に優雅に降り立った。
レイスは小さいバッグを腰から外す。パーティ用の衣装が入ったバッグを。
「よし、茜音。着替えるぞ」
「はーい。レイスさんの魔程式、すごかったですー」
「ま、あれと後は簡単なのしか出来ないし、これ使えないと一人で仕事いけないからな」
魔程式はそのまんま、魔法の方程式であり、属性や行動を示した言語を詠唱し自分の中にある程力を消費して、その属性や行動を具現化するという魔術のひとつである。
レイスは程力もそんなに無く、剣術に長けていたため、大して魔程式を覚えなかった。
お着替え中に事件がおきた。