第3話:春のおわり
春の原っぱはあたたかなにおいとおしゃべり好きな花たちでとってもにぎやか。
クスクス、クスクス、でもあれれ?
元気なみどりの葉っぱたちが少しいきおいづいてきたようです。
クスクス、ザワザワ、クスクス、ザワザワ・・・。
今ではすっかりみんなと打ちとけてきた王子は、今日もみんなの話に耳をかたむけています。
たんぽぽ仲間の陽気なおしゃべり、そよ風からの素敵なおくりもの、太陽から降りそそぐオレンジ色のあたたかな光。
ドムとナナも相変わらず、原っぱに来る二人の男女のうわさ話に夢中です。
そんな毎日の中で、王子は少しづつ元気を取りもどし始めていました。
それでも、どうしたら元の姿にもどれるのかはやっぱりわかりません。
ドムやナナも一緒になって考えてくれましたが、やっぱり全然わかりません。
王子は毎日みんなの話に耳をかたむけながらも、一体自分はいつまでこの姿でいなければならないのかと、心の中はいつも不安でいっぱいです。
そんなある日のこと。
一人のたんぽぽ仲間の頭を見た王子はとてもびっくりしました。そしてあわててドムとナナに聞きました。
「おいっ、彼を見てくれ!頭が白くてふわふわになっているぞ!」
しかし二人は全くおどろきませんでした。
「ああ、もうそんな時期か。そろそろこの陽気な黄色の頭ともお別れだ。白いわたげになって飛んで行かなくちゃ。」
とドムがやれやれと首をふると、ナナも、
「そうね、そろそろなのね。さびしいワ。」
といつになくしんみりとした顔をして、少しの間しずかにだまっていました。
王子はあせりました。
もしかすると自分もこのまま王子にもどることなく、白いわたげになって空に飛び立ち一生を終えてしまうのではないか。
そう考えると、王子は不安で不安でしかたがありません。
何日かたつと、ドムとナナの頭もすっかり白くてふわふわの頭に変わりました。
もはや黄色いあたまなのは王子ただ一人です。
ドムが言いました。
「さあ、おれたちはそろそろ旅立たないといけない。」
ナナもうなずきました。
「リッピ、あなたはまだ旅立ってはいけないみたいネ。何かやるべきことがあるのかしら?」
いつもより少しつよい風がざあっとふくと、つぎつぎと白いわたぼうしたちは空に向かって飛びはじめました。
「リッピ、一緒にいられて楽しかった!今度会うときは王子のすがたのきみと会いたいよ。頑張ってくれ!」
「じゃあね、リッピ。私たちはちょっと風にのってあの二人の恋の様子でもさぐってくるワ。また会うときはあの二人がどうなったか教えてちょうだいネ!」
そう言うと、ドムとナナは軽やかに風にのり、空へと旅立っていきました。
王子はなすすべもなく、空たかく飛んでいくみんなを見ていました。
そのすがたが、バイオリン弾きの男と歌うたいの娘を通りこして、もっともっと遠く、王子の知らないはるか遠くに消えていくまで。
ずっとずっと。
そして王子はたった一人、この広い原っぱに取り残されてしまいました。