プロローグ
草木も眠る静かな闇夜。
今宵はなぜかいつも顔を出すお月さまの姿も見えません。
大きな森の奥深くに、とある国のとある王様の大きなお城がありました。
「王子、リッピ王子!起きてくださいまし!このばあやも、これ以上あなたを庇うことは出来ませぬ。先ほど、あなたのお父様とお母様を中心に、検討会が開かれました。じきに判決が下されることでしょう。そうなれば王子、あなた様はこの国を追放されてしまうに違いありません!さあ、早く目を覚まして今のうちに弁明なさって下さいまし、心を入れかえて精進すると!」
そのお城の最上階の一室で、ばあやは深い眠りに落ちている王子を強く揺さぶりながら、必死に王子に事態を説明していました。
しかし、王子はいっこうに目を覚ます気配はありません。
「王子、早くしないと判決が下ってしまいます。早く、早く・・・ああっ、間に合わなかった!奥様と旦那様がこちらにむかっていらっしゃいます。もう間に合いません、ああ、何と言うこと!!王子、リッピ王子、ばあやに出来ることはもはや何もありませぬ・・・。どうか、どうかお元気で・・・」
純白の布団にくるまれながら、だらしなく胸元をはだけ、ばあやの必死の揺さぶりにもむにゃむにゃと反応なく眠り続けているこの王子。
顔立ちだけは恐ろしいほどに整い、陶器のように白く滑らかな肌と金色に輝く髪は、まるで天使かと見間違うかのよう。
そんな王子を見下ろし、ため息をつく王様とお后様。
かわいい我が子ではありますが、このままでは到底この国を任せることは出来ません。
何故なら、このリッピ王子。
その甘いマスクと王子のステイタスをいいように利用して、あちこちのお姫様やお后様にちょっかいを出しては問題を起こしているのです。
博愛学も動植物学も全く勉強せずに遊び回っている王子には、心優しい民と多くの自然を持つこの国を治めることは出来ません。
少なくとも今のままでは・・・。
王様とお后様は顔を見合わせると、決心を確かめ合うように小さくうなづきました。
ほー ほー
森からふくろうの声が聞こえています。
天使も魔物も現れることをためらうほどに、静かな静かな城の夜更けです。
ほー ほー
星さえも眠りにつくような深く澄みきった夜のとばりの中で、その声は不気味に、途切れることなく城の窓から忍び込んできます。
王子の部屋の外には、手をにぎりしめて両の目をかたくつむり、祈り続けるばあやがいました。
「ああ、リッピ王子!どうか、どうか、神のご加護を・・・」
その時。
王子の部屋が目もくらむほどの神々しい光に包まれ、おびただしい量の光と熱がその扉から溢れ出してきました。
そのまばゆさに、思わずばあやは扉に背を向けてかがみこむと、しわしわの小さな手で顔をおおいました。
そして小さくうめきました。
「ああ、まさか、そんなことが!」
部屋の中から王様の太く威厳のある声が聞こえてきました。
それはこの国に何千年も語り継がれてきた恐ろしい身代わりの呪文・・・。
「fパウィmcダjケウウィmddさぴるwんきgwsぽskf;slide、ダンデ・・・ライオーンッ!!!!」