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その92

「ほう。新米にしてはよく分かってるな。だいたいの者は分からないと抜かすんだが……まさか陰陽師と対峙したことが?」



「それはなかろう。新米が陰陽師と対峙すれば、素っ首跳ねられている」



「でもさっき近くで霊気を探知したよ?陰陽師も近くにいるのによく来れたね」



「えーそーなの!?じゃあ出会さなかった俺らは運が良かったなー」



 いけしゃあしゃあと……殴りたくなったがここは我慢。


 周りの賢陽鬼と緑弦さんが会話を繰り広げていく中、僕だけぽつんとしてる状態。お、置いてかないでくれ。


 そう思ったのも束の間、仏頂面賢陽鬼がごほんと咳払いしたことで静まりかえる。



「えー、ごほん。茶番はこの辺にして、本題は陽蘭様のお子様のことだ」



「おお、そうだった。今日の議題はそれが中心なんだったな」



 あの女、子供いたのか。あんだけ化け物染みた親を持つんだ、子供も生半可なものではないだろう。



「皆が知っての通り、陽蘭様は現在行方不明中のお子様を探されてる。ここ数年全く力を感じなかったがゆえに探すのを一時中断したよな。だが、一月程前にお子様の妖気を探知したとのご連絡が入った」



 一月前……ちょうどあの化け物夫婦が学園の森に侵入したころか。


 確かあのとき、誰かを探してる風だったよな。まさか子供を探しに来たのか?というより、学園の森に現れたらしいその子供の妖気なんて感じなかったがな。あの化け物夫婦並みの妖気なんて、微塵も感じなかった。


 あの場にいたのは大怪我を負って気を失っていた奥ヶ咲と様子を伺っていた僕と、それに柳しかいなかった。あとは少し距離を置いてこちらを見ていた雑魚妖怪くらいしか……あれ。



『私達はソウを探してるの』



 あの女が口にしていたソウという名前。まさか、そのソウってやつがあの女の子供か……?



「陽蘭様のお子様の妖気を探知していらしたんだよね?じゃあなんで見つけられなかったの?」



 仏頂面賢陽鬼の座る席のすぐ隣に座る男にしては高めの声の賢陽鬼が首を捻って問う。それには当然のように仏頂面賢陽鬼が答えた。



「妖気は一瞬しか感じ取れなかったらしい。陽蘭様自ら探されたが、お子様の妖気はその後探知できなかったと仰られた。まあ、陰陽師の集う場所の近くだったらしいからなにかの罠かとも言っていたが」



「え、まさか討伐されちゃったとか?」



「陽蘭様のお子様ともあろう方が討伐される訳がないだろう。……確証はないが」



 諦めの色を瞳に滲ませながらそう言葉を並べる賢陽鬼を僅かばかり凝視した。


 一瞬だけなんて、にわかには信じれない。人も妖怪も強い弱い関係なく力のある者は皆“気”を発している。気を感じればそこに何かいる。感じなければ何もいない。一瞬だけ存在し、消える“気”など有り得ない。


 表情に出さないようぐっとこらえて、続く言葉に耳を貸した。



「陽蘭様の旦那様が仰られたことだから9割方真なのだろう。あの方は力も探知能力も普通じゃないからな。だからこそ、なぜ一度探知した力がすぐ消えたのか原因を突き止めなければいけないんだ」



 意気込む仏頂面賢陽鬼に周りも賛同の意を表すが何人かはやや冷めた目で言った。



「でも原因究明しろなんて命令されてないよね?そもそもこの会議だってアンタが勝手に召集したんじゃん。私忙しいのにさー」



「ボクもー。陽蘭様に命令されたら動くんだけどねー」



 ようするに、主人自身に命令されなきゃ動かない忠犬か。


 妖怪にもこういった考えがあるのか、と思ってたら仏頂面賢陽鬼は全く動じることなく口を開いた。



「まあ、お前達はそうだと思ったよ。だが俺はなるべく早く原因を究明し、陽蘭様が元気になって下さることを望んでいる。たとえ勝手に行動したことであとでお叱りを受けても、陽蘭様のために何かしたいのだ」



 拳を強く握り締めて決意を言葉にしたそいつを見て、思わず目をそらした。


 ……こんな妖怪もいるのか。己の欲望のためではなく、誰かの願いのために自身の時間を費やすような、そんな……人と同じ事をする妖怪が。


 そんな者もいると知らされて、ひどく動揺した。



 妖怪は全て悪。滅するべき悪の象徴。そう教えられてきた。……けど、本当にそうなのか?もしかしたら僕が知らないだけで、誰かのために何かをしようと努力する、人と同じ愛を持ってる妖怪もいるのでは………



 陰陽師にあるまじき思考に至ったとき、黙って様子を見ていた緑弦さんが前に出ていった。



「その原因究明って何するの?」



 軽い口調で問う緑弦さんに視線を向ける賢陽鬼達。



「森か、あるいはガクエンとやらに潜入する。ちょうど妖気を感じた所が人の子が集う学舎の近くだったからな」



 その言葉に、今度は僕が強く反応した。


 その学園の生徒である僕の前で潜入すると宣言したのだ。早く始末しなくては……


 護符を懐から取り出そうと手を忍ばせるも、緑弦さんの手がそれを制す。



「あと少しですから」



 声には出さず口パクでそう伝えられ、もどかしい気持ちになりながらも手を降ろした。



「へー、森に学園を建てるなんて人間も馬鹿が増えたね。森なんか妖怪がたっくさんいるのにさー」



「いくら妖怪という存在が政府に認められても、一般人へは浸透してないんだろう。帰って都合が良い」



「ヨーランサマが、陰陽師の卵が通う学園だったって言ってたけどね」



 緑弦さんの言葉に驚愕の色を見せる賢陽鬼達。



「真か!?そのような面妖な学舎があるなんて……」



「うん。ヨーランサマがそんなこと言ってたよ」



 相も変わらず飄々とした態度だからか信じるか否か判断に迷ってるようだ。緑弦さんはこの状況を面白がってる。調べものしに来たんじゃないのか?もう結構な時間経ってるからどちらにせよ早くしないと……



 そんな僕の焦りを感じたのか、ついに本題を引っ張りだした。




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