表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
小さな変化、大きな変化
87/230

その87

「えー何?もう帰っちゃうの?もう少し話そうよ」



「今日は編入の手続きで来ただけですので、ここにいる理由はありません」



「君、普通科に編入したの?同じクラスだといいなー!仲良くしよーよ!」



「退いて下さい。寮に帰ります」



「道分かる?案内しよーか?」



「結構です。通して下さい」



 チャラそうな男数人の声と冷めた口調で右から左へ受け流す女の声。


 周りの男子を押し退けて温度差のあるやりとりが繰り広げられているところまで近づいてみると肩までのびた金色の綺麗な髪に私服の男子の中でただひとり普通科の女生徒の制服を身に纏う長身の女の子が小さなため息をもらしていた。


 その横顔は疲労感たっぷりでイラついてるようにも見える。



「ねぇねぇ、名前なんていうの?」



「わからないこと多いっしょ?俺らが手取り足取り教えよーか?」



「………っ、ですから……」



 手首を掴まれて心底嫌そうな顔をした美少女を見た瞬間に思わず行動してしまった。


 男数人と美少女の間に割って入り、美少女の手首を掴んでいた男の手を掴み引き離す。引き離された男は一瞬驚くものの不服そうにこちらを睨む。



「何だ?テメェ」



 無論そんな生ぬるい眼光でビビるはずもない俺は別の意味で顔が強張っていた。



 …………このあと、どうすりゃ良いんだ。



 あああもう俺馬鹿じゃん!!散々巻き込むなとか言ってたくせに自分から面倒事に首突っ込んでどーすんのさ!!ノープランだぜ!?なんでこんなイッケメーンな行動とるんだ自分んんん!!



「オイ、俺ら今その子と遊ぶ約束してんの。邪魔しないでくんない?」



 美少女をナンパしてたときとはえらく違うワントーン低い声で牽制しにかかる男達。



 さて考えろ。今俺がとるべき行動を。捻り出せ。この場を切り抜ける方法を。なんでもいい、何か……何か……



 脳内葛藤の末、ゆっくり女の子の手をとりおのずと口を開いた。



「こいつ、俺のだから」



 昔読んだ漫画の台詞そのまんま言ったけど、その、これ、あの…………うん。



 うあああああやっちまったあああああ!!!



 頭真っ白のまま美少女の手を引いて走り出す。



 背後から「なんだ彼氏持ちかよ」と残念がってる男達の声が聞こえた気がしたがそんなの頭に入らず、一目散に逃げてしまった。



 マジで何やってんだ俺………




 足の赴くままに走っていたら誰もいない下駄箱まで来てしまった。だが俺の脳内ではどうしようの一言だけがぐるぐる駆け巡ってそんなのお構いなしにまだ走り続ける。



「あの………」



「あああ何やってんだよ俺ぇぇぇ」



「あのっ!」



「はいぃ!?」



 ハッと我にかえり足を止める。いつの間にこんな人気のない場所まで来てたんだ。



 後ろをバッと振り返れば、俺に力強く握られた手をちらりと見て苦笑する美少女の顔があった。



「あっ、ごごごごめん!!痛かった!?」



 慌てて手を放す。美少女は走ったせいで乱れた髪を滑らかな動作で直した。



「いえ、助かりました。ありがとうございます……」



 目が合ったと思えばじーっと見られて目線が外れない。え、何?やっぱあんな助け方はねーよって思われた?



「………あの噂、本当なんですか?柳 爽さん」



「えっ噂?」



「知らないんですか?学園最強の陰陽師を牛耳ってる青い髪の普通科男子の噂」



「なにその噂!?」



 明らかに南雲と俺のことだよな。一緒にいるだけなのに牛耳るとか!ただ単に仲良くしてるだけなのに何故そんな噂が立つんだ!?普通科の一生徒と最強陰陽師だからか?そうか、これが格差か……



「え?違うんですか?」



「全く違うから!南雲……その陰陽師とは仲良しなだけだから!」



 まさかそんな噂が立っていたとは。いつからだ?まさか南雲と仲良くなった当初からってことはないよな?



「………そうでしたか。失礼しました」



 微笑とともに背を曲げて謝罪された。だがちらっと見えた顔はどこかホッとした静かな微笑だった気がした。それにん?と首を傾げる。


 そして服の袖からちらりと見えた腕時計に目を通す美少女に違和感を覚えた。



 その笑みにその仕草、割と最近どこかで見たような……



 些細な違和感を覚えて微かに首を傾げる俺に気付く素振りも見せず、少しばかり渋い表情になる。



「先程は本当にありがとうございました。寮に行って荷ほどきをしなくてはいけないので、失礼します」



「あ……そっか、編入生なんだっけ?俺も先月編入したばかりだから、なんか親近感沸くなぁ」



「柳さんでしたらすぐに友人も多くできたのでしょうね。困ってる人を放っておけない優しい方ですから」



「そうでもないと思うけど……あ、俺も用事があったんだ。じゃあまたね」



 早いとこ体育館に行かないと高築にまた呆れられる。お互い背を向けて歩きだしたとき、ふと思いいたって振り返る。



「そういや、なんで俺の名前知って……」



 しかし、数歩しか歩んでないはずなのに美少女の姿はどこにも見当たらなかった。



 俺、名乗った記憶ないんだけどなぁ。聞きたかったのにもういない。まあ同じ普通科ならどこかで会うよな。そのときに聞けば良いか。



 改めて体育館に向かう。まだ男子が群がってるかとも思ったが美少女もいないのに屯してる訳もなく、体育館や校庭に散り散りになっていったあとの静かでどこか冷たい空気だけが残されていた。



 俺も早く行かないと高築にまた何か言われる。何故かそんな予感がする。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ