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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
小さな変化、大きな変化
86/230

その86

「…………なんでそんなお気楽思考なのよ」



「ごめんねー。俺こういうやつだから」



 へらっと笑う俺から視線を外して唇を噛み締めるがそのまま腰へと手をまわし、銀色に光り輝くものを抜き取って俺の心臓付近目指して一直線に跳んできた。



「わかってるわよそんなことぉぉぉ!!」



「あっぶなあ!!」



 辛うじてスレスレで避けた。だが避け方がまずかった。地面に倒れ込み、教室で南雲が静乃さんに殺されかけたときと同じく静乃さんのナイフが俺の首もとと心臓を捉えていた。


 殺られる!と思った瞬間目にうつったのは瞳に涙を溜めて悔しげに歯を食い縛る静乃さんだった。



「わかってるわよ!いつまでもこのままじゃないことくらいわかってる!でも“その瞬間“は今じゃないの!轟木さんを見ても何もないってことは、あのときのキヨちゃんが現実を拒んでることを意味することでもあるわ!それくらい察してよぉ!!」



 殺す気など微塵も感じない、地面への単調な攻撃が俺の頭の横で繰り返される。


 つまり、余計な刺激を与えないでほしい、って言いたいのか。


 別に南雲に記憶が戻るように仕向けたりしないのになあ。ただ気長に待とうぜ的なお気楽発言しただけなのに。



 しばらくするとようやく我にかえったのか、武器をしまった。



「取り乱してごめんねぇ。キヨちゃんのことを真面目に考えてなさそうな態度だったからイラッてしちゃった」



「あ、うん、こっちこそごめん。南雲に無理に思い出してほしいとか思ってお気楽な発言してたわけじゃないことは信じてほしい」



「てゆーかぁ、キヨちゃんの話題だと他の子は大抵びくついてるから、君のお気楽な発言は逆に信用に値するよ」



 他の子にも南雲と轟木のこと話したのか?いや、話してないだろう。こんなデリケートな問題。てか南雲元々ぼっちだしね。まさか静乃さんも……いや、考えないようにしよう。


 溢れ出た殺気もすっかり鳴りを潜め、おとなしめにふふっと笑う静乃さんは案外普通の女の子だ。普段からこの態度なら南雲にも脈はあったのに。



「でも本当にごめんねぇ。キヨちゃんと仲良くしてる人は君以外いないから、周りのあらぬ噂に惑わされて他の子みたくキヨちゃんから離れたら悲しむかと思って早いとこ打ち明けたんだけど……」



 と、そこで言葉を切り、数歩歩いて霊能科と普通科の校舎の間のちょうど真ん中にそびえ立つ時計塔を見やる。ちょっと前まで術の練習のために俺と南雲が待ち合わせてたとこね。時計が上すぎて最初ただの柱だと思ってたアレね。



 俺達が今いるここは霊能科校舎の裏。普通科の校舎からはもちろん見えないし、こちらからもひょっこり顔を出さないと外の様子はわからない。今まさに静乃さんはひょっこり顔を出してる状態だ。



 再び顔をこちらに向けると少し困ったような笑みで頬を掻く。



「思いの外長時間拘束しちゃったね。もう一時間以上経ってるよ。どこか行くんでしょ?時間大丈夫?」



 俺も時計を見ると、確かにかなり時間が経っていてびっくりした。高築もさすがに心配してるかも。



「あー……多分大丈夫。術の練習で体育館に行くとこだったんだけど、土日ならいつでも使えるんでしょ?」



「先生に許可を貰えばね。そういや君、普通科だっけ」



「うん。南雲に特訓してもらってようやく少ーしだけ風を操れるようになったんだけど、まだ全っ然だからさー」



 術のアドバイスは完璧なのに何故自分が使えないのか不思議だとよく南雲に言われたのを思い出して笑いながら言う。



 静乃さんは少しびっくりしたような表情でこちらを見た。



「へぇ~!普通科の生徒が霊力を扱えるようになるのはほんの一握りしかいないって聞いたことあるけど、能天気でお気楽で何も考えてなさそうな君が霊力を使えるなんてねぇ」



「さりげなくぐさりとくる言葉を使わないで下さい」



 能天気でお気楽なのは認めるけど何も考えてなさそうってヒデェ。



「まあでも今の話はキヨちゃんには内緒でよろしくね。もし言ったらバラバラにするから」



「えっ、何を!?」



 今一瞬目が怖かったんだけど!?俺の何をバラバラにするの!?



「引き留めてごめんねー。もう行って良いよー」



 小さく手を降ってさよならの合図を送られる。謎と恐怖が深まっただけな気がしないでもない。だが「ちょっと待って!」と引き止められ、声のした方を振り返る。



「君、名前は?」



「ああ、名乗ってなかったね。じゃ改めて、俺は柳 爽。病弱って聞いたけど大丈夫なの?」



「私も改めて、玉頼 静乃よ。定期的に薬飲んでるから、激しい運動しなければ大丈夫。じゃ、今度こそじゃあね」



 南雲との一連のやりとりは激しい運動の範囲外なのか。


 沸いた疑問を心の内に押し込み、俺も同じく手を振って普通科の校舎へと歩を進める。その場に留まった静乃さんがなんとなく気になり、霊能科校舎裏に目をやると静乃さんはいなくなってた。寮に帰ったかな。


 今日の昼には病院に戻っちゃうんだよなー……なんかちょっと寂しい。


 静乃さん可愛かったな。南雲に対して真っ直ぐで、よっぽど好きなんだな。……愛情表現は方向性を変えた方が良いけど。



 でも、南雲の武器を狙ってるのも事実っぽいしなー。なんであんなに南雲の武器に拘るんだろ?他人の霊力が籠められた武器を使っても自身の霊力は上がらないのに。



 職員室で先生に許可を貰い、体育館へと急ぐ。



「ん……?なんだ?あの人だかり」



 体育館へと続く廊下に人だかりがあった。主に男子が何かを囲むように行く手を阻んでいる。これじゃ体育館に行けない。


 なんとか退いてもらおうと声をかけようとしたそのとき、聞き馴染みのない声が聞こえた。



「すみません。もう寮に戻るので通して下さい」



 透き通るような凛とした声。


 その声が耳に入ったら、自然と足を止めていた。




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