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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
小さな変化、大きな変化
83/230

その83

エブリスタ版にはない静乃視点のストーリーです。

〈静乃side〉



 久しぶりに制服を身に纏い、霊能科の校舎を鼻歌混じりに軽い足取りで歩いていく。


 普段ならここまで上機嫌になることはない。


 だってずっと病院にいるんだもの。楽しみのひとつもなければ滅多に外出許可も出ない。病弱な自分自身が疎ましく思えるくらい、娯楽もなにもない。本当になにもない。


 真っ白な風景に包まれてベッドで大人しく寝てるのはもう飽き飽き。



 だから、抜け出してきちゃった。てへ。



 もちろん後で担当医の人と看護師さん達にどやされるのを覚悟の上。


 少しくらいいいでしょ。最近は発作もないし、比較的調子もいいんだから。


 誰に言うでもなく言い訳をする。


 あ、先に言っておくと、体調が安定してるからってだけでここまで機嫌よくならないわよ?


 私が上機嫌になるのは決まって彼に会うときだけ。



 ガラッ!と下手したら扉が外れるくらいの馬鹿力で思いっきり自分の教室の扉を開く。


 目当ての人物はすぐに見つけた。


 窓際の一番後ろでつまらなそうに前を向いている彼。


 少し長めの黒い髪を後ろで縛って、頬杖をついている男。


 彼を遠巻きに見てひそひそ話をしてるクラスメート達を視界に入れることもなく、私は彼に飛び付いた。



「キーヨーちゃぁぁぁん!!」



 ああすんごい久々のキヨちゃんだわ!2ヶ月も会えないなんて拷問よ!キヨちゃんもなかなかお見舞いに来てくれないし!仕事で忙しいのは分かるけどもっと私に時間を割いてほしいわ!


 まるでドラマのワンシーンのように熱い抱擁を……しようとしたら、キヨちゃんが窓から飛び降りた。


 キヨちゃんに抱き着こうとした両手が空振りに終わる。


 んもう!キヨちゃんひどぉい!可愛い幼馴染みに抱擁のひとつも許さないなんて!


 ……あ、もしかして追いかけっこしたいのかしら?キヨちゃんったら案外子供っぽいところがあるから有り得るわ。


 ふふふ。いいわ。私が鬼ね?


 最近は身体の調子もいいし、少しくらい走っても大丈夫よね。



「待ちなさいキヨちゃーーーん!!」



 キヨちゃんとの楽しい楽しい鬼ごっこが始まった。



 普通に走るだけじゃ捕まえられない。


 越えられない男女のリーチの差もあるけど、虚弱体質のせいで運動をあまりしてこなかったからどうしてもその差は埋められない。


 だからあの手この手でキヨちゃんを仕留めようと躍起になった。


 途中でキヨちゃんも走行しながら応戦しだしたけど、その手に持つ刀を見た瞬間瞳がきらりと輝いた。


 それはキヨちゃんがいつも使ってる刀。


 昔少しだけ使わせてもらったことがあるけど、私との相性がすこぶる良かったのよね。手に馴染んで、術も使いやすくて、それ以来何度もキヨちゃんの刀が欲しいってねだってるけど、結局貰えなかった。


 けどどうしても諦めきれなくて何度も刀を奪取してはキヨちゃんの目を盗んで使ってた。


 ここ数年で実力に差が開いちゃって触ることすらできなくなったけど、あの刀は喉から手が出るほど欲しい。


 なにがなんでも欲しい。


 その気持ちが如実に現れちゃって、あの刀を見ると半分我を忘れちゃうのよね。


 今みたいに。



「キヨちゃーん!!その刀寄越しなさーーい!!」



 いつの間にか普通科の校舎にまで足を運んで刀を、もとい刀を持ったキヨちゃんを追いかけた。


 教室から出てきた教師が乱闘しながら走行する私達を止めようとしたけど知ったこっちゃない。


 けど、キヨちゃんがふと速度を緩めて何かを叫ぶ。


 私に向けてじゃない。


 やなぎって誰?



 内心首を傾げつつもキヨちゃんが速度を落としたことで一気に距離が縮んで、あと少しで手が届きそうなところでキヨちゃんが目の前から消えた。


 正確には教室の中に飛び込んだ。


 私も続けて乱入し、キヨちゃんの身体を押し倒す。



 ふふふふ。もう逃がさないわよ。



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