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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
小さな変化、大きな変化
77/230

その77





 豪邸のような邸の御叶神の部屋で正座して俯く風の戦神と狐の神使。



「……親バカ、過保護もほどほどにしてほしいなぁ」



 怒りで我を忘れぬよう精一杯抑えた声が部屋に響き渡れば、風の戦神もとい嵐武神はびくりと身体を震わせた。



「神の秘め事が第三者に漏れれば神の存在ごと記憶を消す。結果、秘密は守られる。だがそれ以外の記憶を消すことは禁ず。そういう掟だよな?」



「神の秘め事以外の記憶は消してないぞ!……ちょっと本気だったけど」



 嵐武神がぼそりと呟くと御叶神の冷ややかな視線が一点に集中した。



「結果だけ良くても駄目だろう?問題は、ほんの少しでも消そうと思ったことだ」



「……神も人と同じで感情はあるんですから、そんなに責めるのはどうかと思うのですが」



 問題を起こした神の神使だからという理由でいつまでも正座させられるのは嫌だったのか、珍しく主を庇う口振りで抗議する。それを聞いて少し冷静になったのか、ひしひしと伝わる威圧が和らいだ。



「そうだな。生き物は皆心がある。それは当たり前のことだ……だがしかし!その心は善と悪がある。悲しいことに悪の心はキッカケがあれば無限に広がってしまう危険なものだ。たとえ善だと信じてても端から見れば悪ということもあるだろう。つまり何が言いたいかというと……」



 冷ややかな視線から180度変わってにっこり微笑む御叶神。キラキラしたオーラを張り付かせて優しそうに微笑んでも嵐武神にとってはどす黒いオーラを撒き散らす鬼神にしか見えなかった。



「子供のために行動して掟破るようなマネは絶対すんなよってこと☆」



 無邪気な子供が木刀を振り回して遊ぶように本物の刀を嵐武神の正座してる足スレスレに思いっきり突き刺した。



 それは掟を破れば本当に刺すぞ、の意だった。



 白狐はやや顔が白くなり、嵐武神に至っては目が死んでいる。



 畳から刀を抜いて鞘に納めると黒いオーラは何処へ消え、いつも通りの御叶神に戻った。



「まあ俺からのお叱りはそんだけ!帰って良し!」



 そしてさっさと部屋から追い出されてしまう二人。




「仕事はサボるくせに掟にはうるせーんだから相変わらず……」



「本当に掟が関わると別人ですね。殺気皆無で笑顔で武器を振り落とすとは思いませんでしたよ。嵐武様、今までよく無事でしたね」



「おい待て、その言い方なんかムカつくぞ。俺が掟破り常習犯だとでも言いたいのかお前は!」



「あくまでイメージです。仕事をサボるからそう見られるんですよ」



「くっそ言い返せん!」



 嵐武神邸につく頃には言葉のキャッチボールも終盤に近づいていた。



「……何故爽を学園に戻らせるよう仕向けたのですか」



 だが白狐のその一言で再開されてしまった。


 白狐の問いに苦虫を噛み潰した顔をして数秒後、白狐から視線を外した。



「……無理矢理ここに留めても、あいつは本心から喜ばないだろ」



「だからって学園に復学させるなんて……」



「本当はよぉ、ああ言えば最後の最後には俺達を選んでくれるって確信に近い気持ちがあったんだよ」



 白狐の言葉を遮って本心を打ち明ける嵐武神。



「でも、俺よりあっちを選んだってことは、それだけ大切ってことだよなぁ」



 玄関先で足を止めて物思いにふける嵐武神はどこか寂しそうな表情をしている。



「何のんきなこと言ってるんですか。爽に大切なものができたとしても、霊能科と……妖怪と関わることに変わりないのですよ?そんな危険な場所にいつまでも爽一人居させられません」



 嵐武神に対して優しい言葉を投げ掛けるでもなく同じく物思いにふけるでもなく、爽に対して一見冷たいようで心配性な言葉をならべている。


 『妖怪』という単語に反応した嵐武神は振り返った。



「昔から何度も言ってるだろ。ずっと神界に留まらせるのは無理がある。遅かれ早かれ妖怪と関わることになるって。……俺らがどんなに必死に爽を守っても、それだけは変えられない」



 白狐は何も言えず口をつぐんでしまう。


 肝心なときに守れないのはなんてもどかしいのだろう、と思っていることだろう。それを察した嵐武神は良いこと思いついたと言わんばかりに意地の悪い笑みを浮かべた。



「なあ白狐。お前確か分身術使えたよな?」



「は?ええ、まあ使えないことはないですが……」



「前俺が人間界に行くっつったときは猛反対したよな?」



「そりゃあ……仕事を放り出すのは駄目ですし」



「分身術を長時間使える自信はあるか?1ヶ月とか、1年とか」



「無論朝飯前です。……って、さっきからなんの話をしてるんですか?」



 話がいまいちまとまっておらずちんぷんかんぷんになってきたところで質問すれば、嵐武神の口元は弧を描いた。



「お前、分身術使って爽を守ってこい!」



「ナイスアイデア!と思ってるとこ悪いのですがあの学園妖怪が入ったら警報が鳴るので無理ですよ。仮に入れても私のことを知る者もいますから、どちらにせよ難しいでしょう」



 嵐武神の希望は儚く散った。



「くっそー……警報だけならコネでなんとかしたのになぁ。ほかにねぇのか?爽をそばで守る方法」



「自分で撒いた種なのに焦るんですね……」



「ったりめぇだろ!ちょっと読みが外れただけで、爽を思う気持ちは揺るがねぇ!てなわけで作戦会議すっか」



「仕事を投げ出す口実を作るのは止めて下さい。ですがその作戦会議には参加します」



 嵐武神自身、別に仕事どうこう考えてなどいないが白狐も白狐でちゃっかりしている。


 その後二人で嵐武神の部屋で仕事ほっぽりだして作戦会議とやらを開いたのは言うまでもない。




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