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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
妖怪討伐 IN 白帝学園
62/230

その62

 南雲が符を構えたことで殺気立つ妖怪達。



「てめぇが俺の子分を消しやがったのか……クソ陰陽師が!」



「ハンニン!」



「ケシズミニシタヤツ!」



 どうやら流暢に話せるのはリーダー妖怪だけらしい。後ろの二人はカタコトで日本語の意味を理解しきれているのか怪しいもんだ。



「だったらどうした。妖怪は皆消されるべき存在なんだから、消し炭にして何が悪い?」



 南雲、目ぇ据わってる。符を持つ手がプルプル震えてる。そんなに妖怪が嫌いか!



 白狐も元は野孤の妖怪だ。今は神使だけど妖怪なのには変わりない。なのにそこらの妖怪よりもずっと優しい。だから俺は、悪い妖怪ばかりじゃないんじゃないかなぁって思う。


 まあこの学園に来てからは悪い妖怪しか見てないけどね。南雲は悪い妖怪しか見たことないんだろうな。討伐するたびに忌々しそうに睨むし。いつかは良い妖怪もいるってこと教えてあげたいな。



 ……って。そうじゃねぇよ。早く結界から出ないといけないんだよ。



「南雲、あとはまかせた」



「ああ。後ろからなら抜け出せるぞ」



 こういう事態になると痛感するなぁ。


 自分が無力だってことを。



「じゃあ俺はバイナラしまーす……」



 こそぉっと南雲の後ろから遠ざかり、結界の中心からどんどん外に向かう。


 あと少しで安全な結界の外に出れる、というところで、それを阻むひとつの影が。



「オイオイ、何逃げようとしてんだあ?」



 リーダー格妖怪にも似ている巌のようなガタイのデカさの三つ目妖怪が行く道を塞いでいた。てか周りを見渡せば1つ目・三つ目妖怪がうじゃうじゃいる。最悪なことに囲まれていた。


 うわー走ればよかった……



「逃げたってことは心当たりがあるってことだよな?俺の子分を殺したのはてめぇか」



「めめめ滅相もない!俺は断じて何もしてない!」



 わーすんごい睨んでる。威圧も半端ない。けど残念だったな。神様の独特な威圧に日々耐えてきた俺の精神はそんなチンケな威圧にびくりともしないんだよ!



「どっちにしろお前らはここから出れないぞ。おとなしく僕に討伐されろ」



 南雲さんんんん!!爆弾発言ー!!事実そうなる運命だけども!わざわざ自分から言っちゃったら………



 一人おろおろしてる俺の横をものすごい勢いで何かが通過した。


 左の頬には一筋の赤い線。そこからつぅっと流れる鉄の臭いのする赤い液体。



「覚悟はできてんだろうなあ?」



 ほらこうなるー!!



 いつの間にやら目の前の妖怪の手には刀らしきものが収まっていた。なんかこう、ぐにゃって曲がった変な形のやつ。



 それを俺の喉元に突き立てて……って俺ぇー!!?南雲の台詞じゃん!!俺なんも言ってないよ!?



 なんで怒りの矛先がこっちに向くのかな。理不尽だわ。


 とか思ってる間にもぐにゃぐにゃ刀の攻撃は止むことを知らない。南雲と少しばかり距離があるため助けを求めることも難しい。



「……っ、柳!」



 三つ目妖怪の斬撃を危なげにかわしていると、南雲の悲痛に満ちた叫び声が耳に届いた。


 後ろに大きく飛び退くと同時に南雲の方を見ると、どうやらあちらも戦闘体勢に突入していたようだ。


 1つ目妖怪数人を相手に苦手な符のみで太刀打ちしようと奮闘する南雲の姿が見えた。


 だが苦手な術しか使えないためかなり苦戦している模様。



 ちなみに俺の制服のポケットには南雲から没収した雷の符がある。本来なら討伐中に雷の符を渡すなんてしないつもりだったのだが異常事態なためさっさと渡してこの場を納めてもらおうかと思ったのだけどもぉ!!


 距離がぁ!!開きすぎてるぅ!!この距離じゃ符を飛ばしたとしても届かないぃ!!



「さっきから何言ってんだお前。変な奴だな」



「気にしないでぇ!!」



 攻撃避けながらの実況でしたー。



「うわゎわわっ!?危なっ!!」



「逃げんな!」



「逃げるわ!!」



 右上から左上から降り下ろされては避けるの繰り返し。南雲みたいに身体能力が高くないからかなりスレスレで避けてる。



「ちっ、ちょこまかとウザイ奴だな……だから人間は嫌いなんだよ!」



 今度は左下から切り刻もうとしてきた。ワンパターンだった今までの攻撃と違う動きだったため動作が少し遅れ、制服の裾が切れてしまった。



「コソコソしやがるし姑息な真似するし、小器用に立ち回って常に誰かを見下してる。俺ぁな、弱いくせに粋がる人間が大嫌いなんだよ!」



「えー、なにもそこまで言わなくても!良い人間もいるじゃん!(……多分)」



 人間の中で育ってない俺にとっちゃ未知なる世界だが。



「偽善者ばっかりだ……よっ!」



「うわぁっ!?ひぃっ!!」



 単純なワンパターンの攻撃だったのにいきなり横から下から上から背後から刺してきた!恐い!図体デカいのに俊敏で恐い!!妖怪か!………妖怪だな。うん。俺ら妖怪相手にしてんだよな。



「荒ぶる魂を鎮め、戒める鎖となれ。蓮水境(れんすいきょう)!」



 ブレザーの内ポケットから出した小さな小瓶の中身をパシャッ、と妖怪達に向けて放った。だがいかんせん、水系の術は南雲が2番目に苦手とする術。それに加え難易度がほどほどにあるためか、すぐには変化が現れなかった。


 水をかけられた妖怪達もしばしの間ポカーンとしていたが、何も起こらないことを良いことにゲラゲラと笑いだした。



「チカラ、ナイ!」



「ノウナシ!」



「オンミョウジ、コワクナイ!」



 南雲を嘲笑い、カタコトでもわかるほどの嘲笑の声をあびせる妖怪達。



 ………………うん。あいつら、命ねぇわ。



 俺が瞬時に悟ったまさにそのとき、妖怪達にあびせられた水が滴り落ちて、それら総てがぐにゃりと曲がった。



 蓮水境。


 それは水で形作られる強固な鎖を操る術。


 今南雲が放った術は難易度がまあまあなちょっと難しいやつ。だから簡単に風を操る術よりも時間がかかってしまったのだろう。


 だが時間はかかってもさすがは南雲。


 術が完成してからはすごい。



 滴り落ちた水がみるみるうちに蛇の如く妖怪達に絡み付いた。慌てふためく妖怪達をギリギリと締め上げる。


 本来ならこれだけで済む術なんだけど……



「力がない……?能無し……?誰に向かって言っている」



 黒ーいオーラの南雲たんがいましたー。おこりんぼでーす。



「おい、お前ら!?どうした!!」



 俺を散々切り刻もうとしていたリーダー格妖怪もその光景に動揺を隠せないでいた。


 あんだけブンブン振り回していた刀を持つ手がピタリと止まり、南雲と仲間の妖怪達を凝視している。南雲はそんなことお構い無しに、さらに締め付ける力を強める。


 抵抗しても無駄だと言わんばかりに水は妖怪達の身体を締め上げ、次の瞬間。



「「ヴグァァァァァッ!!」」



 妖怪達の身体が一瞬にして弾け飛んだ。


 肉塊と血が散り散りになる。なんてグロいの……



「僕を嘲笑し、侮辱するということは、僕のアドバイザーとなってくれている柳も侮辱するということだ。友人を侮辱されて、僕が黙ってる訳がない!」



 凛とした佇まいでそんな嬉しいことを言ってくれちゃう南雲。あれ、なんかちょっと胸がジーンとなっちゃった。



「僕と僕の友人を侮辱したんだ。それなりの覚悟はあるだろうな?……まあ、覚悟がなくても結果は同じだがな」



 いまだ湿りのある地面からすぅっと先程南雲が妖怪達にかけた水が小瓶へと戻っていく。なんとも奇妙な光景。



「くっそ……!多少はデキるやつみたいだな」



「仲間の心配はしないのか?妖怪らしい非情な思考だ」



「非情で結構!それが俺たち、妖怪って種族なんでね!」



 南雲の言うとおり、ただの肉塊へと消えていった仲間への情は皆無らしい。


 だが俺よりも南雲が危険と察知したのか、いつの間にやら南雲VS三つ目妖怪の図が出来上がっていた。



 他の妖怪が転移してくることもなく、二人のバトルが始まった。


 三つ目妖怪の振るう短くも長くもない中途半端なぐにゃぐにゃ刀を素早い動作でかわす南雲。俺と違ってカッコいいかわし方だ。


 だが三つ目妖怪も負けじともう一つの刀を背中から抜いた。おそらく衣服の中に隠して持ち歩いてるのだろう、見た目では刀を持ってるなんて分からない。



「早いとこここから出してくんねぇと、痛い目見んぞ」



「出す訳がないだろ。僕は陰陽師だぞ?討伐すべき妖怪の集う森にお前をやすやすと帰すと思うか?」



「………はっ、思わねぇな」



 ぐにゃぐにゃ刀と普通の短剣を器用に使って南雲に斬りかかる三つ目妖怪。だけど、南雲に傷を与えれるかって質問されたら余裕で「いいえ」だ。


 だって、ほら。



「雷鳴轟く(いかずち)となりて舞い降りよ!雷光召(らいこうしょう)!」



 符を使わなくても雷系の術使っちゃうんだもんね。マジ符を取り上げた意味。


 右手を真っ直ぐ天に伸ばして詠唱してるが、俺の聞いたことのない詠唱だ。符を使わない術用かな。てか符がないと陰陽師の術って言うより魔法のように見えるのは俺の気のせいかな。気のせいだな。


 南雲が伸ばした手の先には黒い雲が立ち込めていて、そこから眩い光の柱が三つ目妖怪に一直線に延びた。



「なっ………!?さっきの水とは比べ物になんねぇ!」



 光の柱は見事三つ目妖怪を呑み込んだ。



 結界は壊れてない。同じ術者の作った術同士は反発せず、両方壊れない仕組みなのか。知らなかった。




 ………やっぱり、凄いなぁ。



 荒々しい力の流れは変わらずとても危ういものだけど、やっぱり凄い。


 俺も、あんなふうに力を解放できるときが来るのかな。



 羨望の眼差しを南雲に向けているそのとき、迂闊にも俺は忘れていた。



 今いるここが妖怪いつでもウェルカム状態の結界内だってことを。




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