その29
場所は変わり碧を貴重とした建物……男子寮の前。俺は口をあんぐりさせて呆けていた。
「……これまたデカいな」
それしか言いようがない。
だって校舎より大きいんだよ!?でかけりゃ良いってもんじゃねぇだろ!
まあそれはさておき、ちゃっちゃと自分の部屋に行こう。どんな部屋か気になるし。
……ていうのは建前で、自分の部屋に入ったらゴロゴロしたい。
え?学園長に言われたこと?
探検なんかしたくないよ。こんなだだっ広いとこで訳も分からず探検したら迷子になっちゃう。
さっきのはただの善意と好奇心であそこに行ったのであって、場所がすぐに判明したから行っただけ。
そのせいでどっと疲れたけど…精神的に。
常に見張られてる訳じゃないし、良いよね!
よし決まり。さあ行こう。
光に反射されるとエメラルドグリーンに変色してさらに綺麗に見える碧い建物の中に入る。
内装も隅々まで碧一色だった。
天井にはシャンデリアが飾られ、呪符が胸元に張り付けられている金色の猫がカウンターの両端に設置されている。
俺はカウンターにいる女性に声をかけた。
「あの、今日編入してきた柳 爽です。自分の部屋に行きたいんですけど……」
カウンターのある学園の寮って確かカウンターにいる人にこうして聞いたほうが良いんだっけか。
学園モノのマンガにそんな感じで描いてあったはず。
……またマンガですね。資料としては抜群な才能を発揮するけど、よくよく考えたらこれって人が聞いたら箱入りな人間がどこにも行けなかったが故に2次元を頼りに外に出たとかそんな感じの発言に聴こえなくもないのでは……?と思考が巡ったとき、カウンターの女性が口を開いた。
「まだ下校時間ではないはずですが?まさか、サボりではないですよね?」
そいやそうだ。すっかり忘れてたわ。
苦笑いしながら言われてそのことに気付き、事情を説明した。
「成る程、遅刻したために授業は明日からとなって仕方なくこちらに赴いた、ということですね。解りました」
「はい。なので今日はもう寮で休もうかと思いまして」
「では、身分証明となるものをお持ちですか?」
なんすかそれ!?
「編入生の中には学園周辺の森から侵入して人に化けてこの学園を陥れようとする妖怪もいますから、身分証明がないとお通しすることができません」
うっそぉぉん!?俺そんなん持ってないよ!?身分証明って何!?
「身分証明って、どういったものを見せれば良いのでしょうか……?」
震える声でたずねる俺にカウンターの女性はにっこり微笑んで
「主に学生証を見せて頂ければお通しできます」
と言った。
俺は鞄のチャックをシャァッと開け放ち、内ポケットに手を突っ込んであるものを取り出した。
「これで良いですか?」
「はい、確かに。では中へどうぞ。案内致します」
カウンターから出てエレベーターへと促す女性。
……ありがとう、学園長。
ゲームプレイする前に学生証渡してくれて。




